7.兄と妹
お付き合い下さりありがとうございます^ ^
アンナが顔を青ざめ縮こまる。
「ジェシカ殿下、先日に引き続き大変申し訳ありません。何やら妹がまたも、変な物を持ち込んだと小耳に挟んだもので。入室してもよろしいでしょうか?」
「え、えぇ……大丈夫よ」
ちらりとアンナを見る。さっと、紅茶を隠すが遅かった。
「アンナ、それは没収したはずだ。よこしなさい、そんな怪しい物を妃殿下に渡すんじゃない」
「べ、別に怪しくなんか……」
「じゃあなぜ隠した」
「お、お兄様こそ、どうしてここに来たのよ。この前からしつこいわよ、ストーカーよ」
「アマンダ殿に妹の動向を見張るように協力してもらったんだ。この前も、変なガラス玉を持参したらしいな」
アマンダを見るアンナの目が恨めしく変わる。
「お前は本当に懲りないな」
ほら、とフロント子爵が手を出すが、アンナは渋る。
「だって、ジェシカ様に少しでもお役に立てたらと思って」
「役に立とうとする方向性がズレてる」
「どうしてよ。夫婦の仲を深めるのはベッドの中よ。それに早くジェシカ様の可愛いお子も見たいもの。生まれたら、赤ちゃんを一生懸命私がお世話するの」
なんだかプライベートな話をされて恥ずかしくなったが、それ以上にアンナが子を楽しみにしている、その気持ちがとても嬉しくなった。
フロント子爵が手を握りしめて鬼の形相をしている。だが、目を閉じて一呼吸置いてから話し出した。
「それは、誰もが待ち望んでいることだろう。しかし、相手は王太子殿下と妃殿下だ。安全性を確認し、合法な物を使用しなければならない……ちゃんと王宮医師管轄下の安全な物があるんだ。必要があるならば、そちらに相談するべきだ」
言っている事はごもっともである。けれど、王宮管轄の物だったら、私が欲した事が一定の者に知られるだろう。勿論、プライバシーは守られるだろうが、誰かに知られる事が恥ずかしかった。
それに、アンナのしゅんとした姿を見たら、ほっとけなくて。
「あの、フロント子爵?それでもアンナが一生懸命作ってきた物だし」
「ジェシカ殿下も気軽に受け取らないで下さい。何かあってからでは遅いのです」
「心配しすぎじゃないかしら」
「優しいだけでは身を滅ぼします」
使う使わないにしろ、アンナのおかげで楽しくなっていた私は、むっとした気持ちを隠すように微笑んだ。
「それじゃあ、私が事前に試してみたらいいんじゃないかしら」
そんな大胆な発言に自分でも驚く。
「駄目です」
「なぜ?」
「なぜって……あなたが高貴な方だからです」
「それは自己責任よ」
「駄目なものは駄目です、絶対」
そう言ってフロント子爵は魔法でアンナの手から紅茶を没収した。フロント子爵の手に収まる。
「あ、ずるい、お兄様!そうやって、なんでも魔法で無理やり解決しようとして。自分の優秀さを自慢しているんでしょう?あぁ、いやだ天才って」
「お前が頑固だからだ」
「お兄様の方が融通きかんぽんちんよ」
「そんな下品な言葉を使うんじゃない」
兄妹喧嘩が始まる。私から言わせたら、どちらも天才肌で頑固者で似た者同士なのに。
「ふんっ。お兄様は気に食わないんだわ。自分が飲まされて」
「アンナ!!」
ぺちっとアンナの口に、布巾がかぶさる。そのままアンナの腕を掴み押さえ込みながら扉へ向かうフロント子爵は鬼の形相で言った。
「お見苦しい所を申し訳ありません。妹は少し頭を冷やしに行かせます。どうか、お許しを」
許可を出す前に扉から出ていった2人をアマンダと見送った後、顔を見合わせた。
「実証は、やっぱり……」
「子爵も悲惨な事ですね」
頭からフロント子爵のピンクな妄想を取り払うために、私は顔を軽く振ったのだった。
フロント妹兄の絡みが好きです。笑