炎の大地×冷血なる一族×光の道……1
【シスイ】での戦闘により、シスイの支配者であった、グラウド=アバリシアは既にアルベルム=キャトルフに討たれ、この世には居ない。
その事実が明らかになれば、コルト村も、コルト村に避難した住民も危険になるだろう。
何より、子供達がその事実を、話せば危険に晒される恐れがある事が一番の問題だとキャトルフは考えていた。
「なあ、颯彌……一つ提案なんだが……」
深刻そうな表情を浮かべ、風薙に語り掛けるキャトルフの姿に視線が集中する。
誰もが理解していた。動くなら今夜しか無いと言う事実を皆が感じていたのだ。
「で、どうする感じ? 選択肢は限られてる感じじゃね?」
風薙の指す選択肢は三つである。
──1、その場に待機し、位置を知らせるようにして、相手が動くのを待つ。
──2、シスイに戻り待ち伏せをして、話し合いをする。
──3、コルト村に出向き、話し合いをする。
結果的な戦闘を考えた選択肢であり、コルト村での戦闘は避けるべきである、と言うキャトルフの考えを考慮した結果である。
キャトルフは、全ての選択肢を天秤に掛けると、直ぐにコルト村へと向かう事を決めたのだ。
黒猫の団が動き出すと同時に暗闇に炎炎とギラつく炎が上がり出す。次第に星空が黒煙に包まれ星が姿を消すと、キャトルフ達は馬を一気に加速する。
「まさか……クッ! 黒猫の団、全速力! 刹那を駆ける!」
「「「了解ッ!」」」
馬鉄が地面を踏みつけ、力強く蹴りだし、地響きが木々を撓らせる。
コルト村を目前に真っ赤に燃え盛る炎が小麦色の田畑を染めている事実に気づかされる黒猫の団。
そんな彼等を待ち構えていたのは、銀色の鎧に身を包んだ十数人の重戦士と騎士からなる集団であり、その中央に見るからに軽装備でありながら、自信に満ちた表情で炎を見つめ、嘲笑う男の姿があった。
男達は、黒猫の団が近づいてきた事に気づくと大きく陣形を取り直す。
「黒猫よ! 止まってください。話し合いをしたいのです……ふふっ」
そう口にする男、その横に立つ重戦士に抱えられ、怯えた表情を浮かべる少女の姿がある。
「大人しく止まって下さらないと、可哀想な少女が、もっと可哀想な姿になってしまいますよ?」
卑怯にもそう語る男、しかし、その目に少女の命は多少の価値すら見いだしていない事は明らかであった。
キャトルフはその事実を理解しながらも、団員に手で、停止するようにサインを出す。
「此方に戦闘の意思はない! 話し合いと行ったな、此方も話し合いを望んでいたところだ!」
キャトルフの言葉に男が一歩前に出る。
「それは素晴らしい心がけです。私も“これ以上”可哀想な子供達を増やさずに済みそうで本当に嬉しく思います」
涼やかな男の微笑みが炎に照らされる。




