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否定する者×鬼の心×生命の息吹……3

 ステルビオはキャトルフへ向かって歩き出す。


 すると、ステルビオの足すれすれを、一筋の閃光が通り抜け闘技場の床を粉砕する。


 放たれた方向を見つめるステルビオ。


 その先には鬼の面を着けたカルミナの姿があり、息は荒く、閃光を放ったであろう幼き腕は小刻みに震えていた。


「お前がやったのか? だが、既に魔力切れだな……あんまり無理すると魔石(アーティファクト)に殺されるぞ」


 ステルビオはそう言うと再度、キャトルフに向かい歩いていく。


 一筋の閃光が再度、放たれると、ステルビオの踏み出した足に当たり、脹脛(ふくらはぎ)を貫通する。


「ウワァァ、足が……やりやがったな……」


 その場で足を押さえ止血するステルビオ。しかし、足から流れ出た大量の血液は止まることなく流れ出していく。

 次第に力を失い、その場に倒れ込むステルビオ。


 そして、キャトルフの前に、カルミナが二階からジャンプして降り立つ。


「……カルミナ、なんだよね……?」


 警戒するように、質問を口にするキャトルフ。


 鬼の面を着けたまま、カルミナはキャトルフの質問に返事を返す。


「大丈夫よ、疲れちゃったけど……私、凄く頑張れたよ……キャトルフ」


 カルミナはそう呟くとステルビオの腹部に閃光を放つ。

 ステルビオは咄嗟に閃光を躱そうと回避するも結果として片腕を閃光に晒すことになり、片腕が一瞬で弾け飛ぶ。


「うわぁっ! クソが、絶対に(ゆる)さねぇ……テメェも、テメェも! 絶対に殺してやる!」


 ステルビオの言葉に静かに頷くキャトルフ。


「大丈夫だよ……もう、終わりだから……俺はステルビオ(あんた)の命を否定する」


 静かに呟かれた言葉にステルビオは存在する片手を力強く殴りつける。その瞬間、ステルビオは自身の片手が既に否定されていた事実に気づかされる。


「な、なんで、俺の手がねぇんだよ……嘘だろ……くそ、本当に終わりなのかよ……クソが、クソが、クソがっ!」


 罵倒を繰り返しながら、次第に肉体が崩れていくステルビオ。


「俺は認めねぇ! 俺はお前に負けたんじゃねぇ……あの世で絶対に殺してやる! 忘れねぇぞ……アルベルム=キャトルフ……お前だけは絶対に忘れねぇ! 絶対だ!」


 アルベルム=ステルビオが完全に崩壊するとキャトルフの中に声が響く。


『命の代価を我に示せ』

『否定するならば、力を否定せよ』


「意味がわからない……代価ってなんだよ」


 キャトルフの呟きに体内の声が返答する。


『命の代価は命でのみ払われる親しき者を差し出せば代価となる』


「はっ……否定するとどうなる……」


『本人の生命の危機から代価とし、代価を示すまで、力を封じる』


「つまり、今の力がなくなるのか……あはは、なら否定する。どうせ、偶然の力だから……否定するけど、ありがとう」


『いずれ、また割れは語り掛けよう……去らばだ。所有者よ』


 背中に激痛が走ると、背中にあった筈の【否定の魔石(アーティファクト)】がキャトルフの体内に埋まり、全身に脱力感が襲い掛かる。


 必死に意識を震わせキャトルフは、カルミナを背負い歩き出す。


 仲間の元に向かおうとした時、地下にある鬼島の育成室から女子供の悲鳴が響く。


 鬼島の死を知った傭兵団のメンバーが奴隷を拐い逃げようと争いになっていたのだ。


 仲間を助けられない無念さを噛み締めつつ、キャトルフはカルミナを背負ったまま、水路をひたすら進んでいくのであった。


 暗闇を進んで行く最中、カルミナが目を覚ます。全ての結末を語るキャトルフ。


 それから、二日程、キャトルフとカルミナは水路を進んでいく。外から照らされた太陽の光を目指し地上に顔を出すと二人の頬を自然と涙が流れていた。 

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