ドラゴナイト 21
そろそろフィナーレ
方舟を倒したところで一旦解散。
軽く会話をした後で俺はいつものように職員室へ鍵を返しに行く。
時刻は午後の7時。つまりその時間まで学校でゲームをしていたという事だから、俺を見る教員たちの視線にはお世辞にも友好的とは言い難いものが含まれている。
「失礼しましたー」
逃げるように職員室から立ち去って、俺は家路を急いだ。
有川家リビング。
家族には俺が最近部活に入ったことは知らせているが、内容までは教えていない。しかしまあ大体の中身はバレている気がする。なぜなら、このような会話がたびたび出てくるからだ。
「いーなぁ、兄ちゃん。学校でゲームできるなんてさぁ」
中3の弟は俺が帰ってくるなり、ソファーに座ったままそんな事を言い放った。
……大体どころじゃない。全部バレてる気がする。
「同好会の活動だ。別にタダ遊んでるだけじゃない」
各ゲームがそれなりの地点までくると、いちいちレポートを書かないといけない。
あまりふざけ過ぎると同好会活動すらも止められかねないから、俺達は純粋に楽しんでやっているゲームにわざわざ理由付や細かい評価を下さなくてはならないのだ。
「あー、お兄ちゃん帰ったんだ。ご飯はお母さんが作ってくれてるよ」
鞄も置かないままに立つ俺に声を掛けたのは、先ほどリビングに入ってきた中1の妹だ。
「ふーん。で、その母さんは?」
「仕事残してるからって会社に行ったよ」
「なるほど。……父さんは?」
「部屋で寝てるー」
あのクソ親父。
俺の父親は一応作家だ。そこそこの作品もいくつか出しているし、ファンも居るらしいのだが家ではとにかくだらしない。
「まあいいや。じゃあ3人で食べるか。潤は皿の用意、琴音はその他の準備をしてくれ。俺はおかずとかをよそうから」
「はーい」
「えー、兄ちゃんと琴音でやればいいじゃん。今いいトコなんだって」
妹は俺に似て「いい子」なのだが、弟は俺に似ずに「良くない子(悪くはない)」に育ってしまっている。
「ああ? その程度の敵なんて俺がこんど瞬殺してやるから準備を手伝えって」
「マジで!? 約束だぜ兄ちゃん!」
約束は違うためにある! と俺の友達が言っていた。あまり褒められたものではないが、今ばかりは借りさせてもらおう。
「マジマジ。だからさっさと手伝え」
「うーぃ」
翌日 同好会部室にて
その日の同好会は、ゲームを起動して闇の頂点を倒しに行くはずが、なぜか俺の家庭事情の話になっていた。
「なんであんな風になったんだろう」
「尋哉に似たからだろ?」
「…………似たから」
「お前らもう回復してやんねぇ」
「わー、待て待て。そういうのはあるって。中3なんだからそのくらいの意思表示はするもんだよ!」
「…………それが普通」
「でも琴音は素直なんだよなぁ」
「お兄ちゃんっ子なんじゃないか?」
「…………そんなの2次元だけ」
「だよな。兄好きの妹とか普通いないって。それにあいつ彼氏いるし」
「…………なん、だと。具体的に教えろ。名前、見た目、住所、家族構成。さっさと調べてこい!」
あ、暖人が暴走し始めた。なんかコイツ琴音に関するとスイッチ入るんだよな。
「名前とかはともかく、身長は160後半くらいはあるかな。それに結構カッコいいし」
「…………160代後半だと!?」
勝てねェ! みたいな顔で拳を握りしめる暖人。面白そうだからこのままのテンションでゲームさせようか。
「じゃあ、取り敢えず頂点を狩りに行きますか」
明希の一声でそれぞれがゲームを起動させ、暖人が立てた部屋に入った。
「おま、琴音ちゃんに彼氏がいるとか聞いてないぞ!」
ゲーム内に入った途端、俺よりも顔の位置が高くなったダントが興奮気味に捲し立てる。
「だって言ってないからな」
「まーまー、まず鍛冶屋に行って武器貰って、そんでクロノさんトコいこーぜ。頂点狩りとかワクテカだぜ」
アキはこんな時も司会進行をしてくれる。
実を言えばもう少しダントを弄っていたかったのだが、頂点との戦いは熾烈を極めるだろうから準備にいくら時間をかけても、掛けすぎにはならないだろう。そのためには早い段階で動いた方がいい。
まあゲームだからある程度はプレイヤーの融通が利くんだけどね!
