水の都ウォルベア×聖職者協会×真の闇……5
事実を知り男達は絶望する。
「つまり、俺達があの場で殺し合いをしていれば……」
「嗚呼、お前達が引き金になり、新国家【グレストロ】と【ウォルベア】はリアナ王国に即攻撃を仕掛けたかもな?」
男達との会話を終わらせると、キャトルフの合図と共にデルモ=グリムが男達の心臓を躊躇なく抉る。
死んだ男達の遺体はそのまま、グリムの死人兵として、魔石へと吸収されていく。
死体が見つかる事が新たな悲しみの引き金となるだろう、その為、キャトルフは死体が見つからないようにグリムに預けたのだ。
「グリム、ソイツ等を軽はずみに使うなよ」
「わかってるっすよ、キャトルフ団長」
全てが終わると黒猫の団は、次の村を目指しながら、【黒猫の町】へと向かっていく。
そんな道中に【コルト村】が姿を現す。
争いに巻き込まれている様子はなく、畑には野菜が実り、アストゥトとが残した傷跡は既に無くなっていた。
キャトルフ達の姿を目の当たりにした村人達は歓迎するように黒猫の団を出迎える。
村長が姿を現し、挨拶を済ませると二人で話したいとキャトルフが提案し、村長の家で話す事になる。
その際に、風薙にキャトルフが全員待機の指示を出す。
村長の家で腰掛けるキャトルフに対して、悲しそうに話を始める村長。
「村の者が、騒ぎながら歓迎してしまったが、既に我々の村には、麦も肉も無いんじゃ、全て数日前に接収されて、しまってな」
村長は村人達が黒猫の団が助けに来たのだと勘違いしている事実と、既に僅かな野菜だけでは、数週間も生きられない事実を静かに語った。
「なあ、村長。村を捨てる気はあるか?」
キャトルフの突然の言葉に村長は耳を疑った。
「いきなり何を言っているのですかな……」
「村には既に生きる為の食糧が無いんだろ? さっき肉も無いと言っていたが、既に馬や牛が減っているのに気づいた……」
村長はキャトルフの指摘に頭を悩ませた。
「全てお見通しですか、既に家畜を食べる他、腹を満たす手段が有りません。畑の野菜はやっと食べれる程度のサイズですからな」
村長とキャトルフが話をしている最中、村に叫び声が響く。
「泥棒ッ! やめろよ!」
声がする方へと慌てて、外に出る村長とキャトルフ。
黒猫の団員は待機命令を守り、動かずに様子を窺っていた。
村人の声に拳を握り、歯を噛み締め、耐える団員。
そんな時、キャトルフが姿を現す。
「何があった。風薙」
「なにって、村の外だ……畑が狙われたんだよ……農作業をしていた男が軽い怪我をしてる……どうする」
「待機命令が仇になったな……黒猫の団は全員、戦闘用意。村を守るぞ!」
畑には既に、大勢の村人が鍬や鋤を手に集まり出していた。
既に我慢の限界だったのであろう、村人達の顔には決死の覚悟が窺える。
「道を開けろッ!」
そんな状況に黒猫の団が姿を現すとキャトルフの一喝に村人が道を開く。
「黒猫の団、団長──アルベルム=キャトルフがこの場を預かる!」
予期せぬ、黒猫の登場に作物を奪いに来た者達は動揺する。
そんな相手の姿を目の当たりにしたキャトルフは怒りに震えた。
相手はリアナ王国軍でも、グレストロの兵士でも無く、ウォルベアの聖職者協会のマークが刺繍された服の上から、リアナ王国軍のマントを羽織っていた事に気づいたからだ。
「【ウォルベア】の聖職者協会が盗人の真似事をするのか?」
正体がバレた事実に更に動揺するも、男達は武器を手に近くにいた村人の首を押さえ、人質にする。
「わ、我々はリアナ王国軍である!」
尚も自身がリアナ王国軍の兵士であると叫ぶ男達にキャトルフが動こうとした瞬間、無数の弓が射られ、人質にされた村人の頭上を一陣の風の如く駆け抜けていく。
矢が放たれた方向に視線を向けるキャトルフ。
「しばらくぶりだな、アルベルム=キャトルフ」
其処には堂々たる姿で指揮をするグラウド=アストゥトと部下達の姿があった。
アストゥトの剣が偽リアナ王国軍に向けて掲げられると、其れを合図にリアナ王国軍が一斉に攻撃を開始したのだ。




