否定する者×鬼の心×生命の息吹……5
子供達が農夫に眩しい笑顔を浮かべると農夫も同様に微笑みを返す。
しかし、キャトルフ達を見る目は困惑していた。
しきりに村に視線を向ける農夫を見てキャトルフはそっと語り掛ける。
「……すまないが一つ質問をしていいですか?」
そう語り掛けられた農夫が頷くと質問を口にするキャトルフ。
「村を気にしているように見えますが、村に何方かおいでですか?」
一瞬の沈黙が生まれると農夫は軽く頷き、村を見つめる。
「今、村にリアナ王国の御偉いさん方が立ち寄っとるんです」
農夫は昨晩から、シスイを目指す、リアナ王国の使者が滞在している事をキャトルフ達に伝えた。
当然ながら、キャトルフ達のシスイでの戦闘を知らないリアナ王国の使者達が、黒猫の団と逃げてきた住民を見れば、疑いの目と事実を知ろうと行動にでるだろう。
農夫は村で争いが起こることを危惧し、表情を濁していたのだ。
「農夫殿、不躾で悪いが頼みがあるんだが……コルト村を故郷とする者達だけで受け入れてくれるように村長に伝えて貰えないだろうか?」
農夫は軽く悩みながらも、コルト村を故郷とする者達の名を一枚の紙に書き出していく。
「あまり期待せんでくれ、あくまでも、名を伝え、話すだけじゃからな」
そう言うとキャトルフ達をその場に待たせ、農夫は荷台付きの馬車に乗りコルト村に向かって走り出していく。
農夫を見送る形になると、風薙がキャトルフに語り掛ける。
「団長、信用していいのかなぁ? もし、御偉いさんがこの場に来るとややこしくない?」
「わかってるさ、そうなったら、そうなっただ。向かって来るなら叩き潰す。それが俺達のやり方だろ?」
キャトルフの言葉に風薙はクスクスと笑う。
「流石、団長だわ、脳筋発言がヤバイな、戦う際には村の連中はどうするん?」
「正直、考えたくない。出来れば、平和的に解決したいが……どうなるかな」
一時間としない内に、農夫が戻ると村長との話の内容を説明する。
内容は良心的な物であった。
コルト村の元住民に関しては受け入れるとし、他の者もコルト村に住みたいならば、家を建てる場所を提供する。
傭兵団【黒猫の団】に関しては、村への立ち入りを避けて欲しい、といった内容であった。
黒猫の団が村に立ち入らないのであれば、避難してきた住民、全てを受け入れる用意があると言う事を伝える内容にキャトルフは数回頷くと農夫に再度、返事を頼んだのだ。
「内容は理解した。それで構わないと村長に伝えてくれ、本当に感謝する」
キャトルフが礼儀を正しく頭を下げると、農夫も同様に頭を下げた。
「わかりました、確りと伝えましょう」
農夫が再度、コルト村に向かい、その日の夕暮れには、黒猫の団と共に数日を旅したシスイの住民達はコルト村に向けて移動していた。
子供達が最後にキャトルフと黒猫の団員に泣きながら、歩み寄る。
「うう、本当にありがとうございまじた」
「うわーん」
数日の間に、子供達は黒猫の団員を仲間として見ていたのだろう。純粋な別れを惜しむ涙に誰もが別れを意識する。
「此方こそ、シスイでは、済まなかったな、大きくなれよ」
キャトルフの言葉に子供達が頷くと、手を振りながらコルト村へと向かっていく。
黒猫の団は、コルト村を迂回するようにして、第四の関所である【ウォルベア】を目指し、夕暮れの道を進むのであった。




