表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/30

3 逃走

※この作品はフィクションであり、犯罪等を助長するものではありません。


感染者に気づかれ無いように、俺は歩道のプランターの茂みにしゃがんで、息を潜めて様子を見ることにした。姿がおもいっきり見えているが、他に遮蔽物が無いので妥協する。



......あった。入口付近に注目すると





『高齢の男性』が苦痛と絶望の合わさった表情で死んでいた。



どういうことだ?さっき聞こえた悲鳴は、確実に若い女性の悲鳴だった。


辺りを見渡すと、公園は小さく遊具も錆びついているようだ。滑り台やブランコなどが見えるが、今は遊んでいる子供の姿はない。そして今公園にいる感染者は3体だ。 


感染者が3体もいた。1体は公園の入口で男性を喰らっている、もう2体は公園内をうろうろしているようだ。


...どうしようか?3体はキツイな、というか戦闘は絶対に無理だろ。1体でさえ倒すことが厳しいのに、立ち向かうのは自殺行為に見える。素手で何が出来るんだよ。


まだこちらに気がついていないみたいだし、逃げるか?でもあの悲鳴の女性をこのままにしておくのもなんだかなぁ、なにより......。



あれっ?俺はなんでここに来たんだっけ? あぁそうだ、悲鳴が聞こえたからだ。でもあそこには感染者がいるし……あぁもう!どうするんだよっ俺っ!!




どうすることも出来ず、俺は3体の感染者の様子を見ることにした。


1体はまだ、男性を喰らうのに夢中と。2体は公園内をウロウロと歩いているようだ。時折キョロキョロとしたり、何かを探しているように見える。まさか人を探しているのか?


耳を澄ましても悲鳴や啜り泣く音が聞こえないから、この公園には生きてる人はいないぞ......多分な。




それにしても、あの2体の奴らは何をしているんだ?何かを探しているのか?


それともただの徘徊か? 何かを探しているような行動、フラフラとした足取り、時折キョロキョロする仕草。


この2体の動きに思い当たる節があるな...これはもしかして【感染者】の本能なのか?感染者は人を見つけると襲う習性がある、と海外メディアのB○Cが報じていた。

その習性が、今あの2体の感染者にも適用されているのか?それなら納得できるが。


いや待てっ!

それは違う気がするぞ!もし本能で動いているのであれば、悲鳴の女性は殺されていて当然だ。


【感染者】が人を襲うのは本能なんだから。それに女性を襲ったあと?も公園内をウロウロしているのは変だ。

ということは......これはただの徘徊じゃないのか?


くそっ!分からないっ!何も分からないぞ!!何なんだこの状況はっ!?どうすればいいんだよっ!

あの動きはただ単に散歩してるだけなのか?だったら早く家に帰ってくれっ!頼むから大人しく家に帰れよ、そして二度と俺の前に現れないでくれっ!

俺はもうこの場から逃げ出したい衝動に駆られるが、茂みに隠れて感染者の様子を窺っていると...。




「あっ」

目が合った。

3体の感染者のうちの、喰らってた奴と目が合ってしまった。目が合っているということは、向こうも俺のことを見つけたということだ。そして俺と目が合った瞬間、感染者の奇声が公園に響き渡った。


その感染者は犬のような体勢でダッシュでこちらに向かって来たっ!! おまけに2体もこちらの存在に気づいたようだ。もう駄目だ、完全に気づかれた!畜生っ!!

やっぱ来るんじゃなかった、さっさと立ち去っておくべきだった。


「くそっ!」

もうこうなれば逃げるしか無い。

俺は脱兎の如く逃げ出した。公園の横道を抜け出す最短ルートを走るっ!! 後ろからは何かが追いかけてくる気配がする、それに足音も複数聞こえる。

しかし、今は振り返っている余裕はない!とにかく走るんだ!走れっ!!


息が切れそうになるが、歩道を全速力で走り抜け、道路の突き当たりを右に曲がり、1番近くの民家の家に逃げ込むことを考える。

走って玄関の前で行き

「誰かいませんか!、助けてくださいぃー」



......反応がない。



再度呼び掛け扉を叩くが

「お願いします!助けてくださいっ」



......反応がない。



年季の入った引き戸を開けようとするが、鍵が掛かっている。くそっ何で空いてないんだよ。田舎はいつも空いてんのに、こんな時ばっかり。


俺は気配を感じて、後ろから追いかけてくる感染者を一瞬だけ振り返り、目視して恐怖した。

血走った目に、右目と左頬が喰いちぎられた顔が俺に迫る、もう距離が近い。あと20秒もしない内に追いつかれる距離だ。


ここはヤバイかもしれない。

少しでも距離を取るため、道路を挟んで向い側の家に侵入することを決断する。この際、感染者が家の中に居ようがもう、体力と気力が限界だ。


玄関まで行く時間さえも惜しいので、ブロック塀を越えて侵入する。

花ブロックの隙間に足を入れて乗り越える。このブロック塀、苔めっちゃ生えてると思いつつ庭に侵入。


辺りをを見渡すと、雑草が膝下くらいに届くまで伸びていて、長ズボンでも痒く感じる。鉢植えやプランターがあるが、どれも花が枯れているので空き家ではないかと推測。


急いで地面から拳大の庭石を探し出して、窓のクレセント錠付近に4回ほど叩きつけた。結構大きな音がしたが、感染者は塀の向こうにいる。玄関側から迂回してくるかと思ったが、まだ大丈夫そうだ。


緊張と疲労で息が荒くなっているが、手を切らないように慎重にクレセントを下にひねり解除する。

カーテンが掛かっているので、中の様子は分からない。

しかし、1秒も時間を無駄にすることは出来ないので、素早く窓を開けてカーテンを捲り上げ内部に突入する。



室内は真っ暗だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