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何とか書き上がりました、相変わらずの遅筆ですが楽しみにしていただけたらと思います。
バイトを募集すると様々な年代から応募がくる。
「予想外にいっぱい来たな、さてどうするか」
「店長、それは日勤帯であの時給だったら。そりゃ、募集きますよ」
「時給を赤字覚悟で、あんなに上げて良かった。もし払えなかったら、火砕の給料から引けばいいし」
ドゴッと火砕の拳が、晴の脇腹にヒットする。
「店長、冗談はよしてください。手が出ちゃったじゃないですか」
「うぐっ、段々と鍛えられてきてないか?このままだと、いつか世界とれるぞ」
「世界は、とれなくても。いつか、店長の首はとりたいです」
「ははっ、火砕は冗談がきついなー」
晴の言葉を無視して、作業を続ける。返答なしという答えに晴に冷や汗がわいてくる。
「そういえば、今日面接日じゃなかったですか?」
「ああ!だから、楽しみで!楽しみで!仕方ないんだ!中学生、中学生だよ!」
「あっ、ちょっと。そのままで。今、警察に通報しますから」
「じょ、冗談だよ!だから、電話するのはよしてくれ!」
カランカラン
「あの、面接に来たんですけど……」
「おっ、来た来た!」
店の奥から、晴がでてくる。晴が、見たのは藍色の長い髪をお団子状にまとめている女の子だった。
「あっ、あの。今日、面接で」
「分かってる、分かってる。ほい、こちらに」
店内にある禁煙席に誘い、誘われるままに席に座る。
「それで、えっと名前は?」
「水辺凍です。えっとあの今回は、バイトという形じゃなくて」
「あぁ、学校から聞いてるよ。私立宮前女学院の郊外研修?とりあえず、無償で一年間働かなきゃいけないんだろ?」
「はい、私の学校では。地域への無償奉仕を主としてしてまして」
少しばかり、嫌そうな顔でいう。学校の方針に少し不満そうな顔をしていた。
「えっと、凍ちゃんが良かったら。内緒でバイト代あげるけど」
目の前をひゅんとフォークが過ぎ去り、ガラスに突き刺さる。
「店長、揉め事は困りますからね」
「ははっ、冗談ですよ……」
背後にゴゴゴゴと暗く重い雰囲気を放つ火砕は、そのまま店奥へと戻っていった。
店奥に戻るのを確認すると、席から身を乗りだし。声が漏れないように手でさえぎる。
「気をつけろ、いつ噴火するかわからないから」
「は、はい」
晴は、凍の視線がやけに上に向いているのに気づき。背後へ、ゆっくりと振り返ると襟をつかまれる。
「えっと、凍さん?」
「は、はい!?な、何でしょう!」
背後に立っていた火砕に怯えるように応対する。
「ちょっと店長、借りていきます」
「は、はい。ど、どうぞ!」
「こ、凍ちゃん!?」
ズズッと床を引きずられ、店奥に連れていかれる。
凍は、大丈夫だろうかと心配していると鈍い音が何度も聞こえ、店奥から火砕が頬に赤いものをつけてあらわれる。
頬のものを見て、凍は店長がどうなったか理解してしまう。
「店長からの遺言……いえ、伝言です。明日からよろしくだそうです。よろしくね、凍さん」
「は、はい」
震える手を優しく火砕は、握る。
「そんなに怯えなくても」
「その頬に……ついてるのって」
「ん?あっ、イチゴを潰してたからついちゃっただけだから」
手の甲で拭う。
「そ、そうですか」
「じゃあ明日からよろしくね、今日はこのままかえっても大丈夫だから」
凍は、怯えながら店から出て行った。
「さて、店長。店長には、少ししつけが必要みたいですね」
店の奥では、口を塞がれ。両腕を縛られている晴が暴れていた。
「んん~!!んん~!」
「大丈夫ですよ、私。普段は、こういうことするの苦手ですが。店長に関しては、むしろ興奮さえ覚えます」
ゆっくりと近づいてくる火砕に、晴は。明日から、あまり刺激するのはよそうと心に誓った。