胸で光る宝石
私が唯一覚えてることを3つ話そうと思う。
1つは魔法少女であること、
2つは母親が処刑されるシーン。
3つは赤い髪の毛の男性と仲良くしていたキャッツ族のモンスター。
そして、最近毎回見る夢がある。
その夢で、赤い髪の毛の1つ結びの男性が涙を流して泣いてるのだ。
「ユズコ」と私の名前をたくさん呼んで、謝って泣いてる。
どうして泣いてるの?何をして欲しいの?
私にどうして欲しいの?そう語りかけても
泣いてる彼には届かない。
必ず夢はここで覚めるのだ。目を開けると見慣れたアパートの自室の天井。いつもの光景、いつもの風景に鉛のように重たい体を起こして背伸びをし時計を見る。時刻はpm8時。今日はバイトがお休みなのでちょっとした朝寝坊。もう一度背伸びをし身なりを整えようと大きな鏡の前に出る。
そこに私の容姿が映っていた。
ゆず色の長い髪の毛に、ぱっつんの前髪、ぱっちりお目目の透き通った緑色の目、そして乱れたネグリジェ越しに見えるのは…ゆずの花の形をした宝石。
これは取ったらダメなやつだ。
心臓よりも弱くて破られたら死んでしまう。
「これがあるだけで人間じゃないっか…」
そうだよと言ってる風に光る宝石を私はぎゅっと憎々しげに握り締める。
今の世はモンスターと人間が共存し暮らしてる世界。存在してるのは2つの命だけ、力に溺れる人間と支配されるモンスター。
私は人間でもなければ、モンスターでもない。
じゃあ何?大昔に大魔王を導いたとされる美しい種族「魔法少女」という存在。
しかし「魔法少女」は大魔王が勇者たちの手で殺された直後に悪の存在を生んだものとして惨殺され多くの命が花となり散った。
しかし生き残りはいた。
その生き残りたちは人間や手のひらを返したモンスターたちの魔の手を逃れてひっそりと生活し子孫を残した。そしてその子孫というのが
それが私、デュラ・ユズコ。
美しい容姿に胸元の美しい宝石。
それが何よりの証拠よ。