五精神×力ある者達×霧の国……2
村長の家の扉がゆっくりと開かれた瞬間、村人と団員の視線が集まり、只ならぬ緊迫感が周囲を包み込む。
村人達が固唾を飲んだ瞬間、村長が大振りに右手を前に出し声を出す。
「皆、よく聞いてくれ! コルト村は既に死を待つだけの死地とかした、既に食糧は無く、このまま村で死を待つ事を望む者に無理強いはしない……だが!」
村人は村長の発言を黙って聞く。最後の最後まで聞き逃さないように。
「今より、黒猫の団と共に村を捨てる覚悟のある者! 生きたいと強く願うものはその信念に従え! 生きることは平等じゃ、皆に言いたい、命を無駄にしては、ならない。儂は黒猫の団に命を託す事に決めた。後は皆が選ぶのだ。命を粗末にしてはならない」
その瞬間、村人から多くの涙が流れ、コルト村の大地に刻まれた。生まれ故郷を捨てねば生きられぬ現実、農地を失う悔しさ、数多の感情が村人の頭に広がり、混ざり合う。
悲しみに支配されたコルト村の住民を前にキャトルフが口を開く。
「悪いが、よく聞いてくれ。遅くとも今夜には、コルト村を出発する。短い時間で悪いが、この村は既に狙われてしまった。生きたければ、日没までに用意を済ませてくれ」
キャトルフはそう語ると、黒猫の団員を村の四方に配置し、敵の接近があった場合に即座に対処出来るように警戒を強めた。
村人達は手荷物や肩掛け鞄等に必要な物を詰めると、長年過ごした自身の家と別れを告げたのであった。
日没が近づく、夕暮れに照らされるコルト村の正面には、別れを終えた村人達が集まり出していた。
村人の表情は暗く、誰もが心では、旅立ちを悲しんでいた。
幸いだった事は、村長の呼び掛けにより、老人を含む全ての村人が村を捨てる覚悟をした事であった。
村長が村人全員を確認するとコルト村に別れを告げる、そして炎を放った。
次第に家々に炎が燃え広がり、飛び火した火の粉は村に残された田畑に燃え移り全てを真っ赤に焼き尽くしていく。
「「「ッ……」」」
予期せぬ行動に何も口に出来ない村人達、村長は無言で涙を流し燃え上がる炎をただ見つめていた。
多くの村人の目に焼き付けられる光景、それは故郷が灰に変わる無情な現実となって心にも刻まれたのであった。
村長は頭を下げるとキャトルフは頷き、コルト村を後にする。
その日、バルメルム大陸、リアナ王国からコルト村が消えたのである。
黒猫とコルト村の住民、そして、元シスイの住民達は【ミストエル】を目指し、第五の関所であった【シスイ】へと向かって歩いていく。




