いきなりの敵意
そこには人がいる。俺と話せる人がいる。話したい事は沢山あるんだ。ーー声の出所を探る、どうやら俺より下にいるらしい。目を凝らせば、姿が見えるかもしれない。さっきのように集中する。視覚以外の感覚を切断し、時間すら止まったように感じる。
そこまでのエネルギーを使ってまで確認したいのだ。声の主は誰なのか?
モザイクはさっきより鮮明に、眼科の景色を映す、水に濡れた床があって、ヘドロとゴミの汚れが所々に混在、だが人は見えない、何故だ?きっと遠いからではないだろうか、降りればわかる筈そう信じて、一言
「下にいるんですよね、おりますよ」
する事を伝えたが、返答はない
まさか、俺を警戒して、逃げ隠れたりしたんじゃ?
勿論足なんて無いからガサゴソと這い降りる、よく見えないから慎重に…降りていた、その時、
唐突に…どこからか、殺意が感じ取れた、それに遅れてーーシュッーっと風を切る音、
情報をまとめるに、今は危ない、そう判断し、3回目の眼の酷使、全神経を目に注ぎ、見て状況を確認。
見えるーー滑らかな太い鞭のようなものが自分に向かって…明らかに殺そうとしてる事を認識、警戒レベルを上げて集中力を増長、自分自身に命令を下す。ーー
ー横に避けろ、
鞭は慣性によって圧倒的なスピードとパワーを生み出す、
でも、その感性には弱点がある、その威力が故、制御が難しい、だから、狙いをつけて打つが、見切って、避ければそれまでだ。
「よ、よけろー!
言葉にして、死なない為の自己啓発
右上から振り下ろされる鞭に対し、下半身を起点に左に旋回、
這って逃げても、遅いし、軌道がバレバレなので…意表をついてジャンプ 、下半身を地に打ち付けて、蛇のように、
宙に浮いてる物を切るって難しいんだぜ、ましてや、それが動いてるんだ
当たるわけがない
完璧な作戦だが、念には念を入れてもう一捻り(ひとひねり)
浮力が無くなり、落ち始めるその前に身体の重心を下に向け、落下速度を早め、地に身体を打つ、その反動でまたジャンプ…またも予想外な事をやってのける。
達成感で、気を緩めていたその時、頭上からの影が辺り一面を覆い尽くす、…鞭じゃなかったのか?
相手もまた、予想外。それに一枚上手だった。
…こんな広範囲、避けれるわけが無い、そう思って、死を確信、諦めかけたその時…
ーー俺は潰されて、無理矢理諦めさせられた。
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ビチャッーーグチャ、グチャッビチッ
そして、俺は文字通りの木っ端微塵になった。それでも、まだ生きていた。
明日の午後1時9月9日も更新です。