ドラゴナイト 12
そろそろ前ゲームの13話に迫ろうとしてますね。M1です
またしても「勝てるわけねーだろ」な試合ですが、ヒロヤ君は頑張ってくれました
彼の健闘をご覧ください
防具と魔法(俺だけ)の買い出しが滞りなく終わり、そろそろダントも話が終わっているだろうと俺たちは宿屋に向けて歩いていた。
「君たちが、ダントかい?」
唐突に後ろから呼ばれて振り返る。別に俺たちのどちらの名前でもないので無視してもいいのだが、ダントの名前が出て来たのと、なによりも抗いがたい強烈な気配のせいで俺たちは振り向かざるを得なかった。
振り返った視線の先には、感じた圧力とはまるで違う優男が立っていた。
「いえ、違います。まあダントは連れですが」
雰囲気に呑まれながらも、なんとか俺は言葉を返す。
見た目年齢は2~30ほど。着こなす鎧は一目で歴戦のモノだと分かるが、それと同時に丁寧に手入れをされた輝きも放っている。
「いやなに、君たちのパーティーが先の防衛戦に置いて際立った功績を叩き出していたからね。1位を独走する新人とはどんなものか知りたかったんだよ」
男は、破顔して握手を求めて来た。顔は笑っているが、押しつぶさんばかりの闘気はなおも放たれている。
俺が男の真偽を測りかねていると、今まで黙っていたアキがいきなり大声を上げた。
「あんた、どこかで見たことあると思ってたら、騎士団の団長だろ!」
…………マジで?
「はは、名乗り忘れていたな。しかし新人にまで知っていてもらえるとは、団長も捨てたものではないね。
改めて名乗ろう。私の名はガルフィード・クロノだ」
差し出された手を、俺は慌てて取る。今は騎士団が取り敢えずの目標なのだから、よい心証を抱いてもらうに越したことはない。
「自分は、ヒロヤと言います」
「俺はアキです」
俺に続いてアキも握手を終える。
「ところで、その騎士団長さんが何の用なのかな?」
互いに元の立ち位置に戻って仕切り直し、といったところでアキが切り出した。
こういう所で強気に出れるアキは凄いと思う。
「さきほど話しただろう。君たちの事が気になったんだよ」
「それだけでは、当然ないんでしょう?」
「……ふむ」
アキに続けて俺の言ったセリフに、考え込むように俺とアキとに交互に視線を合わせる。
「君たち相手に腹の探り合いをする必要もないか」
「手短に頼むぜ。一応ダントを待たせてあるんでな」
物は良いようだ。ウソも方便、というが、まさにその通りだろう。
「分かっている。提案したい事は一つ。強制ではない。拒否することも出来る」
「で、なんなんですか?」
「君たち3人と、私に副団長、ガデスっていうんだけどね。それともう1人見込みのありそうな新人の3対3で模擬戦をしないか?」
「冗談キツイな」
「下っ端もいい所の俺たちが団長様と模擬戦ですか」
俺もアキも、飄々と受け答えをする。真正面から取り組めば、確実に呑まれることが分かっているからだ。
「ああ、その通りだ。なに、タダの訓練だよ。個人的な、という言葉が頭に付くけどね。それに結果、いや、内容いかんでは君たちを正騎士に昇格させてもいい」
衝撃の言葉が騎士団長から出る。
内容によっては騎士にしてもいいだと?
