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6.アンナは進む

読んで下さりありがとうございます!


 

 エイドリアンが留守の間、私は変わらない日々を過ごしていた。ただ、会えない寂しさはどうしようもなくて、ついアンナに先日の夜のことをこぼしてしまったのだ。

 普通の夫婦や恋人はどれほど求め合うのか、と。


 『その人達の性格や相性、状況でだいぶ変わりそうですよね。そうですねぇ、エイドリアン殿下は熱い男って感じじゃないですもんね』


 『やっぱり、そうよね。エイドリアン様は淡白な方だと思うの』


 『淡白ですかぁ……。まぁ、エイドリアン殿下が熱く求めてきた時には鼻血ものですよね』


 そんな会話中、つい妄想がよぎり本当に鼻が熱くなった気がして鼻を抑えると、アンナに思いっきり笑われたのだ。


 そして、そんな話をした数日後、アンナは丸い瓶に入った液体を顔を輝かせて持ってきたのだ。


 「これは、アロマオイルに花びらをつけた物で、観賞用にもなりますし、香りを楽しむ事もできます。そして、オイルにはタガナ海岸の貝殻の粉を混ぜていて、夜になると月の光を吸収して淡く光ります」


 「素敵だわ。今度は月の光なのね!タガナ海岸の貝殻ってあの有名な?」


 「はい。別名、妖精の粉とも呼ばれています」


 タガナ海岸は隣国ユガナ帝国にあり、そこの貝殻は月の光を吸収し魔力を溜める。女性はその貝殻の粉で作られた白粉を肌にのせ、メイクの仕上げをする事で透明感ある淡く輝く肌に仕上げることができることから、妖精の粉と呼ばれている。

 ただ、貴重な物で高貴な女性しか使えない物なのだ。


 「そんな貴重な粉を……?」


 「私が持っていても使いませんしね。でも、それだけではないのです。昔から満月の光には夜の意欲を向上させる魔力があると伝えられているのはご存知ですか?」


 「ま、まさか……」


 「はい、白粉は一度使えばメイクと一緒に落としますよね?ですが、これは、反永久的な品物なのです。ここで満月の光を浴びベッドサイドで輝きと香りを楽しむ上に、その上にですよ?夜の生活へもアプローチしてくれる優れものでございます」


 ふふっと怪しく笑うアンナ。


 「満月の夜光を吸収すればするほど、その効果は上がります。どうです?奥様、お気に召したのであれば、購入の検討を……」


 アンナが商人の真似事をする。アマンダが渋い顔をしている。


 「そうね、なんだかオブジェとしても良さそうね。それに光る様子も見てみたいわ。さっそく購入致しましょう」


 「ありがとうございます、奥様」


 これで、エイドリアンとの関係も縮まれば嬉しい。その効果に期待しつつ、鑑賞として癒されそうなので頂くことにした。

 夜の方も……と淡い期待を胸に抱いたところで、アマンダが聞いた。


 「1つ疑問が」


 「どうぞ」


 「満月の夜光を吸収すればするほど、という事は一度の満月ではさほど効果は得られないのでは?」


 「あ……満月って月に何回ですか?」


 「だいたい30日ほど。そういえば、先日既に満月の夜は終わってますね。つまり、即効性は得られないという事ですね」


 アンナがそっとガラス玉をしまう。私は慌てて言った。

 

 「え、でも、鑑賞用として楽しむから気にしないわ、全然!」


 「いえ、こちらは私が最高の状態まで管理してから献上致します故。中途半端な品物をお渡しするのは私のプライドが許しません」


 「そもそも、お兄様のフロント子爵も許さないでしょうね」


 アマンダのその発言にアンナがビクッとする。


 「あ、兄は関係ありません……」


 急に小声になるアンナにアマンダが顔を覗き込む。私は隣でその様子をくすくす笑いながら見ていた。

 穏やかな朝だった。



 その数日後、またしてもアンナが試作品を持ってきた。


 アマンダが呆れた目で見ているのも気にせずに、商品紹介を始めた。


 「これはですね、ハーブをブレンドした紅茶でございます」


 促されるまま香りを嗅ぐと、甘いけれどどこか温かい、そんな香りだった。

 

 「とても落ち着くわね」


 「ただ飲むだけだったら普通の紅茶なんですけど……秘密がありまして」


 アンナが横に座り耳元で囁いた。


 「お酒と割ることで夜用のお飲み物になります」


 それって


 「媚薬、までとは言いませんが、そのような効果があります」


 私たちの様子を後ろから見ているアマンダの視線が痛い。


 「男性が好む香りと味にしているので、お気に召すと思いますよ」


 胸がどきどきした。媚薬は興味はあったが、手に取るには恥ずかしく、使用する事はないだろうと思っていた。


 「それに、効果のほども実証済みです」


 「実証?」

 

 「ええ、勿論、口にする物なので」


 その相手が誰かは聞かないでおこう。


 「それでですね、これを飲むと始めはほっと落ち着き、日頃のストレスが和らいだようになります。そこに、後からお酒と私の魔法が相まって、徐々に、徐々に身体が温まり、頬は紅潮し、そして……」


 「まぁ、本当に……」


 なんだか知らない世界を知れる気がして興奮する。2人で頭を寄せ合い、ひそひそ話をしていると、扉をノックする音がした。


 ここは私室ではなく、応接室だ。テラスから入る日差しが気持ち良いため、気分転換に最近はここを利用するのだ。


 「はい、どうぞ」


 扉から現れたのはフロント子爵だった。

 

 「アンナ」


 蛇に睨まれた蛙、まさにそんな感じだった。


 

アンナの魔道具を考えるのが楽しくて好きです。

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