進展
なんか気付かぬうちに発足から1年たってたゲーム同好会です。
終わったわけじゃないよ~
とか言いつつも、誰が見ているのやらと思わないでもないM1です
「なあ、あのカーネル・サンダース風の校長ってば北海道って言ってなかったっけ?」
「言ってたな」
俺の呟きに明希が反応する。
「ここってさ、北海道か?」
「埼玉だな。多分」
校長に連れられて電車に乗った俺たちは、数時間も揺られることなくプラットホームに降り立ったのだ。
そこから歩いて30分ほど。埼玉某所のとある建物に俺たちは足を踏み入れた。
校長が「まずは挨拶に行ってくるわい。おまえさんたちはその辺りで喋っててくれるか?」と言い残して奥の部屋へと入っていたのが数分前のこと。
24畳ほどの応接室の隣にはもう一部屋あるようで、壁の上半分がガラス張りになっているため向こうを覗く事が出来る。暖人は来て直ぐに駆け寄って行った。
俺と明希はと言えば、
「おい! 北海道って聞いてたからこんなに荷物持って来たのによ!」
壁際に置かれた大きなスーツケース+リュックを指して明希がわめく。
「いや、お前は持ってきすぎだって」
「だってスキーウェア入ってるからな。去年の冬に買ってまだ1回しか着てない。ぶっちゃけ新品だ」
「仮に行ったとしてもそれは向こうでレンタルできるだろうが!」
「…………ちょっと」
いつものように(?)俺と明希がコントを繰り広げていると、暖人がぼそっと呟いた。
「なんだ?」
俺を掴んでいた手を緩めて、明希は暖人の方を見る。
「…………あれが、もしかして新型のバルカス?」
「「マジ!?」」
揃って声を上げた俺たちは、暖人の指すガラスの向こうを見る。
「お、おぉ!」
「なんかスゲーそれっぽいな!」
ガラスと壁に隔てられた向こうの部屋には、4台のマッサージチェアっぽい椅子らしきものが置かれていた。基部から伸びるコードが直ぐに床に入っていることから見て、暖人の言うとおりこれが新型のバルカスなのだろう。
「…………今のより、少し小型化されてデザインもシャープになってる」
「え、お前マジもんのバルカス見たことあんの!?」
多大な驚きと共に明希が質問する。
「…………父さんの友人の家に在って、すこしだけ触った」
「へぇ~。あれだろ? なんか、横に置いてあるヘルメットみたいなの付けて脳波を測定してゲームに反映させるんだろ?」
「…………ナーヴギ――」
「それ以上は言うな」
危うい所で俺が静止に入って、その意味に気付いた暖人は手振りで謝罪の意を表す。
「ところで、校長はいつまで話してんだよ」
奥の扉を見て、明希が気怠そうに、不満たっぷりと言った様子で呟く。 荷物の量を考えれば分からないでもないが、自業自得と言えばそうでもある。
「悪い悪い。つい話し込んでしもうたわ」
ナイスタイミングと言うか、ちょうど会話の途切れた時に校長が部屋から出て来た。後ろには友達だろう人も立っている。
「まずは互いに紹介しようかの。こちらが、わしの旧友でゲームの、主にハードの開発に関係する仕事をしている岸部龍之介じゃ。で、こっちの3人さっきも話したゲーム同好会の会員じゃよ」
校長と違い、50半ばほどなのに体には若さが残っている。すこしボリュームを与えつつも後ろに撫でつけられた髪に白髪は見当たらない。
「ご紹介に預かりました、岸部龍之介です。月山(校長の名字)とはもう中学以来の付き合いでね、当時は今のようなゲームは無かったが、よく一緒に遊んでいたんだよ」
自己紹介の後、岸部さんは手を差し出した。俺たちは順番にその手を取ってそれぞれ簡易の自己紹介をする。
「もう話は聞いてると思うが、君たちに頼むのは新型バルカスのテストプレイだ。様々な環境で様々なテスターにプレイしてもらうことでより良くしていく為にね」
そこで話を切って、岸部さんは俺達をソファーに座らせ、自分は校長と一緒にテーブルを挟んで向かいに座った。
「僕は新型バルカス、捻りもなくVARCS-Ⅱっ言うんだけどね。これの開発に関わっててね、そういう理由であれが在るんだよ」
岸部さんは視線をガラスの向こうに飛ばした。俺たちは秘書っぽい美人お姉さんの持って来たソフトドリンクを飲みながら岸部さんの話を聞く。
「最初は僕と部下でやればいいと思ってたんだけどね、彼から君たちの事を聞いてたのを思い出して、どうせならいい歳になった大人よりもターゲット層である君たちにまかせてみようと思ったんだよ」
なるほど。この話が転がり込んできたのは、校長が俺らのことを岸部さんに話してたからなのか。居酒屋で嬉々としてゲーム部について話す校長の姿がありありと想像できる。
「えっと、質問良いすか?」
明希が手を挙げた。
「なんだい? 企業秘密でなければ答えるよ」
「テスターって、俺たちの他にも居る訳でしょ。だったら、サバシスのネット対戦とか出来るんですか?」
え、サバシスってネットに繋げれんの? 面白そうだな。
「いいや。今回君たちにやってもらうのはサバシスじゃないよ。同時開発で幾つかソフトの方も開発してるんだけどね、そっちのテストもしてもらいたいんだ。まあそんな訳で、別のテスターとバーチャルで会うことは無い」
「バルカスでサバシス以外のゲームが出るんですか!?」
明希が続けて、興奮したように質問を追加する。
「そうだよ。値段が高いこともあってサバシス以外のソフトは全部乗り物とかのシュミレート訓練しかなかったからね。多少の赤字は覚悟で値段を切り詰めてゲームの方にも手を広げる事になったんだよ」
「…………僕も、質問」
次に暖人が手を挙げた。岸部さんはそれに目線で答えて先を促す。
「…………ゲームの中に入ったような感覚がバルカスのコンセプト。でも実在しないモンスターを、デジタル上とはいえ映像ではなく実像として再現するのが難しかったから唯一のゲームはMOFPSになったと聞きました」
おぉ。あの暖人が現実世界で長文を喋っている。これは貴重なシーンかも知れない。
「一般的なゲームに進出すると言うことは、ファンタジー要素も問題なく造り込むことが出来たと言うことですか?」
「作ることは出来たよ。実在しない生き物、技術、魔法のエフェクトなんかもね。3D技術の進歩は僕らが思っているよりもずっと速い。それをバルカスの電極を通して電気信号として脳に送ることも何とか出来た。まだ多少のラグもあるけど、それは今回のテストで削って行けるはずさ。五感なんかもかなりの再現率さ」
グラスを置き、岸部さんは続ける。
「ただテクスチャがちょっと荒かったり、とても細かな自然現象や衣擦れなんかはまだまだ再現しきれてはいない。テストのときは台数も少ないし大容量のサーバーに接続するからすこし気になる程度だろうけど、商品化するとなると……まだ開発の余地があるといえるかな」
……なんだか長かったが、テストするゲームは殆ど問題ないってことだよな。
暖人も同じ結論に達したらしく、満足そうに頷いた。
「…………どうも有難うございます」
「君は、質問とかないかな?」
「え、俺ですか?」
急に振られて頭がうまく回らない。
「うーんと、じゃあ、そうだな。今回俺たちがテストするゲームってどんなゲームなんですか?」
「よく聞いてくれたね」
岸部さんの顔に笑みが広がる。
「それは――――」
取り敢えずこのあたりで筆を置いときます
ゲーム内容がまだ未定なのでw
……テスト明けたら動き出すかも




