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■ 第一話 「転生したら陰陽師(?)の家系だった件」

(▭-▭)φカタカタ:ぽちっとな

意識がゆっくりと浮かび上がる。底の見えない水の中から

引き上げられるような感覚と、頭の奥に残る鈍い重さ。

それでも思考は妙にクリアで、途切れることなく繋がっていた。

昨日のことも、その前のことも問題なく思い出せる。


ブラック企業での労働、帰宅後に無理やり向かったパソコン、

そして書き上げた小説。長く止まっていた作品をようやく投稿して、

達成感と疲労が混ざったまま椅子にもたれた。そこから先は曖昧だが、

どうせまた寝落ちだ。風呂にも入らず、まともな食事も取らず、

限界まで起きていたツケを払っただけの話だ。


 ――で、なんでこうなってる。


違和感はすぐに浮かんだ。記憶と現状が噛み合っていない。

身体が動かない。いや、正確には動かし方が分からない。

腕や脚の存在は感じるのに、どこに力を込めればいいのかが曖昧で、

意識と反応が一致しない。


目を開けても視界はぼやけ、光と影の境界が分かる程度で形を認識できない。

声を出そうとしても喉の使い方が分からず、空気が漏れるだけだった。

ここまで揃えば察しはつく。現実味はないが、説明としてはこれしかない。

死んで、別の身体に生まれ直している。いわゆる転生だ。

ラノベで散々読んだり書いたりしてたが皮肉なものだな。


「……起きたのね」


「……ああ」


すぐ近くで交わされた声が、はっきりと耳に届く。

女の声は落ち着いているが、どこか張り詰めた響きを含み、

男の声は短く低い。


「この子……少し、弱い気がするわ」


 遠慮はあるが隠さない言い方だった。短い沈黙の後、男が答える。


「……神無月の子だ。問題はない」


「でも……霊力の巡りが、あまりにも静かで……」


「――やめろ」


それ以上を遮るように言葉が強くなる。

空気がわずかに張り詰めた。神無月という言葉と、

霊力の巡りという概念だけが強く意識に残る。

意味は分からないが、自分に関係していることだけは理解できた。


考えを巡らせようとした瞬間、意識が自然と内側へ引き込まれる。

身体の中に、確かに何かが流れているのが分かる。

前世では感じたことのない感覚だ。血とは違う、もっと曖昧で、

それでも確かに存在する流れ。それは細く、弱く、そして歪だった。

ある場所では滞り、ある場所では薄く伸び、全体として繋がってはいるが、

循環としては成立しきっていない。


これが霊力の巡りか、と理解した瞬間に納得がいった。

弱いと言われた理由も、この状態なら説明がつく。

流れているのに活かせていない。繋がっているのに届いていない。

構造として無駄が多すぎる。


なら答えは単純だ。整えればいい。思考と同時に意識が流れへと向かう。

どう扱うかの知識はないが、感覚はある。筋肉に力を入れるときのように、

呼吸を整えるときのように、内側の流れに意識を重ねる。


最初は何も変わらない。ただ感じているだけだったが、

ほんの僅かに滞っていた一点に変化が生まれる。詰まりがわずかに緩む。

偶然かもしれないが、手応えはあった。もう一度同じように意識を向けると、

今度はさきほどよりもはっきりと、細い流れがわずかに太くなる。

止まりかけていた部分がゆっくりと動き出す。


全身に巡らせるべきだと直感したが、試みはすぐに壁にぶつかる。

一箇所に集中すれば別の場所が乱れ、強引に動かせば余計に詰まる。

均一にしようとしても通り道そのものが歪んでいる。


それでも止める理由はなかった。弱いと判断された以上、このままでは

終わるだけだ。知識がなくても感覚があるなら、それを積み重ねればいい。

流れを感じ、滞りに意識を向け、少しずつ動かす。それを繰り返すうちに、

途切れていた感覚がわずかに繋がり始め、ほんの僅かだが制御できる範囲も広がっていく。


その過程で気づく。動かすたびに霊力が減っている。

循環しているわけではなく、むしろ漏れている。使えば使うほど薄くなり、

このままではいずれ尽きる。それなら無駄を減らすしかない。

流れを強くする前に、漏れを抑え、詰まりを通し、揺らぎを減らす。

整えることで消費を抑える。その考えに至った瞬間、流れがほんの僅かに安定した。

微細な変化だが、確かな違いだった。


ここまで来て、ようやく理解する。

これは単に流すだけでは足りない。もっと密度を上げる必要がある。

散っている霊力を一つにまとめ、内側で練り上げるように圧をかける。

うまくいく保証はないが、やる価値はある。


試しに、意識を一点へ集める。流れていた霊力を寄せ、

