鈴鹿峠
鈴鹿御前を想う夜叉王丸の独白です。
その昔、人ではない者が人を恋し己の身の上を恨みつつ恋した者の刃を受け露と消えた。
そんな哀しい伝説があると聞いてきたのだ。
雨が降る峠の道は、けぶる霞の中に在り険しい山々は、その裾野を白き衣で包み込む。
誰も入り込む事など許すものか。
山が静かに入るのを拒絶した。
誰も、何人たりとも、この峠に入り込む事など許すものか。
重ねた声が静かに響き渡った。
しかし、その声は、恨みは込められていなかった。
込められていたのは・・・・・・・・・・・
誰よりも、哀しみの声で、哀しみの雨で・・・・・・・・・
静かに哀しみに暮れて泣く声で、哀しみに満ち溢れた雨で・・・・・・・
・・・・・・・・・今も恋しているのだと、この山に、峠に心を閉じ込めているのだと言っているのですか?
・・・・・・・・・だから、誰も、この峠に近寄ってくれるなと言っているのですか?
・・・・・・鈴鹿御前よ。貴方が朝夕に髪を梳きつつ眺めていた・・・・・・・・鏡の岩が山の中腹にあります。
朽ち果てた、その岩に、貴方は・・・・・・・まだ映しているのでしょうか?
・・・・・・朽ち果てぬ。
・・・・・・朽ち果てる事の無い。
・・・・・・・・その人への想いを
・・・・・・・永遠に朽ち果てぬ、人を恋慕う想いを、この鈴鹿峠に
曇った鏡に、貴方は・・・・・・・・・恋い慕う想いを映し、この峠に想いを閉じ込めているのですか?
初めての詩でした。