城嶋晴香の憂鬱
大変長らくお待たせいたしました。お待たせした割に晴香視点からのスタートです。
新学期始まりの一日は、最悪のスタートだった。
登校日に毎朝もりおを待っていた、はるかの定位置。いつもの電柱の陰。
なんだかとっても長く感じられた春休みがやっと終わって、久しぶりにもりおに会えると思ってたのに…もりおはいつもの時間になってもそこを通ることはなかった。
まぁ、もりおはたまーに遅刻してくることもあったからそれ自体はそれほど珍しいことじゃなかったケド。
それでも、新学期初日の朝からもりおの顔が見れないとか、ガン萎え。
…春休みに入る前に、あんなトコを見ちゃったからかな?それからまともに顔も合わせてなかったからかな?いつもより、余計に凹んじゃった。
遅刻ギリギリまで粘ってみたけど、やっぱりもりおが姿を現すことはなくて。しょーがないから先に行くことにした。
はぁ。今日から二年生だってのに何やってんのさ、もりおは。
―――――
「えええええぇぇぇぇ!!!なんではるかだけぇぇぇ!!??」
学校に着いてからも、悪いことは立て続けに起こった。
二年生になったはるかたちを待ち受けていたのはクラス替えという一大イベント。また今年もきょーことじゅんと、もりおと一緒のクラスになれればいいなぁって、そう思ってたのに…。
「なんで三人は一緒のクラスなのにぃぃぃぃ!はるかだけちがうのぉぉぉ!!!」
そう。きょーこたちはG組なのに、はるかだけがA組。しかもこの学校、1学年には7クラスしかない。つまり、
「しかも教室も一番遠いって、お前何かしでかしたんじゃねぇのか?」
「おいハゲ!はるかを不良生徒みたく言うな!」
「いや、どう見繕っても不良生徒に片足どころか頭まで突っ込んでる…ぐほぉあ!」
余計なことをぬかすハゲの脛にローキックをかましながら、でも、じゅんの言う通りだと再び落ち込んだ。隣のクラスだったらまだ気軽に遊びに行けるのに、よりにもよって一番遠い教室になるなんて…これじゃあ移動時間を考えたら休み時間のたびに遊びに行くこともできないじゃん!
「えぇぇぇん!なんではるかだけこんな仕打ちを受けなきゃなんないのぉぉ!」
「ほら、よしよし。昼休みは一緒にご飯食べようね」
「きょーこぉぉぉ!好きぃぃぃぃ!」
思わず泣きだしてしまったはるかのことを、きょーこはぎゅっと抱きしめてくれた。
「そうだぞ。学校が終わりゃあ一緒に遊べるんだしよ。今生の別れでもあるまいし、そんなに泣くなよ。いい年こいて恥ずかしいぞ?」
「じゅぅぅぅん!…食あたりでできるだけ長い間腹痛に苛まれながら逝って?」
「おい、急に真顔になってリアルに怖いこと言うのは止めろ」
はるかの頭を撫で続けてくれてるきょーこにも、ウザいけど励ましてくれてるじゅんにも感謝感謝だよ。
でも、なんでかな?それでもはるかの気分はなかなか上がらなくて。
――もしここにもりおがいたら、もりおは何て言って励ましてくれるかな?
そんなことを考えちゃって、またもりおのことを考えちゃって、やっぱり落ち込まずにはいられなかった。
―――――
「…あの子、3年の先輩と付き合い始めたらしいよ」
「うっそぉ!あたし地味にあの先輩のファンだったのに!」
「おぅ、また同じクラスになっちまったな」
「そんなこと言って本当は嬉しいんでしょ!このこのぉ!」
「…先日放送開始した『辛城バリリアントポーク』はチェックしたでござるか?」
「…当然也。あの作画レベルで初回からヒロインの入浴シーンを入れてくるのは、流石の一言に尽きますな」
はるかの新しい教室では、既にいくつかのグループが形成されていた。
去年から仲が良かった人たち、趣味が合って新しく友達になった人たち、なんとなく席が近いから話している人たち。
皆がどこかしらのグループで楽しそうに話しているなか、はるかといえば――
――誰も目を合わせてくれない…。
当然と言えば、当然のことかもしれない。
一応、ウチの学校はそこそこの進学校なわけで。ギャルっぽいカッコした女の子なんか、ぶっちゃけはるかくらいなわけで。
…これ、はるか、絶対浮いちゃってる、よね?
自分の席に着いてから、もう何度目か分からないため息が零れる。
考えてみれば、去年が上手くいきすぎていたのかもしれない。
同じクラスには幼馴染のじゅんがいて、はるかほどじゃないけどちょいチャラのきょーこがいて。それに、それに、
――お、俺と同類の女子はっけーん!う、ウェーイ!
ふふっ、思い出しただけで笑えてくる。教室で浮いてたはるかに初めて話しかけてくれた人。金髪でピアスまで開けてるくせに、ビビりながら話しかけてきたカッコ悪いもりおの姿。
あの時のもりお、めっちゃキョドってたし汗ヤバかったし、今考えるとめっちゃ不審者っぽかったなぁ。でも、もりおがあの時話しかけてくれたから、はるかは…
――よし、もう凹むの終わり!二年生になったんだし、はるかも頑張らないと!
頑張ってクラスメイトに絡もう!そんで新しい友達を作るんだ!
と、意気込んではみたものの、誰に絡んだらいいんだろう?
ぶっちゃけ、女子からは男子以上に遠巻きにされている気がする。そりゃそうだよね、女子ってそーゆー生き物だもん。
じゃあ男子と絡もうかな?うーん、でも男子は男子で、女子からしたらちょっと絡みづらいってゆーか。
…えーい、女は度胸って言うもんね!まずははるかの隣に座ってる前髪が異常に長くてヘッドフォン首にかけてる陰キャっぽい男子に挨拶してみよう!
「あ、あのぉ~、隣の席だね!はる…あ、あたし城嶋晴香っていうの。ヨロシクねぇ!」
「…はぁ」
――くぅぅぅぅぅ!早速挫けちゃいそうだよ!なんなのコイツ!はるかが名乗ったんだからせめて名前くらい教えてよ!
いや、ここで諦めちゃおしまいよ、はるか!はるかならできる!もっかいだ!わんもあちゃんす!
「あの、あなたは名前なんてゆーの?」
「…田中」
「へ、へぇ。田中くんね!これから一年ヨロシクね!」
「…うん」
――おい田中ぁぁぁぁぁ!フルネーム教えなさいよ!なんなの?二文字以上喋ったら死ぬの?あと言葉の前に「…」挟まなきゃいけない病気かなんかなの?
初っ端からこんな調子で大丈夫なのかなぁ!?
あーん、もうやだー!助けてきょーこー!もりおー!…あ、あとじゅんー!




