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ベランダにいる男

作者: 創造主

僕がこのベランダに閉じ込められて、どれだけの時が過ぎただろう。


目の前には満天の星空、駆け抜ける澄みきった風…こんな開放的な空間に“閉じ込められた”とはこれ如何に。


まぁその辺りは追々説明するとして、今はここからどう脱出するかを考えるのが先決だ。


ここはマンションの3階…上から見るとなかなかの高さだが、絶望的な高さではない。だがしかし、じゃあ飛ぶのかというと…そう簡単な話でもない。怪我はもちろん怖いが、一番の問題は飛び降りた後。もっと一目瞭然な…根本的な問題があるのだ。それが何かを語るには、そもそもなぜ僕がここにいるのか…そこから話す必要があるだろう。


できれば10分ほど欲しいところだが、状況が状況…なるべく手短に済ませよう。



『だんながかえってきた』



10分どころか10文字…察しの悪い人には申し訳ないが、今はこれで勘弁してほしい。そして、察しのいい人ならわかったと思うが…そう、開放的なのはこのベランダという空間だけじゃない。僕自身もまた、非常に開放的な状態になっているのだ。眼下には大通り…このままの姿で路上に舞い降りる訳にはいかない。確実にお縄だ。


ちなみに、『ベランダ』と『バルコニー』の違いは何かわかるだろうか。屋根があるのがベランダで、屋根が無いのがバルコニーだ。勉強になったね。


…おっと、いかんいかん。寒さのせいで思考が麻痺してきたらしい。


そう、寒いのだ。まだ真冬じゃないとはいえ、夕方からベランダで全裸…もはや身体の芯まで冷えきった。だから旦那が出掛ける朝まで粘るという線は無い。


やはり…飛ぶべきなのだろうか。こんなこともあろうかと、彼女に促されて靴はベランダに出してある。だから足から着地さえできれば………今考えると、こんなことに備えさせられた時点でヤバいと気付くべきだった。あの女、相当手慣れてやがる。


ちなみに、僕にはもう一つ選択肢が残されている。それは、部屋に戻って旦那と一戦交えるという力業。手荒なことはしたくないが、もはや…


(ガラガラッ)


その時、突如としてガラス窓が開き…中から丸太のような何かがニョキッと出てきた。それは全体にビッシリと刺青の入ったゴツい腕。指の間には煙草…幸いまだこちらには気付いていないようだ。



やれやれ。

これはもう…詰んだのだろうか。それとも神の一手はあるのだろうか。


とりあえず、この状況からでも入れる保険があるなら是非とも見積りが欲しい。いくらでも出す。

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