敗北者と狂者×思考×辿り着いた先に……6
廃墟を目指して、進むキャトルフと少女、目的地はキャンプのすぐ側にあり、入り口である洞穴のような通路を抜けた瞬間、キャトルフの瞳は怒りを露にしていた。
通路を抜けた先に姿を現したのは、過去の悪夢であり、キャトルフとカルミナの生まれた、幼き日を過ごした場所であった。
今は無き、異世界漂流者であった鬼島 大地が支配していた傭兵団──鬼面童子の拠点が姿を現したのだ。
「此処は……」
そう口にしたキャトルフに対して少女は、そっと呟く。
「此処は私が生まれるより前に異世界人の盗賊が隠れ家に使ってた場所なの、今は廃墟で、誰も近寄らない場所なんだけど……」
長く廃墟になっていた旧鬼面童子の拠点を最近になり、出入りしていた集団が存在した。彼等は【ウォルベア】で力のある聖職者を大金で雇い始めたのだ。
「除霊を頼みたい……」
聖職者達からすれば、良くある依頼であり、目的地までは馬車が手配された。
すべてが配慮された依頼であり、断る者は存在しなかった。
しかし、問題は直ぐに起きたのだ。聖職者協会に行方不明者の捜索依頼が大量に届けられたのである。
一晩で戻る筈だった聖職者達が戻らず、長い者は既に六日も帰っていないと言う内容であり、聖職者協会は直ぐに行方不明者の依頼内容を調査する。
その結果、行方不明者達は皆、廃墟の除霊という依頼を受けていたのであった。
依頼者を調べるも、何一つ正体に繋がる情報は手に入らなかった。
その結果、除霊と戦闘の両方に優れた上級聖職者の中でもトップの実力者である少女の姉が現地に赴き調査をする事となったのだ。
「お姉ちゃんは、出発前に私の元に来て、二日で帰ると言ったんだ……」
廃墟の錆びたドアノブは、地面に落下しており、辺りには落下した際に舞い散った錆びた粉がそのまま残されている。
ドアノブの周りには埃が溜まっており、ドアノブ事態には埃が付着していない部分が存在していた。
「間違いなく最近、此処には人が訪れている。よく見れば、足跡も数人分あるな」
そう言い、埃を指でなぞるキャトルフ。
違和感を感じずにはいられない程、不自然に積もった足跡の上の埃にキャトルフは少女に離れないように釘を刺すと廃墟の内部に足を踏み入れる。
内部には、無数に続く足跡が数人分あり、調査に訪れた聖職者達の物であろうと少女が足跡を辿ろうとする。
「待てッ!」
力強く、叫ばれた声に少女が“ビクリ”と立ち止まる。
「離れない約束だろ? それに、そっちは行き止まりだ」
「え?」
“行き止まり”と、内部を熟知したような言葉に少女はキャトルフを見つめる。
「此処は俺が生まれた場所で、一言で言えば地獄だ。注意しろ……誰かが罠を仕掛けてるらしい」
冷静にそう語るキャトルフ、その時、入り口の外から“イヤァァァッ!”と言う叫び声が発せられる。
少女を背後に移動させ、束に手を伸ばすキャトルフ。
扉が凄まじい勢いで吹き飛ばされると、キャトルフは驚きと怒りに身を震わせた。
「なにをしている……カヤン……カルミナ……」
その瞬間、キャトルフに抱きつくカルミナ。
「キャトルフ、駄目! 危ないの、此処は駄目!」
只ならぬ様子のカルミナを落ち着かせるキャトルフ。
「はぁ、どういう事だ! 確り説明してくれ」
言い訳など通じないと判断したアルガノはキャトルフに謝罪すると同時に訳を説明する。
「マスター……ごめん、ボクが悪いんだ……カルミナは悪くない。ボクの後を着いてきたんだ」
深い溜め息をつきながら、キャトルフは廃墟について説明をする。
少女は訳のわからないと言う顔を浮かべている。
「何なのよ、何で、騒がしいお姉さんと、子供がいるのよ!」
アルガノを子供と言いながら、指差す少女。
「……黙れ、クソガキ……マスターと話してるんだ」
「な! 口の悪い奴ね!」
啀み合う二人、それに対してキャトルフが止めに入り、結果として、四人で内部の調査を開始する。
罠であろう足跡と反対側に進もうとキャトルフが決めた瞬間、少女の雰囲気が一瞬で別人のように変化する。
「……信じる先に道は開かれる、迷うことは闇への誘いに足を踏み入れる事を意味する……先に道はある……」
すべてを見透かしたような、透明感のある瞳にキャトルフは息を飲んだ。