逃がさないように留める。すると今までとは違う反応が返ってくる。

流れではなく、塊に近い感覚。まだ弱く不安定だが、確かに存在している。

それを崩さずに保つだけで精一杯だが、それでも分かる。これは使える。

巡らせるだけじゃない。練ることで質を変えられる。


 ――面白くなってきた。


内心でそう呟く。弱いという評価は間違っていない。

だが、それはあくまで現状の話だ。このやり方が通るなら、

いくらでも変えられる。巡らせ、整え、そして練る。

やることは見えた。次は、これを崩さずに全身へ広げる。


そう考えた瞬間、難易度が一段階上がったのが分かった。

さきほどまでは一点に集め、留めるだけでよかった。

だが今度は、それを維持したまま動かす必要がある。

少しでも意識が散れば、せっかくまとめた霊力はすぐにほどけて流れへと戻ってしまう。


試しに、塊をゆっくりと動かしてみる。だが数瞬も持たずに崩れた。

流れに引きずられ、元の散った状態へ戻っていく。やはり簡単ではない。

だが逆に言えば、崩れる原因ははっきりしている。流れに負けているだけだ。


 なら、流れごと制御する。


塊だけを動かすのではなく、周囲の流れを合わせる。

さきほど整えた巡りを土台に、霊力の通り道そのものを少しずつ安定させる。

その上で、中心にまとめた塊を動かす。やることが増えた分、

意識の負担は大きい。ほんの少しでも気を抜けば、すぐに全部が崩れる。


 だが、やれないことではない。


 何度も崩し、何度もやり直す。その繰り返しの中で、

少しずつだが感覚が掴めてくる。流れに逆らうのではなく、

流れに乗せる。無理に押し通すのではなく、通りやすい形を作る。

整えるという行為が、ここでようやく意味を持ち始めた。


 霊力の塊が、わずかに動く。


ほんの一瞬、ほんの数センチ分の感覚だが、確かに移動した。

すぐに崩れたが、それでも十分だった。できると分かった以上、

あとは繰り返すだけだ。


同じことを何度も試す。集めて、留めて、流れを整え、動かす。

崩れて、やり直す。感覚が鈍くなれば少し休み、また繰り返す。

時間の感覚は曖昧だが、かなりの回数を重ねたはずだ。


 やがて変化が現れる。


 霊力の塊が、崩れにくくなっていた。


完全ではないが、さきほどよりも長く形を保てる。

動かしてもすぐには散らない。ほんの僅かだが、確実に進歩している。


 その状態で、再び動かす。


今度は、さきほどよりも滑らかに動いた。流れに引きずられる感覚が弱い。

整えた巡りが、塊の移動を支えている。


 そのまま、さらに動かす。


腕の先、脚の方へと意識を向ける。今までは曖昧だった身体の輪郭が、

ほんの少しだけはっきりしてくる。霊力が届いた部分が、わずかに認識しやすくなっている。


 ――なるほどな。


内心で納得する。霊力を巡らせることで、身体の感覚そのものも強くなる。

単に力として使うだけじゃない。基礎そのものを底上げしている。


だが同時に限界も見えた。塊を維持したまま動かせる範囲は、まだ狭い。

少し距離を伸ばせばすぐに崩れる。無理に広げれば、せっかく整えた巡りまで乱れてしまう。


 焦る必要はない。


 むしろ、この状態を安定させる方が先だ。


塊を維持し、短い距離を確実に動かす。それを何度も繰り返すことで、

少しずつ範囲を広げていく。地味だが、確実なやり方だ。


 ふと、その時だった。


「……さっきより、少し……?」


 女の声が、わずかに揺れる。


「気のせいだ」


 男は即座に否定したが、その声にもわずかな違和感が混じっていた。


「でも、巡りが……」


「……まだ誤差だ」


 短く切り捨てるような言い方だったが、完全に否定しきれていないのは明らかだった。


 どうやら外にも変化は出ているらしい。


とはいえ劇的なものではない。今の自分がやっていることは、

あくまで基礎の修正だ。目に見えて変わるほどではないだろう。


 だが、それでいい。


 むしろそれが都合がいい。


弱いと思われている今のうちに、できるだけ進めておく。

余計な干渉を受ける前に、土台を固める。


 そのためにも、やることは一つだ。


 繰り返す。


 巡らせ、整え、練る。


 その精度を上げていく。


霊力の塊を再び集め、ゆっくりと動かす。

さきほどよりも、わずかに安定している。

ほんの小さな差だが、それが積み重なれば大きく変わる。

この身体は弱い。


だが、それは完成形じゃない。


変えられる余地があるということだ。

なら、いくらでもやりようはある。


 ――ここからだ。

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