「それこそ、冗談キツイっすよ」
アキの口調も、若干真面目な物へと移行した。
それだけ騎士団長が言ったことは異例なのだ。一定数のクエストを消化し、昇格クエストを受けることで初めて成れる正騎士に、可能性によっては防衛戦と合わせて2度の戦闘で成れるという訳だ。
「(どうする?)」
「(イベントってこえーな、オイ)」
「(ダントにも確認取らないと判断しかねるな)」
「(確かに)」
だんだんと様になってきたアイコンタクト会議を終え、俺は回答をアキにまかせた。何故か今回は選択肢が発生せず、口頭での受理となるようだ。
はたしてアキの答えは
「望むところだ。ショートカットできるならやるに決まってるだろ」
その通り。確かに新人の間でもそれなりに楽しいだろうが、やはり最終目標は頂点を倒すこと。すなわち竜騎士の称号だ。その為に出来る近道ならいくらでも入って行く。
「良い返事だ。ならば明日の正午に第一訓練施設でいいかい」
「ええ、構いませんよ」
「そうか、ありがとう」
アキの言葉を聞き、騎士団長はその身に纏う闘気を一瞬たりとも緩めることなく、もう一度破顔し去って行った。
丁度ダントが俺たちの方に走ってきた。あの野郎、まだ10分しか経ってねーのにナニ出てきてやがる。
まあいい。それよりも重要な案件がついさっき転がり込んできたところだ。
騎士団長の後ろ姿を見るダントに俺は話しかける。
「なあ、明日の正午は空いてるか?」
「うん? ああ、空いてるがそれがどうかしたのか?」
当たり前だが状況が分かっていなダントに先ほどの決定を伝えるべく、俺は一拍タメてから言葉を音にのせる。
「明日の正午、俺達と騎士団長プラス副団長で、模擬戦だ」
ってのがこれまでのあらすじ。
ついさっきアキが格好悪いことこの上ない負け方で退場し、次は俺が副団長、ガデスとの一戦を控えていた。
なんでアキはスキルを使わなかったんだか。
つーか、人数揃えて模擬戦って聞いてたからてっきり集団戦かと思ったけど個人戦なんだな。
ガデスは既に部屋の中心で双剣を十字に構え瞑目している。
――双剣ならダントとやれよ! どう考えても速度で不利だろ!
そう叫びたいが、しかしそうなると俺が騎士団長と戦わねばならないので却下。
騎士団長ガルフォートの長剣の一振りは、戦神アラスの一撃とも言われているらしい。絶対戦いたくないね。
新調した防具。特に鉄製の小手をチェックし、俺はハルバードを携えてガデスと5mほどの距離を開けて半身に構えた。ルカの作ってくれている武器が有ればなお良かったのだが、無い物ねだりはしても仕様がない
ここまで来たら、やるしか無いか。
俺が相対したのを確認したガデスの痩身から、スカルナイトなど比較にもならない重圧が放たれる。
「あー、もう。いやになるねぇ」
今からこんな化け物と戦わなくてはならないのか。
「まったくもう。俺は勤労意欲が低いんだよ!」
速度と手数で負けているなら、範囲と攻撃力で勝るしかない。
『始め!』
審判の無慈悲な宣告が下された直後、俺は昨日買った魔法を発動させる。
ガデスの目の前で光が弾け、一時的にであれ視覚を潰したはずだ。
「お、っらぁ!」
即座に俺はスマッシュを発動させる。
「む……」
眩しそうに片目を薄く明けたガデスは、後方に跳び退ることで斧の一撃を躱す。
しかしスマッシュはただの単発技ではない。刃先の着弾地点から扇状に衝撃波が広がっていくのだ。後ろに跳んだだけでは避ける事が出来ない。
気配でそれを察知したのか、それとももう目が回復したのか、ガデスは今度、上方に跳んで衝撃波をもいなした。
「勝機!」
相手が身動きの取れない宙に居るなら、狙い澄ましてアレを使える。
「甘いな」
「なにっ!」
今まで俺の斜め上に居たはずのガデスが視界から掻き消えた。
気配は右後ろ。
勘に従って、俺は体の向きをガデスに向け武器を盾代わりに構えて後方へと跳ぶ。
「避けるか。センスは良いようだ」
「うるせ」
2本の双剣が、先ほどまでの俺の首と心臓の位置でピタリと止められていた。
おいおい。刃引きしててもソレ刺せるだろ? 気を付けろよな。
「仕切り直しか。新人のくせに中々やる」
「一言余計なんだよ」
「ならば、次で決めるか」
「舐めんなよ」
互いに言葉を交わし、構えなおす。
あれ……。
ガデスの構えが先ほどまでと違い、左の剣を後ろ手に隠すように持っている。
訝しんだのは一瞬。
考えている暇など無かった。
ガデスの双剣が碧く煌き、恐ろしい速度で走り込んできたからだ。
――NPCもスキル使えんのかよ!
