■ 第五話 「外へ」
何度目かも分からない試行の途中だった。
丹田に集めた霊力は安定している。練りも崩れない。
全身への巡りも問題ない。内側だけで完結するなら、
もうほとんど不自由はなかった。だが外へ出そうとした瞬間、
すべてが止まる。押しても動かない。流そうとしても届かない。
出口がないまま圧だけが上がり、限界に近づけば崩れる。
その手前で止める。それを繰り返していた。
あと一歩。
それだけが、どうしても届かない。
丹田に意識を戻す。集める。練る。圧をかける。
ここまでは問題ない。次、外へ。押し出す。
――動かない。
分かっていた結果だ。だが、そこで止める気はない。
繰り返すしかない。もう一度。
集める。練る。圧をかける。外へ。
――やはり動かない。
そのときだった。ふと、意識が別の場所に逸れる。
口の中。わずかな違和感。唾液が溜まるような感覚。
無意識に喉が動く。ごくり、
と飲み込もうとして――
その瞬間。
ぴゅっ、と。
何かが外に出た。一瞬、思考が止まる。
――え?
今、何が出た?俺興奮してないよ!?
視界の端、口元から細く伸びる揺らぎ。透明に近い、
だが確かに何かがある。
⋯⋯⋯⋯よだれ、にしてはおかしい。
形がある。揺れている。
いや、これ。
さっきまで内側で扱ってたやつじゃねえか。
――は?
なんで口から出てんだよ。意味が分からない。
出そうとして出したわけじゃない。ただ飲み込もうとしただけだ。
それなのに外に出た。どういう構造だよこれ。
一瞬だけ混乱する。
だが、すぐに思考が切り替わる。
……いや、待て。
今の、ヒントじゃないか?
押しても出なかった。だが今は「流れた」。
意識していない方向に。つまり押すんじゃ足りない。
流す必要がある。
口。
そこが出口になった、と。⋯⋯口だけに。
なるほど、……うん、やっぱ⋯⋯口はやだな⋯⋯。
普通にやだな。
だが、背に腹は代えられない。
再現する。
丹田に意識を向ける。集める。練る。圧をかける。
そして喉へ。さっきの感覚をなぞる。押すんじゃない。
通す。細く、流す。
――出ない。
やっぱりそう簡単にはいかない。
だが完全な偶然でもないはずだ。
もう一度。
今度は少しだけ意識を強める。流れを作る。喉へ、一直線に。
その瞬間。
ぴゅっ、と。
また出た。
今度ははっきりと分かる。
狙って、出した。
霊力が外へ抜ける。細い。弱い。だが確実に、外へ届いている。
――出せる。
思わず意識が集中する。今の感覚を逃さないように、もう一度。
流す。
ぴゅっ。
出る。
もう一度。
ぴゅっ。
安定はしていないが、再現はできる。
これは大きい。
今までゼロだったものが、ゼロじゃなくなった。
それだけで十分だ。だが同時に、問題も見える。
外に出た霊力は、すぐに揺らぐ。空気に触れた瞬間、
形を保てない。内側とは違う。外では別の制御が必要だ。
そのまま維持しようとして、少しだけ力を込めた瞬間。
弾けた。
小さな衝撃。音はないが、確かに空気が震えた。
外に出ていた霊力が崩れ、散る。反動で内側の流れも乱れる。
丹田が揺れる。崩れかける。
即座に押さえる。
流れを整える。
数秒。
なんとか持ち直す。
……危なかった。
出せるが、保てない。扱いきれていない
未完成。だが、それでいい。進んでいる。確実に。
丹田を確認する。霊力は減っているが、問題ない範囲だ。回復もできる。無理はしていない。
視線を上げる。
何もない。静かだ。だが分かっている。
この世界で生きていくのに必要になる。札はない。印も組めない。なら、自分でやるしかない。
霊力だけで。口からでもいい。
……いや、やっぱり口はやだな。
どうにかならんのかこれ。
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