炎の大地×冷血なる一族×光の道……5
グリムが倒れ込むと同時に中間地点を一気に駆け抜ける特務隊の先頭集団、そんな彼等を後方から分断するように二人の獣人が左右に別れて挟撃する。
先頭と中間の集団の間に巨木が姿を現し前方と後方に特務隊を分けると、後方の部隊が馬を止める。
前方である先頭集団はそのまま、目的地である丘を目掛けて馬を走らせていくのを耳で確認すると後方部隊は戦闘の意志を露にする。
「奇襲とは、野蛮だな! 黒猫。闇に紛れて戦わねば勝てぬと言うことか!」
特務隊の隊員がそう口にすると同時に【黒猫の団】物資調達商人、メル=カートルが姿を現す。
「言ってくれますねぇ? でも、勝つ前にそれを言うって、弱い犬ほどよく吠えるってやつじゃないですかねぇ?」
挑発的な言葉に人を小馬鹿にするような仕草と態度をするメル=カートル。
そんな彼女の幼き容姿に特務隊の騎士達はクスクスと笑いだす。
「凄い魔石使いが居るのやと思えば、黒猫の団とは、幼子まで使う集団だったか、あはは」
下卑た笑みに対して、メルが呆れたように表手を上にあげ、首を左右に振る。
「特務隊って話でしたが、こんなに品のない連中なんて聞いて無いんですがねぇ、副団長命令が出てるから仕方ないですが……少し頭にきますねぇ」
怒りを口にするメルに対して、姿を現したのは【黒猫の団】獣戦士特攻隊、副隊長、セラ=シェルムであった。
「落ち着きなよ、少し幼い子供に見られただけでしょ、それより……アレなら、少しやり過ぎても、副団長も大目に見てくれると思うのよね?」
美しくも狂気に満ちた純粋な目を特務隊に向けるながら、メルに問い掛けるセラ。
それに対して、呆れた声で返答するメル。
「いや、駄目だから……純粋な目の使い方が間違ってるから……危ない考えはやめて下さいねぇ、副団長からは殺すなと言われてるんですよ?」
“殺すな”と言われてると言う発言に対して、二人に向けて剣を向ける騎士達。
「我々を“殺すな”だと……アルトゥト中佐指揮の特務隊である我々を……それを女、子供ならまだしも……傭兵風情がッ! ふざけるッ!」
剣を手に魔石で凄まじい加速を加えた一人の騎士がメル=カートルを一突きにせんと襲い掛かる。
その速度は異常であり、残像を残す程に加速すると騎士は迷うこと無く、その剣先を一気に突き出す。
騎士の凄まじい一撃がメルの体に触れた瞬間、同様の攻撃が反射されたように、騎士の鎧に穴を開ける。
「鎧を着けてて、良かったですねぇ、まあ……もし、鎧が無ければ、確りと回避させて貰ったんですけどねぇ」
まるで奇術師が観客の度肝を抜き、笑い掛けるようにメルは楽しそうに微笑むと静かに頭を下に下げる。
「大変申し訳ないんですが、皆様には大人しくして貰えませんかねぇ、死人が出ると、怒られてしまいますので……出来ればお静かに、時が過ぎるのをお待ちくださいますと嬉しく感じるんですが……無理ですかねぇ?」
人を小馬鹿にする様子は無く、単純に時間の経過を待つように伝えるメルの姿に騎士達は苛立ちを隠せずにいた。
その鋭い刃を苛立ちからメルに向けようとする騎士に対して、セラが先に動き出す。
稲妻の如く駆け出したセラの動きに反応しようとした者達が剣を向けた瞬間、黒い煙をあげて鎧を纏った騎士が数名その場に倒れ込む。
「あ、いけない、死んだら駄目だったんだっけ? まあ……仕方ないか?」
悪びれた様子は無く只々、楽しむように煙をあげる騎士の姿を見つめるセラ。
全ての出来事が特務隊の予想を大きく裏切る展開となっていく。
後方、中間、先頭と足止めからの分断に成功した黒猫の団、それと戦う特務隊の騎士達、数で勝る特務隊に対して、少数精鋭の黒猫がその爪と牙で襲い掛かる。




