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■ 第三話 「神無月 龍凱」

あれから時が経ち、気づけば、身体は明らかに成長していた。


視界はもうぼやけていない。輪郭ははっきりとし、色も認識できる。

手足も思い通りとまではいかないが、

少なくとも意識すれば動かせる程度にはなっていた。


時間にしてどれくらいかは分からないが、感覚としては数ヶ月。

赤子としては順調、あるいは少し早いくらいの成長だろう。

だが内側は、それ以上に変わっていた。


霊力の巡りは、最初とは別物になっている。

かつては細く歪で、まともに循環すらしていなかった流れが、

今では全身を繋ぐ一本の系として機能している。

完全ではないが、少なくとも滞りは大幅に減った。


丹田に意識を向ける。


そこには、はっきりとした塊がある。

最初は集めるだけで苦労していたそれも、

今ではほぼ無意識に近い感覚で維持できるようになっていた。

軽く圧をかければ密度も上がる。練るという行為も、安定して行える。


さらに、それを巡らせる。


全身へと流すと、各所でわずかな抵抗はあるものの、

以前のように崩れることはない。流れに乗せる感覚も掴めている。

必要以上に力を使わずとも、自然に行き渡る。


その状態で維持する。


すると、やはり増える。

微量だが、確実に。

結論としては単純だ。

巡りを整え、丹田で練り、それを全身へ回す。

それだけで、ここまで変わる。


そんなある日だった。


「名前、決めないとね」


女の声が、柔らかく響く。


「もう決めてある」


男の返答は短い。


「そうなの?」


「ああ」


わずかな間のあと、はっきりと告げられる。


「龍凱だ」


「……龍凱」


女がその名をなぞる。


「ずいぶん強い字を使うのね」


「問題ない。むしろ――ちょうどいい」


そこで一拍、間が置かれる。


「この子の気は、水に偏りすぎている」


空気が少しだけ変わる。


「……やっぱり」


女の声に、納得と不安が混じる。


「巡りは整ってる。でも冷えすぎてるのよね。広がるばかりで、まとまりきらない」


水。


その単語に、すぐに思い当たるものがあった。前世の知識。

五行思想。木・火・土・金・水。性質の分類。


どうやらそれが、この世界でも基準として使われているらしい。


「だから龍か」


「水を制するには、同じ水でも格が要る」


男の声は淡々としている。


「龍は水を統べる象徴だ。暴れる水も、流れすぎる水も、まとめて引き上げる」


なるほど、理屈は分かる。


水に偏っている霊力を、龍という「上位の象徴」で制御する。

名前自体に方向性を持たせているわけだ。


「でも凱は?」


「……あれは賭けだ」


少しだけ、間があった。


「凱は陽だ。進む力だ。水に足りない『前へ出る性質』を補う」


「抑えるだけじゃなくて、押し上げる……?」


「ああ。止めるだけでは弱くなる。流れを変える必要がある」


女は少し黙る。


「……強すぎない?」


「強いくらいでいい」


即答だった。


「このままなら、いずれ止まる」


その言葉に、わずかな重みがあった。


つまり現状のままでは限界があるということだろう。

いくら巡りを整えても、水に偏りすぎている以上、どこかで頭打ちになる。

だから名前で矯正する。


性質ごと。


そこまで考えて、理解する。

この世界(陰陽師界)における名前は、ただの識別じゃない、

のだと解釈する。方向性の指定だ。霊力の性質に対して、

どう干渉するか。その設計図の一部。


――なるほどな。


内心で納得する。


そして同時に思う。

都合がいい。水に偏っていると言われたが、体感としても似た感覚はある、

流れやすいが、まとまりきらない。広がるが、押しが弱い。


だがそれは裏を返せば、調整しやすいということでもある。

すでにやっていることと、方向は一致している。


集めて、練る。散らばるものをまとめる。

足りない部分を補う。名前に頼る必要はない。だが、邪魔にもならない。


「……でも」


女の声が少しだけ落ちる。


「この子で、大丈夫なの?」


空気が変わる。


「……どういう意味だ」


「今はいいけど、この先……」


言葉は最後まで続かなかった。


だが十分だった。


期待と不安。その両方がある。


そしてもう一つ。


この家が、余裕のある状態ではないということ。


だが問題ない。


むしろ好都合だ。


過剰(うるさく)管理される(口出しされる)より、放置(自由)近い方がやりやすい(やりたい)


丹田に意識を向ける。


霊力は安定している。塊は崩れない。巡りも滑らかだ。

水に偏っていると言われたが、それならそれでいい。

流れるなら、流しきる。まとめるなら、徹底的にまとめる。

足りないなら、作る。やることは変わらない。


「神無月 龍凱」


その名前に込められた意図は理解した。


なら、それも利用する。


――積み上げるだけだ。

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