マジシャンズ・アカデミア 18
うわなんかすっげー久しぶりにギャグ書いた気がする!
僕が聞いたこの村での被害を村長さんの個人的意見も加味して更に僕の個人的意見も加味して要約すると
村長「畑荒らされてー小麦とれなくてー酒飲めなくてーチョ→つらーい(キャピルン」
僕達「うっそーマジでー?それバリナウいゲームじゃん!おじさん達鬼かわいそー!」
要約を要約してしまうとありきたりだなーって意味になるんです。ほんとですよ?
村長さんのちょっと無駄に長い話を定期的に頷いて話を進めるというほんとにちょっとした嫌がらせをなんとかこなし、僕達は早速被害のあった畑に向かった。道中アキが牛に懐かれてた。
村長宅から十軒先(長さ的には陸上のトラック分くらい)そこが一番被害の大きかった家だと言う。
そこは一番魔物のテリトリーである「森」に近く、頻繁にでは無いけれども稀にゴプリンやズルイムが畑の端の方の小麦を奪うか食べるかしてまうらしい。
ここで一つ疑問に思うのはどうしてその家の人は引っ越しをしないだろう、だと思う。
その答えとしては至極単純で「土地が肥えてる」といったものだった。
このゲームの世界では単純な栄養価の他に魔力も栄養価に入るらしい。更に言えばこの仮想世界はあの現実世界の事象の殆どにプラス魔力としての公式が成り立って構成されている。
だから森というのは二酸化炭素プラスなんにも使えなさそうなカス魔力を取り込みそれを酸素と新鮮でフレッシュでニューな魔力に変えてくれる。
そしてこの新鮮(略)な魔力だがこれは酸素と同じで一カ所には留まらず空気中へと霧散してしまう。
しかし霧散してしまうとはいうものの最初からマックスな訳ではなくゆっくりと霧散していく。
そしてそのフレッシュを地中の植物が吸い成長し、また森となっていく。この和やかな循環(通称ほんわかスパイラル)の近くに畑を作ることで土地が肥えるというものだそうだ。
しかしこれには危険が伴うそうで、それが「魔物被害」と呼ばれる今回の現象。
森は奥に行けば行くほど俺たちがダンジョンで遭遇したセイバータイガーやギガンテスみたいな強いモンスターが出てくるので滅多に行かないそうで今回のような軍っぽいのが動くの初めてだと、牛と仲良くなったアキが牛の飼い主であるミスリルで造られた暴れん坊将軍すらも刀捨てておとなしくなるレベルの目測幅2メートル長さ3メートル程の農耕鍬を片手に牛をつまみ上げてる身長2メートル半の偉丈婦に放心しながら教わってた。
もしかしたら師匠になるのはあの人かも知れない。
そんな事もありつつ問題の畑に到着。
金色の稲穂か何かが綺麗に生え揃っている畑と森との距離は凡そ20メートルもないであろう距離だ。しかし畑から森へ行く道は酷く荒れていて生い茂る雑草を無理やり踏み倒して道を作ったみたいな印象を受けるほど荒れていた。
いっそ不自然に思うほど村の道と山道というか森に行く道は違っていた。
「……整備するのも危険なのか……いや、これは……まさか……!」
ヒロヤもそれを不思議に感じ、畑の周りを色々とみていて何も得るものがなかったのか荒れてる道に向かうと直ぐに何かに気付いたらしくジェスチャーで突っ立っている僕と牛の背中に乗っかって遊んでいるアキを呼んだ。
「俺騎乗出来るようになったぜ!」
ヒロヤの周りに集まって開口一番アキはそう胸を張って自慢した。ヒロヤに怒られてた。
咳払いを一つ。
「これを見てくれ」
ヒロヤが指を指したその先にあるのは踏み倒されて土塗れになって薄汚れた雑草だけだった。
無論これだけじゃわからない僕達は証拠不十分としてヒロヤをこの機を逃さない無いとばかりに悪口もとい指摘する。
「雑草だけでなにわかったような気がしてんだバーカ!アーホ!」
「……ニセコナン」
「ネクラインテリ!」
「……鬼畜戦術士」
「鬼!悪魔!」
ヒロヤはそんな「有り難い叱責」を無視しておもむろに一つの雑草の束を鷲掴み目の前に叩きつけてきた。
「……それが雑草に見えるんだな……?」
ヒロヤが据わった目と薄く引き延ばされ三日月のようになった顔で思い切り優しく、これ以上無いくらい優しく地面に投げられた雑草を見れば、土で汚れていて判別し辛いがそこには米粒のような物が所々千切れて無くなっているものの金色の絨毯と呼ばれる『小麦』が確かにそこにはあった。
そうとわかった瞬間、僕とアキの顔からみるみる明るみが消え去った。
「えーと……とりあえずいじめ抜くけど何か質問は?」
ヒロヤは先程と変わらない酷薄とした笑顔を顔に貼り付け、能面のように感情を見せず、ただただそう女生徒の暗誦のように語りかけてきた。
