勇者一行魔法使いの手記
勇者は死んだ。魔王によって。
死なせてしまった。私によって。
元々他の世界で未来あった若者、勇者の気質がある者の魂を、私が召喚した。
そして、急かしてしまった。
ソータには、早すぎたんだ。
彼の国は戦争や争いが無いと言っていた。だからこそ、念入りに修行させるべきであった。
私が急かした。自国を滅ぼされた恨みなんか、言い訳に過ぎない。自分の、個人的な恨みによって。
ああ、君の遺書を読まされた時、こんなことなんて起きるはずが無いって思っていた。
楽観的だった。圧倒的力を持つ魔王を軽視していた。
「自分が万が一、いや億が一死んだら、この通りに行動してくれ。」
用意周到だった。悪く言えば、弱気な性格であったが、私たちはそんな風に思わなかった。
「俺の魔力も込められているから、国王様とかになんか言われても、免罪符になるはずだよ。」
用意周到が過ぎていた。
ソータが死んだ、いや、殺されたあと、私たちは退却しようとし、魔王の攻撃で、遥か彼方に飛ばされた。トーレプスの障壁魔法がなければ致命傷程度で済まなかった。一行は散り散りになった。
私は、ソータを召喚した、ソータと初めて会った森に突き落とされた。私たちにとって始まりの町の近くの。
住民たちが、手厚い治療を施してくれたお陰で、こうして手記を書けている。
歩けるくらいには治った時に、国王陛下への謁見に向かった。
勇者を死なせ、自分は飄々と帰ってきた、ということで、貴族から死刑を求められた。
用意周到が過ぎているぞ、ソータ。彼は、私に遺書を持たせていた。皆に持たせればいいものの。
国王陛下は、その遺書を拝見なさって、私にこういった。
「其方は、勇者の後継者を育成せよ。そのための人員と金銭は惜しまん。」
と。
この時私は、誓ったのだ。
ソータの無念を晴らすため、ソータの死を無駄にしないため、必ずや魔王を倒すと。