クリスマスメール
本日は開校記念日。
寝て休もうと、のんべんだらりんとベットにごろついていたら、ベット脇の携帯が震えた。メール着信のランプ。
めずらしい。休日にメールなんて。
大学までなると、大抵の予定は平日に決めてしまうし、急な呼び出しのほとんどは電話だ。誰だろうと画面に目を通すと、同じゼミの女の子からだった。
途端に、心臓が飛びはねる。
何故なら彼女は男達の間でアイドル化している、
「超」
がつくほどの美少女。
かという俺は、彼女に片想い中なのだから。
息を整えつつ本文を開くと、内容は更に鼓動が激しくなるものだった。
「クリスマス空いてますか?」
どういうことだ。俺に恋人がいないことは彼女も知っているはずだ。もしかして俺は誘われているのか?
どぎまぎしながらメールを返す……空いてますよ。
すぐにメールは返ってきた。
「クラシック好きですか?」
まさか。
まさかやはり俺は誘われているのか。
俺は、クリスマスコンサートに誘われているんじゃないか!?
もちろん俺は即答した。大好きです、と(クラシックなんて知らないけど)。
彼女の返事もまた、即答だった。
「本当ですか♪よかったらコンサートに行きませんか? チケットが一枚余っちゃったんです(*^_^*)」
キタよ!
間違いないよ!
俺は思わず歓喜の声をあげながら部屋中を乱舞した。苦節十八年、ようやく俺にも春が来たのだ。しかもミカエル級の大天使が。
うち震える手を押さえつつ俺は、もちろんいいよ、と紳士的な回答を添えて返信ボタンを押した。
ああ、女の子とクリスマスにクラシックなんて、初めてだ。一体なに着てきゃいいんだ、とりあえずカジュアルめなスーツに革靴、時計はしてかなきゃ駄目だよなプレゼントも持ってかなきゃ、花はどうだろやっぱり赤い薔薇の花束君の年だけかぁぁああ〜!?
携帯がカノンを奏でる(彼女のために設定しました)。
僕は世界で一番凛々しい顔で携帯をすばやく取った。
「嬉しいです!
急にバイトが入って困ってたんですよ〜。私の彼氏がご相席することになりますけど、お手柔らかに頼みますね(^.^)」
その日から俺の、長い長い開校記念日が始まった理由は、言うまでもありません。
(もう女なんか信じない。)
2006年製作