というわけで俺たちは《グリムロック》へと足を運んだ。
「親方さんいるー? ヒロヤだけど、武器とかどんな感じかな?」
いつものように小気味の良い音のする鍛冶屋で、俺はこの店の主を呼ぶ。
「ふん。儂を誰だと思っている。全てお前さんたちの要望通りに作ったわい」
そう言って親方は、俺達を店の奥へと案内した。
「丁度ルカが配達で出かけている。よいタイミングで来たな」
「たまたまですよ」
「どゆこと?」
俺と親方の会話の意味が分からなかったアキがその心を尋ねてきた。
「ルカがいると必要以上に長くなるって事」
「なるなる」
アキが引き下がったとき、いまだにショックを引きずるダントは無視して親方は足を止めた。
「こいつらが、お前さんたちにやる儂お手製の武具だ」
「「「おおぉ……!」」」
ダントすらも、一時ショックから抜け出して台の上に並べられた武具に感嘆の意を漏らした。
「ほんとに、貰っても良いですか」
「なに、お前さんたちが頑張って見つけたんだろう。クロノから話は聞いておる。好きに使え」
何気に団長と親方が知り合いだったことに驚きつつ、俺達はこぞって自分用のモノに手を伸ばした。
蒼を基本色としたそれぞれの武具は、もう見ただけで「レベルに合ってねェ!」と叫びたくなるほどの一級品ばかりだ。
「すっげ。最強級にも引けを取らないんじゃないか?」
美麗な二振りの剣を眺めて、ダントは思わずと言った感じで呟く。
「エクスカリバーにも勝てそうだな」
すごくいい笑顔でアキも呟くが、その対象が鎌なのでややアブナく見える。
「さっさと装備して、クロノのところにでも行ってこい。闇の頂点を倒すんだろう」
なぜか全て知っている風の親方に三人揃って全力の礼を言って、今度は軍本部を兼ねる城へと向かった。
「なんつーか、レベルが20は上がった感じだな」
道中、アキがそんなことを言った。
「分かる分かる。しかも俺たちに丁度いい設計にしてくれてるし、今なら方舟にも軽く勝てそう」
「それはどうだろうな」
俺とアキで話をしていると、横からスッとダントが出てきて口を開く。
「琴音ちゃんってそいつのこと好きなの?」
「まだその話してんのかよ。知るかっての。付き合ってんだから好きなんだろ」
「ははは。たしかにそうかもしれないなぁ。まったく、この怒りをぶつける対象が闇の頂点の他に思い浮かばねーぜ」
……合掌。
「あれ、そういえば頂点って正式名称なんだっけ?」
「お前覚えてないのかよ」
ダントが怖い顔をする中、真顔でアキがそんなことを聞いてきた。団長さんが言ってたの聞いてなかったのかよ。
「ダークフレアドラゴンだよ」
「むぅ。ダークなのにフレアとは。2属性とかだったら笑えないな」
「いやいや、ダークでフレアじゃなくて、ダークなフレアかもしれないぜ。炎〇黒龍波みたいな感じで」
「あー、確かに黒くて炎で竜だったっけ、あれ」
「てことは、闇の頂点って〇影だったりして」
「飛〇とか勝てる気がしない」
……俺とアキが話す間、ダントはずっと笑っていた。話し続けていたのは、沈黙に耐えれなかったからかもしれない。
広間に集められた騎士の数は、少なく見積もっても300人は超えている。前回の防衛戦よりも多いという事は、遠征や地方の警備に当たっていた人手も動員されたという事だろう。
なぜ集められたのか、この場に居る全ての者がそれを理解している。理解しているからこそ、その重さを感じてしまう。
ザワザワと喧騒が支配するなか、壇上に1人の男性が上った。それと同時にあらゆる音が停止した。
「やあ、来てくれたことにまずは感謝の意を示そう」
騎士団長クロノは、そう始めた。
「堅苦しいことは抜きだ。君たちには既に新しい装備が支給されていると思う。それを製造するために使用した希少金属の数々は、3人の新人騎士によって発見された。その際に彼らは眷属である方舟をたった3人で倒すという偉業すら成し遂げた」
おぉー。と広間にざわめきが広がる中、俺はわずかに体の中がむずがゆくなる感覚を覚えていた。
「頂点も確かに強大ではあるが、我々全員がその全力を以って当たれば、勝てない相手ではないと私は思う!
今回の遠征は、私や副団長、それに歴戦の騎士たちと有望な新人もあって、過去最強と言っても過言では無いだろう。
……古参の騎士たちは知っていることかもしれないが、実は闇の頂点へは既に数度攻撃を仕掛けたことがある」
へー、そうなんだ。
似たような感想を二人も持ったらしく、同様の反応を示している。
「その時まだ私は平の騎士だった。方舟の邪魔も入り頂点へは満足に攻撃が出来なかった。しかし、それでも頂点の体力を半分まで削ることは出来たのだ」
再び、おぉーと小さな歓声があがる。
「今回は全体の練度でも、装備の質でも、そして数や士気でも当時を遥かに上回っている。私はここに断言する。我々は必ず勝つと!」
クロノの、慢心ではない自信にあふれた言葉。しかしここでは歓声は起きなかった。次にクロノの言う言葉を聞くためだ。
苦しいほどに張りつめた静寂の中、クロノは静かに口を開いた。
「明日、闇の頂点を倒しに行く」
これ以上書くと、キリの良いトコまで持っていくのに文字数が面白いことになりそうなので止めた次第
えーっと、1話で闇の頂点倒せるかな……?
M2さん
マジで頑張ってください!
それとラクしてすんません!
クロノのとかバンバン戦わせればなんとかなるかもしれません!
次回予告
ついに始まった頂点との死闘
見ただけで圧倒されるその強大な圧力に、しかしクロノを始めとする討伐軍の面々は余裕を崩さない
「みせてあげよう。人の力を!」
言葉と共にクロノが取り出したのは複雑そうに見える鉄製の円筒
――――RPG―7
時代に合わない人工物を手に、討伐隊は頂点へと挑む!
次回!
『クロノ「剣と魔法が効かなくてもコレなら!」』
『闇の頂点「ちょ、ま、それ反則!」』
の2本立てでお送りします