元来、人というのは感情は隠されていても読み取る事は出来る。しかし人というのは感情を読み取る事が一番難しいとされる生き物だ。なぜなら動物のように本能で生きているのではなく、そこに文化を用いて人は生を営み、種を繁栄させる。文化は人を様々な方向へと導くその結果感情は細分化され愛憎渦巻く三角関係も可能になっちゃった。細分化された感情は読み取りづらく、また、隠されやすい。
しかしこと、ヒロヤ様の今のお心の中に至ってはトイレットペーパーは何色?とわかりきった質問よりわかりやすく、赤子ですら泣くのをやめ真顔になるぐらい強烈に『怒って』らっしゃるのです。目がそうです。依存系ヤンデレが主人公と女をセットでみた時の目よりイっちゃっているんです。
……これはそんな迫真の眼を作った制作者を褒め称え、僕達はこう伝えよう。
『あの眼は恐すぎます』
一通りの精神的拷問が終わった後心なしか爽快感に溢れているヒロヤと端からみてもげっそりほっそりしている僕達と僕達が遊んでいる間にも被害にあった農家の人に様々な情報を貰ってきたエカリーナ先輩はヒロヤに付き従い、訳もわからずに森の奥に進んでいた。
進んでいく道中にヒロヤは聞きたかったモンスターの容貌についてエカリーナ先輩に訊ねていた。
そしてそれについてのエカリーナ先輩の答えはヒロヤの中の疑問を解消したのかヒロヤは先程とは違う皮肉めいた笑みをこちらに向けていた。さっぱりわからん。
僕たちのさっぱりわからん顔が表情に出てたのかヒロヤは溜め息をつきながらも説明し始めた。
「今さっき、エカリーナ先輩の説明の中には四つの大事なキーワードが出て来ていた。それは『大きい』『青い』『黒い影』そして──『一つ目』。これらのキーワードとあの小麦畑の荒れようから推測するに……今回の相手もどうやら一つ目の巨人っぽいぜ」
小麦畑の荒れ様?
俺達はそこで思考を止めてしまったがエカリーナ先輩だけは流石エリート。しっかりついていっていた。エカリート先輩ってよぼう。
「なる程……やはりあれはあいつの足跡出したか……厄介ですね」
顔をしかめるその表情はなんとも様になっており、全く嫌みな感じはしなかった。僕達したら味方にも嫌な顔されるのに。
思考を止めてしまった事に気付かれたのかヒロヤがもう一度深い溜め息を付き聞いてきた。
「……何処からだ」
「「小麦畑」」
「あそこは……っ!……そういえば遊んでたなお前ら……」
いよいよ嘆かわしいとばかりに手で顔を覆ってしまったがすぐに疲れた目で説明を始めた。
「まず、最初に荒らされていた小麦畑だが……」
そこに引っかかった僕は先生質問!ぐらいの勢いで手を挙げた。アキもそこに引っかかっていたらしく僕と同じように手を挙げていた。
しかし、僕の方が僅かばかり先に手を挙げたので後から続いたアキはしぶしぶその手を下げた。
「……小麦畑はどこを荒らされていたんだ?僕がみた限りでは荒れた道と綺麗に生え揃っていた小麦畑しかなかったんだが……」
これを聞いたアキは俺も同じ事を思ったと大仰に頷いて見せた。
「お前らあれを道と思ってるからいけないんだよ……あれは全部畑の成れの果てだ」
「…………!」
「なん……だと……?」
僕らが思っている以上に畑は森と隣接していたらしくあの20メートルはあると思っていた距離も全てが畑だったのだ。吃驚もするさ。
「そう、しかも所々には俺がギガンテスをみたときの足の大きさが一致している部分もあった。だから恐らくはあいつで間違いないだろう」
説明は終わったのか止めていた歩みを再び森の奥へと急がせる。
しかし、先程手を下げたアキだったが何かに気付いたらしく、真剣な、それでいて何かに恐れるような表情で恐々と手を挙げた。
「ヒロヤはギガンテスって言っただろ……?」
「ああ……それがどうかしたか?」
「俺おばちゃんから聞いたんだけどよ……」
あの御仁か。
「ギガンテスって結構『奥』の方でしかでないのになんで『一番前』に来てんだ……?」
その一言で、場の空気が一変したのをゲームにいながら肌で感じる事が出来る程、静かな、それでいて長年のゲームで培ってきたなにか、嫌な予感が僕達を支配した。
ただエカリーナ先輩だけは何時もと変わらない毅然とした態度で答えてくれた。
「お腹が減っていたのでしょう?」
もしかしたら馬鹿なんじゃないのだろうか。
この一言で無駄に真面目になっていた僕達は凝り固まった胸の内の黒い予感を空にするように、ふうと一つ大きく息を吐いてから、また仄暗い森の奥に向かって重い足を使い歩き出した。
真面目にとかやってらんないねー!
花粉症のM2でしたー!