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73.やっぱり何かがおかしい

お読み頂きありがとうございます。


 私はリオンに触れられるその手に、その声に背筋が震えて幸福感で満たされる。

 早く、早くと淫らな気持ちは大きくなり意識はぼんやりしてリオンの顔が歪んだ。どんどん流れてくる魔力に酔うように私は彼を求めた。

 口付けの合間に、私に触れる度に感じるリオンの吐息は私を益々おかしくさせて、思考が鈍る、気分が高揚する。


 もう、我慢できない。

 と彼の頬に触れたら、リオンが何故か手を止めて私の身体に衣類を優しくかけた。


 「……リオン?」

 「すみません、ジェシカ様……やっぱり無理です」

 「え?」

 「自分の命のために、貴方に魔力を流して精を吐き出す。そんな勝手な事、私はやっぱり……できません。魔力を流す度に貴方に負担をかけているのではないかと思うのです」

 「リオン……私はそんな事気にしていないわ。だって、そうしないと命が削られていくでしょう?」


 リオンは脱いでいたシャツを着ながら言った。


 「初めはそうだと私も考えてました。ですが、何となくですが何か見落としているような気がするのです」

 

 リオンは部屋を歩き出して私のカーディガンを拾う。


 「思えば、なぜこんな大事な事を私やアンナに父は死ぬまでに言わなかったのか。父が死んだ時、私は14歳でした。成人前なのに、魔力を簡単に流すなという話だけで詳しくは聞かされていない……」

 

 リオンが私が脱いだ服を丁寧に着せてくれる。

 私は衣服を整える。さっきまで自分達がしていた事など綺麗さっぱりなかったかのようだ。

 

 「それに資料……あたかも命を引き延ばす手段がアムルとの交わりだけのように私は考えてしまった」

 「そうじゃないの?」

 「手記の一部に、アムルと出会えなくて日に日に体調が悪くなる、そのような記載を読みました。それに叔母様もアムルと出会えず早くに亡くなったことから、そうだと信じ込んでしまった」


 リオンは歩いていた足を止めた。


 「でも、冷静に考えてみたら可笑しいと思うのです。魔力の解放が交わりだけであれば、その……生きるために行為をずっとする必要がある」

 「確かに……」

 「魔力は再生され続けます。もっと他に方法が残っていないのも不思議です」

 「魔力の解放は他にもあるということね?例えば、魔石に溜めたり、治癒魔法を使ったり」

 「ええ、そうですね。何か大事な情報が隠されている気がするのです」


 しばらく考え込んでからリアンは言った。


 「もう一度、洗いざらい資料を確認します。そして、アンナにイリス王妃を、オーラントに王立図書館を調べるように伝えましょう」


 そして私の元は来て優しく抱きしめてくれた。


 「ジェシカ様のお気持ちは凄く嬉しかったです。ただ、あなたとは……その、純粋に愛し合いたいのです」


 リオンの私への真剣さが伝わってきて胸が苦しくなった。ぎゅっと背中に手を回す。

 恥ずかしい。

 ただ、ただそれだけだった。助けたい一心で行動したが、今思えば自分のした行動の大胆さに羞恥心が湧いてきた。


 「ごめんなさい、私が焦ってしまって……」


 リオンは静かに首を振る。


 「誰だって焦るでしょう。わたしが情報の扱いを間違えただけですから」

 

 




 それからは、リオンは研究室で資料を調べる日々、私はアナベラと変わりない、でも慌ただしい日々を過ごす。子供なんて育てた事ないし、ましてや身の回りの事も今まで自分でした事もなかった私は、魔法も使えないため自己流でやるしかなかった。

 ただ、アナベラは賢いのか手のかからない子だった。

 屋敷にあった育児書や医療書を参考に、私は育児に精を出した。昔から真面目さと忍耐強さは取り柄だったからか、アナベラと過ごす時間にも慣れていった。


 1週間ほど経った頃だろうか。

 アンナがアナベラと交わり情報を持ってきた。


 「イリス王妃はミーシャ様に禁術の魔法を教えた本人ね。ミーシャ様がイリス王妃に呪いについて聞いていたのよ」

 「呪いって私のことかしら」

 「はい。まだ諦めてないみたいです。それで……これはとても酷な話になるのですが、ジェシカ様本人の事なので話してもいいですか?」


 アンナが私を気遣うように見てきて言った。


 「ええ、大丈夫よ。知らないといけないことなのよね?」

 「知っていたら対策もできると思うのです。ミーシャ様はイリス王妃に、3つ目の呪いをかければ死を招くのは事実か、と聞いていたのです」

 「3つの呪いだって?」


 リオンが訝しげに聞いた。


 「うん。イリス王妃は言ったわ。呪いをあと一回かければ確実に死ぬだろうって」

 「あと一回?」


 私はミーシャ様の呪いで子を亡くしたのは事実だが、2回目の呪いはいつ受けたのだろう。身に覚えがなくて記憶を辿った。


 ミーシャ様の最後の顔を思い出す。屋敷から逃げた時に感じた胸の痛み。


 「エイドリアン様から逃げた時だわ。胸の痛みがあってバランスを崩したの、あの時」

 「心当たりがあるのですか……」


 2人がとても暗い顔をするものだから、私は逆に明るい声を出す。


 「そ、そんな深刻な顔をしないで。呪いをあと1回受けないように気をつければいいのだから。護守を持っていればいいんじゃないかしら?」

 

 怖くないと言ったら嘘だ。

 けれど、アンナが言ったように知っていたら対策ができる。

 自分の事なのに、死ぬかもしれないのに。でも私はなぜかそうはならない気がしているのだ。


 「大丈夫。私ってほら、鈍感だっていうじゃない?2回目の呪いだって気付かなかったほどだし……きっと3回目の呪いも体は気付かずにいるわ」

 「ジェシカ様……」


 心配な表情から呆れ顔に変わるリオン。


 「ですが、強力な護守を持って頂きますよ」

 「それは勿論。お願いしますわ」

 「ジェシカ様……なんだか逞しくなられましたね」

 

 昔だったら怯えて悲観して死にたくないと涙を流していたかもしれない。

 でも今は1人じゃない。大切な人がいるから、しっかりしないとと思える。悲観してなんかいられない。


 リオンは護守を作りに部屋から出ていった。

 アンナは私を心配するように私の首に巻きついてきた。


 「はぁ……なんだか不思議なんですけど、ジェシカ様に触れていると少しだけ身体が軽くなるんですよね。

 「それはベラのってこと?」

 「はい。あと私自身の意識もしっかりするというか」

 「不思議ね」

 「精神的な安定でしょうかね……ジェシカ様。呪いの事は、本当に気をつけて下さいね。あの人、本気ですよ」

 「うん、分かっている」

 「ジェシカ様がいなくなれば、お兄様、きっと暴れますからね!」

 

 アンナの冗談とも言えない発言に顔を顔張らせた。

 本当に、気をつけないといけない。


 リオンが忙しくしている中、私は屋敷の図書室で暇を潰した。

 色んな種類の本が揃っており勉強になる。

 そんな中、『呪い』というワードに引き込まれて取ってしまった童話の本。やっぱり、死が関係しているから全く気にしてないとは言えない。

 私は引き込まれるようにそれを読んだのだった。


 

 

 

久々の更新となりました。

終盤に入り、設定と書かなければならないことがまとまらず、しばし頭をリフレッシュしておりました。

こうして、読んでくださっている読者様に感謝します。ありがとうございます。

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