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70.漂い見たもの


 「お兄様。心配かけてごめんなさい」


 アナベラから声がして安心した。

 ジェシカ様に抱き上げられて子供らしい笑顔で笑う。でもどこか寂しげだ。


 「意識を閉ざしている間、いろんな事が分かったわ。その事についても話したいの」

 「ちょうど良かった。俺も少し分かった事があるから」


 俺たちは部屋に戻る。

 ティーポットが茶を入れる様子を見ながら、アンナが話し出した。


 「意識を手放していたのは、教会へ行く時に、アナベラの意識が薄れているのを感じたの。直感でこのままでは、アナベラは永遠に眠ってしまって私がこの子の身体を乗っ取ってしまう、そう感じた」


 ジェシカ様がアンナをぎゅっと抱きしめる。


 「ジェシカ様がユナリアをこの子に触れさせてくれて、身体が回復したのか私も意識を移すことができたの。ジェシカ様、ありがとうございます」

 「私は、箒に言われるがまま……」

 

 そう、箒となぜ親しくなっているのか、むしろ疎通が図れている事にも突っ込みたかった。

 ただアンナの事情もあるからと、俺はアンナに続きを促した。


 「アナベラの身体を乗っ取るなんて……そんな事は望んでない。だから、一度この子の身体から出た。そしたら、不思議な事に意識は色んな所へ飛んでいったわ。その時に見た事を話すわ」



ーーーー



 私は上から皆んなを見下ろしていたの。

 あの日、ジェシカ様とお兄様が無事に教会へ逃げてから、今の状態だったら何か知れる事があると思ってそのまま王宮に行ったわ。

 

 導かれるままに私は王妃様の部屋に来ていた。

 彼女はウォルス伯爵と面会中だった。


 『ユジン、私の言う通りによくやったわ』

 『ええ、イリス様。あの子は貴方様の言う通りに禁術の魔法を使ってユナリアの力を奪い、治癒魔法を得ました』

 『エイドリアンを手に入れたいがために……ほんと愚かな子。そしてその力を得て欲が出たのね、ジェシカにまで手を出して……その結果、エイドリアンから疎まれてしまったけれど自業自得ね』

 『あの子は、今どこに?』

 『エイドリアンの心を取り戻そうと躍起になっているわ。ほんと見ていて可笑しいったら……エイドリアンは昔からジェシカに執着しているのに、あれは異常ね。でも、そのおかげで面白い余興を見れているから私は退屈してないのよ』

 『イリス様に喜ばれて何よりです』

 『本当にあなたは良くやっているわ。これからも、もっと私を楽しませて頂戴』

 『勿論でございます。貴方様のためならなんでも致します』

 『ふふふ、こっちへいらっしゃい』


 ウォルス伯爵はイリスの元へ行くと跪き彼女の膝に頭を置いたの。その髪を撫でるイリス様、それはまるで飼い犬を可愛がる、そんな様子だったわ。


 『愛されたいがために、皆んな必死で可笑しいったら……ただジェシカは予想外だったわ。それに、あのフロント子爵……私の余興にいい味を出してくれそうだから見守ろうかしらね』

 『情報によれば、教会で殿下と争った後におそらくリーグ領へと転移したと』

 『そう。まさかその2人がね……ジェシカは残念だけれど……素直で純粋で嫌いではなかったの。エイドリアンはそんな彼女の優しさだけが生きがいだったのに、馬鹿な子。本当に頭の弱い子よ……ジェシカに執着させたくて他の子に手を出すなんて』

 『でも、そうさせたのはイリス様でしょう?』

 『そう。皆本当に愚かよ。結果、面白くなっているからいいのだけれどね』

 『ミーシャの腹の子はどうするおつもりで?』

 『そのままでいいでしょう。楽しみは取っておかないと』

 『本当に愚かな事です。母親そっくりです』

 『あぁ、そいつの話はしないで。虫唾が走る』


 イリス様は扇子を手に打ちつけて閉じた。


 『イリス様、申し訳ありません』

 『あぁ、いいのよユジン。貴方が悪いわけではないわ……全てはあの女と国王なのだから』

 『全くイリス様を裏切るなんてあり得ない事です……イリス様……私には貴方様しかいません……心からお慕いしております』

 

