表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

■ 第六話 「鍛錬に終わりはない」

(▭-▭)φカタカタ:そろそろ誕生日にしてあげようか。

 歩けるようになってから、環境の見え方が変わった。

 視点が上がる。それだけで情報量が増える。

 床しか見えなかった世界に、家具の輪郭や配置、人の動きが入ってくる。

 距離感も掴めるようになり、空間そのものを理解できるようになった。


 同時に、内側の制御も安定している。

  丹田に霊力を集める。練る。巡らせる。

 この流れはもはや意識の一部になっていた。

 歩行中でも、視線を動かしていても、乱れない。


 むしろ、動きながらの方が分かることもある。

  負荷。 身体を動かすことで、霊力の流れに微細なズレが生じる。

 そのズレを修正する過程で、巡りの精度が上がる。

 静止状態よりも、動きの中の方が調整しやすい。


 試しに、少しだけ出力を上げる。 巡りを速める。

 密度を上げる。身体へ流す量を増やす。 踏み出す。

 軽い。 明らかに軽い。 次の一歩。 床を蹴る力が増している。

 だが制御は問題ない。


 そのまま、少しだけ速く動く。 音が変わる。足音が軽くなる。動きが速くなる。

 ……これは。 普通に走れている。

 少し、やりすぎたかもしれない。 止まる。 バランスは崩れない。

 呼吸も問題ない。霊力の流れも安定している。


 だが。


「ちょ、ちょっと待って」


 後ろから声。 振り返る。 女がこちらを見ている。

 

 完全に目で追っていたらしい。


「今、走ってた?」


 確認。 理解が追いついていない顔。


「……いや、さすがにそれは」


 男が口を挟む。 だが、その言葉も途中で止まる。

 俺はもう一度、軽く踏み出す。 速く。 一瞬だけ加速して、すぐに止まる。

 見せるつもりはなかったが、まあいい。 沈黙。


「……」

「……」

「……走ってるわね」


 結論。 否定できなかったらしい。

 男は少しだけ視線を逸らし、考えるような間を置いてから、


「……筋がいいんだろう」


 そう言った。 雑だが、前と同じ処理だ。

 理解ではなく、納得できる形に無理やり落とし込む。


「筋ってレベルじゃないと思うんだけど……」


 女は納得していない。 当然だ。 だがそれでも、強く否定はしない。

 これまでの積み重ねがある。 違和感はあっても、否定しきれない。

 それが今の状態だ。


「……まあ、元気ならいいけど」


 最終的に、そこに落ち着く。 結局それだ。 問題がなければ許容する。 合理的だ。⋯⋯達観とも言う。

  内側へ意識を戻す。 霊力は安定している。消費はあるが、回復が追いつく範囲だ。

 むしろ、動かした方が循環が良くなる。 走る。 止まる。 方向を変える。

  そのすべてで、流れを維持する。

  問題ない。 むしろ、精度が上がる。

  ……使い方としては、間違っていない。


 そのときだった。 視界の端。 ほんのわずかだが、違和感が走る。

 空気の揺らぎ。 以前見たものと同じ。

 黒いモヤ。 壁際、天井の隅。 薄い。 前よりも、ずっと薄い。

 だが、ある。 視線を向ける。 向けた瞬間、わずかに形が揺れる。 反応した。

 ……なるほど。 前と同じなら、放っておけば消える。


 だが。 今は、少し違う。 出せるようになっている。

 霊力を。 丹田に意識を落とす。 集める。練る。圧をかける。

 そして、喉へ。 流す。 ぴゅっ。 出た。 細い。 弱い。

 だが、届く。 黒いモヤに触れる。 一瞬。


 ほんの一瞬だけ、その形が揺れる。 消えない。 だが、反応はある。

 ――届いている。 それだけで十分だ。 もう一度。

 流す。 ぴゅっ。 触れる。 揺れる。 だが、やはり消えない。

 足りない。 単純に、量も質も。 だが。 無意味ではない。

 干渉できる。 それが分かった。 そのときだった。


「……なんか、寒くない?」


 女の声。 わずかに腕をさする。


「気のせいだろ」


 男が返す。 だが、その視線は少しだけ周囲を探っている。

 どうやら俺のほうが察知能力が高いらしい。――ふっ。


 完全に気づいていないわけではない。 ただ、確信が持てないだけだ。

 黒いモヤは、まだそこにある。 薄いまま。 揺れている。 消えない。

 なら。 今は、いい。 無理にやる必要はない。 内側へ戻す。

 霊力を収める。 流れを整える。 静かに、元の状態へ戻る。

 黒いモヤは、しばらくその場に留まっていたが、やがてゆっくりと薄くなり、消えた。

 何もなかったかのように。


 両親のように感知できなかったら怖い。――なにかされるわけでわないが。

 ……だが。

 見えている。 触れられる。 それだけで、十分だ。

 積み上てく。 ()()それだけでいい。


 やることは変わらない。


 丹田に意識を落とす。霊力は静かに巡り、乱れもない。

 練りも崩れない。外へ出す感覚も、まだ不完全だが確かに残っている。


 内側は整った。

 外は、これからだ。

 無理に進める必要はない。積み上げればいい。少しずつ、確実に。

 その繰り返しで、ここまで来た。なら、この先も同じだ。

 身体を動かし、巡らせ、整え、練る。ただそれを、続けるだけ。

 気づけば、それが当たり前になっていた。


 時間の感覚は曖昧だが、日は確実に過ぎていく。

 視界は広がり、身体は育ち、霊力もまた、少しずつだが積み上がっていく。


 時計の針(世界の歩み)が止まることはない。

 何も起きない日も、無駄ではない。

 すべてが、そのまま(実力)になる。


――そして。


 気づけば、一年が過ぎていた。

最後までお読みいただきありがとうございます!


ブクマ&反応&コメント待ってます!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれるとまじで喜びます!


ゴホン、失礼。


↓↓ここをポチってくれたら幸せ(笑)↓↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