まあそれも当たり前かもしれないが。
またしても俺は後方に跳ぶが、間に合わない。右腕の剣が下から跳ね上がり、俺の首筋を的確に狙ってくる。
下からの斬撃に対して防御を取ろうとした瞬間、頭上から言い知れない恐怖が降ってきた。慌てて上に意識を向けると、いつ振られたのかは分からないが、左手に持つ剣が一直線に俺目掛けて振り下ろされたいた。
上下からの時間差攻撃。まるで竜のアギトのような攻撃が、俺に迫っていた。
「……っ!」
俺は急遽、防御の姿勢を変える。左手をハルバードから離し、下からの斬撃は鉄製の小手で受け止める。上からの斬撃は武器の柄で止める。
「あぐっ!」
不完全な体勢のまま力の入らない片手で受け止めた攻撃は、あっけなく崩され俺は後方に飛ばされる。
しかしそれでもまだ防御した分だけライフの減りは少ない。俺は反撃しようと顔を上げた。
「うそだろ?」
ガデスの剣は未だに光を失ってはいなかった。つまり、まだ技は続いているということだ。蒼き光芒を引き連れて、ガデスは追撃を仕掛けてくる。
「くそがっ!」
俺はヤケクソでハルバードを盾代わりに自分から体当たりをかました。技も何もないただのタックルだが、以外にもこれが功を奏したようでガデスの動きが一瞬だけ止まり、体制も崩れた。しかしまだ剣は光っているため何一つ安心することは出来ない。
「くっ……」
ラストチャンス。
そんな単語が頭をよぎった。
(出し惜しみなんてしても意味ないな)
俺は刹那の隙に懸けて、先日習得した「とっておき」を発動させる。
「双戦斧撃・鋼叉!」
ハルバードが朱色に輝く。
超高速の槍斧による左右からのほぼ同時攻撃。ガデスの技が縦のアギトだとするなら、俺のは横のアギトである。まあガデスのような追撃はないが。
「ああぁぁぁぁ!」
まるで2本の武器を持つかのように、強烈な一撃が左右から同時にガデスを捕える。
弧を描く2筋の斬撃が交差しようとした時。
「まだまだ甘いが、最後の攻撃は見事だった」
ガデスの姿が霞んで消え、後ろから声が聞こえた。
同時にわき腹と首筋に鈍い痛みが走る。
「技の名は朧。名の通り己を霞として攻撃を回避する。体術を極めれば習得できるが、使用後の疲れは半端ではない。滅多に使わないんだがな。興味があれば挑戦してみろ」
「……疲れ、るんなら、ヤですよ」
残念ながら俺の負け。急速にブラックアウトしていく中で、俺はダントの冥福を俺は心から祈った。
副団長でコレとか、あり得ねぇ。……ダント死んだな。
気絶はしたが、ダントVS騎士団長までには回復できたので良しとしよう。
さて、そろそろ始まるわけだが、どうなることやら。
俺は一人で(ガデスは俺と反対の隅で見ているし、アキはヒロインと喋っている)長椅子に腰かけダントの背中を見送った。
負けましたねぇ
いや、副団長とやれば当たり前か
アキはイチャラブしてますし、ヒロヤはお仕事終了。
「じかいよこく」
ダントの隠された能力が明らかになる
騎士団長を追い詰める圧倒的な力
世界の根底に眠るダントの過去とは?
次回、
『お前ラーメンって何派? 俺は豚骨醤油派!』
『卑怯者! 花嫁は泣いた』
の二本立てでお送りします。
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・・・・・・・嘘ですよー
・・・・・・・……多分