 そう言って2人は床を共にしたわ。

 え?そこは勿論見てないわよ、当たり前じゃない。

 ……それから、エイドリアン殿下がミーシャ様と言い争っているのを見たわ。


 『どうしてあんな噂を流したんだ!?』

 『あら、事実じゃない。男と逃げて王太子妃を投げ出した女。そうでしょう?』

 『そんな噂が流れればジェシカは戻って来づらくなるじゃないか』

 『戻すつもり?嘘でしょう!?あの女は逃げたの、全てを放り出して!そんな人を受け入れると思う?民衆も貴族達も!』

 『事実なんていくらでも変えられる』

 『そうだとしても、今は私が貴方の子を身籠っているの。ちゃんと私を見てよ、あなたはただあの女に情を持っているだけ』

 『ジェシカは特別なんだ。君は、ジェシカがいて意味があるのさ』

 『酷い……』

 『そもそも、その腹の子も僕の子がどうかも』


 あれは痛かったでしょうね。ミーシャ様の渾身の平手打ちが決まったわ。エイドリアン殿下もなかなかの鬼畜よ。ミーシャ様を擁護するつもりはないけどね。

 

 それからミーシャ様は部屋に戻って、禁術の魔法で呪いを調べ始めたわ。エイドリアン殿下は部下にここの屋敷の結界を壊せと命令していた。


 子爵邸もここの屋敷も人が張っているし、魔術師達が結界を壊そうとしているわ。外は危険よ、絶対出ないほうがいい。

 後は……また少し意識を手放していい?あまり長くいてこの子の意識をなくしたくないの。大丈夫よ、また戻ってくるわ。

 色々まだ調べられることもあるはずだし……ジェシカ様、お兄様、ベラをよろしくお願いします。



ーーーー



 そう言って再びアンナの声はなくなり、すやすや眠るアナベラがいた。


 「まさか……イリス王妃が手を引いていた?」


 私は愕然とした。厳しい人だったが、私を貶したり蔑んだりは決してなく、王妃様として尊敬していた。それが、なぜイリス様が……。


 「ミーシャ様の母親と国王陛下とイリス王妃殿下の間で何かがあったと考えるのが早いでしょう」

 「でも、ミーシャ様のお母様はイリス王妃の侍女を亡くなるまでやっていたわ」

 「そうですね。ただ、なぜ幼いミーシャ様がいながら宮廷で働いていたのか。ウォルス伯爵は領地にいたはずですし」

 「ウォルス伯爵……イリス王妃様と恋仲なのかしら」

 「恋仲というよりウォルス伯爵がイリス様を一方的に慕って……そこには崇拝しているような感じがします」

 「……なんだか知ってはいけない事を聞いた気がするわ。嫌な予感しかないもの」

 「ええ、そうですね。そこに私達は巻き込まれたと言ってもいいのではないでしょうか」


 イリス王妃の目的は何か。

 なぜ、ミーシャ様を唆したのか。


 「アンナがまた情報を持ってくるまでは推測でしかありません。ひとまず、我々の事を考えましょう」


 リオンが空を見上げる。まるで、結界を確認しているかのようだった。

 私はそっと彼の腕に触れた。

 そしたら、リオンはビクッと腕を引いて私から離れる。


 「ご、こめんなさい。腕を怪我してきたわね。そうだわ、ソルダム首長から処置をお願いされてたのだわ!もう2日もしていない。リオン、今してもいい?」

 「は……今ですか?」

 「そう、先にお風呂に入るかしら?」

 「あ、いや、風呂は昨日入った……いや、違う。今日も勿論入りますが、今日は処置はいいです」

 「え?でも……」


 私はリオンに詰める。だが、リオンが一歩下がるので、イタチごっこのように私達は壁側まで来ていた。


 「処置はっ、自分でしますから大丈夫です!」

 「だめよ、私が頼まれたの!」

 「無理です、今の俺にはあなたに触れられるのは……」

 「……嫌なの?」

 「ちっ、違う!むしろ触れたぃ……あぁ、もう!ちょっと事情が変わったのです」

 「何の事情?何か調べて分かったのね?私に流す魔力と関係があるのかしら?」

 

 リオンが焦って私から逃げる。

 なぜ、逃げるの?子爵邸ではあんなに迫ってきていたのに。


 私は教えてくれない事に苛々して、そしてリオンに触れたくて彼の襟首を掴んで口付けた。

 驚きで逃げようとするリオンを壁に追い詰めて、深く重ねた唇にリオンが反応する。


 このまま、もう……


 ふわふわし始めてそんな事を考えていたら、ガバッと引き剥がされた。


 「もうっ、勘弁してください……」


 そう言ってリオンは逃げるように部屋を出て行った。残された私はその余韻を持て余して盛大に溜息を吐いたのだった。



お互いいい大人だから、早くやっちゃ×××。


イリス王妃と国王とミーシャ母とユジンの関係は……自分で考えててややこしくなってて、書く手が滞る。早くイチャイチャ書きたいのです、ともどかしい作者でした。


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