日常を書いてみたいと思い、書きました。続々と可愛らしい子達が登場しますので、自分が店長になったお気持ちで温かく見守っていただけたらと思います。
バーテン服に身を包んだ月島晴は、休憩中にタバコを吸いながら、ものふけっていた。
「あぁ~、せっかく店開いたのにな~。予想と違うぞ、これ」
タバコを灰皿に、押し付け裏口から中に入っていく。
「あっ、休憩終わりました?店長」
火砕ひでりは、晴を笑顔で受け入れる。
パティシエ服に身を包んだ火砕は、つり目で可愛らしいというよりは、凛々しさをかんじさせる。
「火砕、この店。キャットティアーズの客層はどんな感じだ?」
「どんな感じだって……。サラリーマンの方とか何というか少しお歳をめした方が、ほとんどですが」
「それだっ!それだよ、火砕!何で男ばかりなんだよ!ここ、一応菓子屋だぞっ!そういうのって、女子がくるもんだぞ!」
カーン
近くにあったトレンチで、晴の頭を叩く。
「店長、落ち着いてください!あと、サラリーマンさん達に失礼です」
「か、火砕……。落ち着くのは、お前だ」
殴られた頭を抱えながら、ゆっくりと立ち上がる。
「とりあえず、若い成分が足りないからさ。若い成分を入れたいから、バイトを」
ガンガン
「だ、誰が年増ですか!誰が!」
「痛い痛いっ!そんなこといってないから!」
「まだ私、二十うんさいですよ!彼氏いたことないピチピチの処女ですよ!」
「火砕、お前とんでもないこと口走ってんぞっ!」
自分がいったことに気づいて、徐々に火砕は、顔を赤くして。涙目になると、近くにあった刀身が長いカステラ包丁を手に取り。晴に向ける。
「店長、安心してください。一撃で仕留めますから」
「ちょちょ、ちょっと待てっ!俺に罪はないはずだ!」
「目撃者は、消せって。映画でも言ってるじゃないですか?」
「いやいや、それ多分。人がバンバン死ぬ映画だよね!?」
「覚悟っ!」
ひゅんと振るったカステラ包丁を晴は、白刃取りする。
「店長、やりますねっ!」
「うぐぐっ!一旦、落ち着け!」
二人が争っていると、コンコンと柱にノックする音が聞こえ。二人は、音のした方向に目線を向ける。
「あらあら、お邪魔しちゃったかしら」
薄く化粧をし、和服を着た赤井保美が笑顔で答える。
「保美さん、こいつをとめてくれ!」
あらと笑顔で、火砕にちかづくと赤井はカステラ包丁を取りあげる。
「保美さん、返して!返してください!」
「ひでりちゃん、晴くんを殺ったら。こんなゴミみたいな人にある意味、人生を捧げちゃうものよ?」
「はっ、そうですね!私、どうかしてました!」
「なんやかんやで、俺は傷つけられるんすね」
ははっ。と小さく笑う。
「それで、どうしてこんなことになったの?」
「はっ!そうだよ、実はバイトを雇おうと思ってるんですよ!」
「バイト?別に、ひでりちゃんだけで足りると思うけど」
「そうじゃないんですよ!若い子、若い成分がほしいんです!客なんて男ばっかり!若い子を雇って、もっと若い女の子に来てほしいんです!」
深くため息をついて、赤井は一言。
「いいと思うわよ」
「あっ、赤井さんは賛同してくれますか!」
「そのかわり、ひでりちゃんに一発やられた方がいいかも」
赤井は、暴れないように背後から両腕を押さえ付け。動けないようにする。
「それじゃ、店長。覚悟してください」
にこやかな笑みを浮かべ、手をペキパキと鳴らし。近づいて来る。
「ははっ。ご、ご冗談を……」
二人を見ると顔色ひとつかえていない。
そして、キャットティアーズに鈍い音と男の悲鳴が響き渡った。
翌日、キャットティアーズに一枚の紙が張り出される。
『バイト大募集!!
接客経験がなくても大丈夫!!
『若い』女性の先輩が優しく教えてくれます!お菓子作りしてみたいなという子も大募集
時給1000円~』
入り口に張り出された紙の時給を見て、女の怒声とキャットティアーズからまた男の悲鳴が聞こえてきた。