マジシャンズ・アカデミア 5
M1にしては短いような気もします
こんなこともあるさ
上級生に助け出された俺たちは、事情聴取の為に使われていない教室に呼び出されていた。
「なるほど。君たちが実地戦闘の授業で3層を歩いていたらセイバータイガーが出て来たって訳ですか」
どこかで見たような腕組みから発せられる、デキル大人オーラ。何を隠そうこの学園の副学園長だ。
校長じゃねーのかよ。なんて突込みはナンセンスだぞ。設定上忙しいらしく、今もどこかのお偉いさんと何処かで会合しているんだとか。
(てか、チュートリアルで死人出るとか聞いてないぞ……)
死んだのなんて名前だっけ? 松村?
まあいいか。感動的なシーンならともかく、あれじゃあユーザーに末永くネタ扱いされるだろうな。
「彼も言ったと思いますが、セイバータイガーは少なくとも6層以下、普通なら8層前後をうろついている魔物です」
俺の横に座らされている上級生(まだ名前は聞いてない)をチラッとだけ見て副学園長はため息をつく。
「確かに最近は魔物の活動が活発だという報告は受けていましたが、まさか生息域を大きく逸脱するまでとは」
ああ、そういやそんなこと取説に書いてたっけ。
「原因調査、とはいかないまでも、少なくとも他に場違いな魔物が居るかどうかを確認するまでは学園のダンジョンは閉鎖するしかないでしょうか」
(マジか!? いきなりダンジョン要素消し飛んだぞ)」
すかさず交わされる視線会議。
「(初期ダンジョンって学園指定のだけだよな)」とダント
「(たしかそうだな。レベル学年、あとは階級とかいうよく分からん制度で増えていくみたいだけど)」と俺。
「(待て待て、つまりそれだと、俺たちはダンジョン入れないって事か?)」とアキ。
「(そうなるな)」とダント。
一同沈黙。というより、副学園長が話さない限り俺たちが言える事なんで何も無い。
「いえ、それには及びません」
このタイミングで突如、この場の誰のでもない声が聞こえた。
「おや、あなたは」
登場したのは我がクラスの担任だ。そういやこの人の名前もまだ知らないな。
「私も現場で監督をしていましたが、どうやらセイバータイガーは2年生が引っかけて来たようです。他の魔物は確認されていませんが、恐らくはもう居ないでしょう」
「なるほど。自身の実力を見誤り慢心した結果、このような惨事を招いてしまった訳ですか。亡くなられた生徒の保護者になんと説明すればいいか……」
副学園長はこめかみを指で押さえて嘆く素振りをする。
「それは、私の方では何とも。取り敢えず原因である2年生徒については私の部屋で待機する様に命じていますが」
「そうですね。今回の事で十分に分かったとは思いますが、私からも言っておきましょう」
どうやら難しい話は終わったようで、副学園長が俺たちの方へと顔を向けた。
「付き合わせてしまいましたね。ですがこれで終了とします。今回は怖い思いをさせてしまいすみませんね」
柔和な笑顔から繰り出される誠心誠意の謝罪。これに対して待ったを掛けれる人間なんているのだろうか。
「それでは自分はこれで」
言うなり、上級生は立ち上がり部屋を後にした。
「このような事が起こってしまった以上、午後の授業は中止にして職員会議をおこなう必要があります。その間、君たちは錬武館にでも足を運んでみたらどうでしょう」
錬武館ってたしか……。
「ええ。技や魔法の修練が行える施設です。申請すれば魔力で疑似的に作り出された魔物との模擬戦も行えますよ」
というわけで
「おおー。ここが錬武館か」
ダントが、フルチューンされたでっかい体育館、みたいな外見の錬武館を見て声を漏らす。
「新しい技とか魔法とか習得できるんだよな」
「ああ。まあ、自分のレベルにあってるのに限るけどな」
「何でも良いっての。早く入ろうぜ!」
俺たちはアキに押されるようにして錬武館の中へと足を踏み入れた。
「へえ、こんな風になってるのか」
中は用途別に仕切りがあって、ロビー兼休憩所を中心にまず魔法と剣に分かれ、さらにそこから属性や武器の種類で部屋が細分化されていた。
「どうする? みんな同じ訓練するか、あるいは別々でやるか」
「そうだな。別個の方が面白みあるだろ。全部終わってから、模擬戦やろうぜ」
「お、いいなそれ」
俺の疑問にダントが答え、それにアキが賛同したところで俺たちは別れた。俺の行先は水属性の魔法を訓練できる部屋だ。ついでに剣技も見ときたいが、まあそれは時間があったらでいいか。
流石はゲーム。それなりに人がいたのに、俺が部屋に入ると中には誰もおらず、代わりに電子パネルのようなものが置いてあった。……おい世界観。
確か使い方って……。
取り敢えず学生証を出す。大体の事はこれでどうにかなったはずだけど。
パネルに学生証をかざすと即座にデータが読み込まれ、俺が習得可能な魔法の一覧が表示された。
おお、レベル1でも案外あるもんだな。
どれにしようかな、と表を見ていた俺の目がとある魔法を見つけた。
これでいくか。
『この魔法の訓練を開始しますか?』
との、いかにもゲームなメッセージにYesと返答すると、部屋のつくりが一気に変化した。というか全然別の場所になった。
ふむふむ。訓練に適した環境に変わるんだな。
魔法とかなんでもアリなのかよ。
まあいい。俺は気を持ち直す。あの二人をビビらせてやらねばいけないので、真剣に受講しようか。
魔法の説明やら効果を読み飛ばし、早速おれは戦闘訓練に入った。
勉強したくないけどしなきゃなんだよね!




