廃墟×影の主×水神の巫女……3
少女の言葉にキャトルフは確かめるように質問をする。
「知ってる奴なのか?」
“こくりっ”と頷く少女。
「この男、聖職者協会に出入りしてた。王都の人間だよ……」
協会に出入りしていた敵の存在に少女の頭の中は混乱する。
信じていた安全が一瞬にして恐怖となり、全てが偽りの平和であったかのようにすら感じていたのだ。
「大丈夫だ、安心しろ。今の【王都】が狂っているだけだ」
そう言い、行方不明者を捜そうと動き出すキャトルフ。しかし、その足は地面に張り付いたように動く事が出来なくなっていた。
首はおろか、口すら動かせぬ状況であり、唯一、眼球が動かせる事実を理解すると、アルガノに視線を、あえて放つ。
獣人のアルガノは即座に反応すると、キャトルフに起きている異常に気づき、周囲を鋭い視線で確認する。
影の微かな揺めきに気づくとアルガノが地面を思い切り踏み締め、影に渾身の一撃を撃ち放つ。
“ズガンッ!” と、激しい衝撃音がなり、影が崩れた瞬間、キャトルフが開放され即座にその場から移動する。
「すまない、助かった」
キャトルフは、手に握っていた小さな魔石を指で掴み、瞳に被せる様にして、周囲を見渡す。
少女の影に移動する見えない影を確認すると、即座に声をあげる。
「行かせるかァァッ!」
握られた剣が影に取り付こうとする人影の四方を捉え貫いていく。
その場に倒れ込んだ人影は這いずる様に少女を目指すがキャトルフはそれを赦さず、更に脹脛に目掛けて、剣を突き立てる。
痛みに藻搔く人影の頭部を押さえ込むとキャトルフは、力いっぱいに拳を頬に一発食らわせる。
気を失い、魔石の力が途切れると男の姿が露にされる。
「コイツも知っている奴か?」
少女に尋ねると首を横に振る。
「知らない、見たことない」
その言葉にキャトルフは頷くと男の体から所持している魔石を抜き取り、男のベルトを取り外すと、それを使い拘束する。
「面倒だが、ソイツが目覚めたら、話を聞かないとな……」
アルガノが男の鼻を掴み、舌を噛みきらないように、タオルを噛ませようと口を開かせる。
「あ、マスター、多分……話せないと思う」
「ん?」
アルガノが、口の中を指差す。
「ベロがない……あと、喉 も潰れてる……ボクでもわかるけど、喋るの無理だと思う……」
キャトルフは悩みながらも、男をその場に置き、行方不明になっている聖職者達を捜すこととなる。
カルミナは、何かを思い出したかのように、地下へと続く階段を指差す。
「泣き声……皆が泣いてるよ……キャトルフ」
過去の記憶が呼び戻されたのだろう、心配そうな表情を浮かべるカルミナ。
「大丈夫だ。一緒に見に行こう……カルミナ」
優しく微笑むキャトルフ、更にカルミナの手をアルガノが掴む。
「大丈夫。ボクが守ってあげるよ」
アルガノはそう言うと優しく微笑んでみせる。
仲睦まじい姿を、無言で見つめる少女にキャトルフが背中を軽く叩く。
「いくぞ。お前の大切な人を見つけないとな」
「わかってるわよ……それより、さっきの見えない敵になんで、攻撃が当てられたの?」
少女の問いにキャトルフはポケットにしまった小さな魔石を取り出し、説明する。
それは【真眼】の魔石であり、魔力からなる全てを見破り、更に自身の見たいと思う色で相手を表示する魔石である。
他にも【心眼】と言う心を調べる魔石や【魔眼】と言う相手を操る種類が存在する。
キャトルフは【真眼】の魔石を使い敵を見ていたのだと少女に話した。




