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元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら

作者: ちの


こんにちは。


最近全然会ってないので、お手紙を書こうかなと思いまして。


そうね。


では、まずは私の近況報告からしようかな。


最近、私はね、インテリアにハマっているの。


ええ、相変わらず特に戸棚や椅子にこだわっているわ。


やっぱりいい素材の木でできたもの一択ね。


以前私が取り寄せたものは全部あなたに持って行かれてしまったけど、あの時以上に統一感が出ているお部屋に今はなっているわ。


ぜひ、罪を償って牢獄を出たら、遊びに来て欲しいくらいね。


ただ、一切のものは渡しませんのでそこはご了承を。



その素晴らしいお部屋で過ごすのも素敵な時間だけど、最近は外で色々とするのにもハマっているわ。


最近は隣国から取り寄せた双眼鏡を使って、バードウォッチングをしているのよ。


うちの宮殿の近辺だけでもちゃんと見ると、たくさんの種類の鳥がいるのね。


牢獄の小さな窓だと、さすがに鳥の観察は困難でしょうから、牢獄を出てからぜひやってみるのをおすすめするわ。


他にもまだあるのよ。


最近は、農業もしているの。


ナスやトマト、キュウリ、それに今開発中の新しい品種のウリを育てているわ。


一つ新しいウリが実ったので食べてみたら、甘くてフルーツのような味で、本当に美味しかった。


今、市場に売り出す準備を始めているところよ。


いつかは、牢獄の食事にも小さなデザートとして提供されるんじゃないかしら。


あと、農業をやっていていいなと思ったのは、適度に日光に当たるのは健康ってことね。


当たりすぎは良くないけど、当たらなさすぎると健康に良くないみたいだから、小さな窓からでも日光に当たるように努めることをおすすめしとくね。


私の近況報告は一旦休憩にして、あなたたちが犯した罪がどれだけ暴かれているのかに関して報告するわね。


まず、あなたたちがやった、遺跡からの宝石の窃盗だけど、あなたたちがこっそり盗んだ宝石を隠している場所まで突き止められたわ。


まさか、あなたが買い取った牧場の、干し草を保管する倉庫に隠してあったなんて。


干し草の下から宝石が出てきた時はみんな驚いたそうよ。


まあとにかく、これで牢獄から出れた時に、こっそり宝石を回収するなんてことはできなくなったから、そこのところはよろしくね。



あと、共犯者も全員捕まっているわ。


私に政略結婚を迫ってきたのに、その後あなたと浮気したリオン、リオンが密かに雇っていた、手下たちは全員牢獄にいるわよ。


まあもっとも、牢獄の中だといくら近い場所にいても直接は会えないでしょうけどね。


え、あなたが雇った手下もいる?


もちろんそれも把握済み。


ただし、隣国まで逃げてそこで捕まったみたいだから、隣国の牢獄にいると聞いているわ。



まあとにかく、そんな感じで、もうこれ以上悪いことをできないようになっているから、そこは覚悟しなさい。



話を私の近況報告に戻そうかしら。


最近、お菓子づくりにハマってるの。


ちなみに、きちんと小麦粉や卵を混ぜるところからやってるのよ。


自分で作ったものを味わうっていうのは本当に素晴らしいってわかったわ。



私が大切に後で食べようと置いていたものを、あなたはいつも勝手に食べていたけど…


今はそういうことする人もいないから、少しずつおやつにしたりしているかな。



さてさて、そういえば今の私の仕事の話をしてなかったわね。


さっき話に出てきた農業は、あくまで趣味よ。


本業は契約書の翻訳のお仕事。


語学を勉強しておいて本当によかった。


やっと役立っているわ。


前にやっていたドレス職人の仕事はあなたにポストを奪われて以来やってないけど、今の翻訳の仕事が楽しいから、未練は全くないかな。



翻訳は翻訳で楽しいのよ。


例えばね、新しい言葉に出会うと、その国の文化や特徴を感じれたりするし。


それに、同じ翻訳家のレイと出会って、婚約することになったしね。


えっ。私が婚約できたのが驚きだって?


まあそりゃああなたにはそう思われるでしょうね。


リオンとあなたが婚約することになった時、私ごときに素敵な男性が惚れるわけがないと言っていましたもんね。


けど、私はあの時よりも素敵になれたと思うわ。


悪事がまとわりついているあなた視点だと変化はわからないかもしれないけど、仕草や歩き方も、友人に教えてもらって優雅になるようにしているのよ。


もちろん外面だけではなく、読書や農業で、色々な勉強もしているわ。


自己肯定感が高くなって、とても気分がいい毎日よ。


あなたも牢獄から出たら、地道に自分磨きをしたらどうかしら?


そうすれば、少しは心が綺麗になるのかなと思うけれど。


まあ、あなたはかなり大変な位置からのスタートですけど、それは自分のせいなのだから。


しっかりそれを自覚するのね。


これからの人生どうするにしても、自覚は必要よ。


リオンにも同じことを伝えておいてよ。あ、今は牢獄だから会えないか。


私からリオンにも手紙を出そうかしらね。


ま、気が向いたら出すことにするわ。


じゃあ最後に、私の婚約者のレイを紹介するわ。


レイは基本的には冷静なんだけど、たまに無邪気なところがあって、その時は可愛い。


それに優しくて、あと頭がいい。


そんなレイは、好奇心があって、私のお菓子作りや農業といった趣味を、一緒にやってくれる。


でも料理に関してはおっちょこちょいで、そこも可愛い。





「うん、可愛いんだよなあ…」


手紙を書き始めてから、初めて私はつぶやいた。


「ん? 可愛い?」


「れ、レイ? な、なんで?」


「ごめん。ほら、一緒に育てている畑の水やりの時間だからさ、呼びに来たんだ」


「あ、ほんとだ。水やりの時間ね!」


私は手紙をあわてて伏せて、立ち上がった。


「何か書いてるところだったの?」


「まあね、私の性格の悪い所を詰め込んだ文書」


「そんなのあるんだ。だから君自身は素敵なんだね」


「そういうこと」


「僕も何か書き留めてみようかな」


「あんまりお勧めはしないわ」


「そうなの?」


「うん」


私ももう、手紙の続きは書かないかな。


それに、この手紙を妹に実際に送ることもないような気がする。


私は手紙を封筒に入れて、引き出しにしまった。


あっ。ただ封筒に入れるだけじゃダメね。


私は封筒を取り出して、封筒に糊で封をした。


これで完璧に封印って感じかしらね。


「お待たせ。水やりに行きましょう」


私はレイに笑顔でそう言った。


お読みいただきありがとうございます。

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