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探索メンバー決定

 目が覚めるとサクスム家の一室で俺は寝かされていた。布団の上にはベル達も一緒に乗って眠っている。


「………ああ。洞窟での戦いが終わった後に気を失ったのか。シェリルやナイルさんには迷惑をかけてしまったな」


 一人で何が起きたかを思い出していると部屋の扉が開いて、二人の女性が入ってきた。


「起きたのか」


「おお。無事なようじゃな」


 入ってきたのはシェリルと、確かエレナ王女だったな。二人は俺の顔を見るとホッとしたのか表情が柔らかくなった。そして、俺の寝ているベッドの横に立つ。


「ご心配をおかけしました」


「まったくだ。少しは自分の体を労わっておけ」


「しかし、妾はお主達のおかげで無事にあそこから脱出する事ができた。礼を言うぞ」


 シェリルは少し心配そうな表情で、俺に果物を渡してきた。エレナ王女は柔和な笑みを浮かべている。少し見惚れてしまいそうになったので話題を変えた。


「ところで俺が倒れてからどれくらいの時間が経っているんだ?それと何か決まったり変わった事はあるか?」


「貴様が倒れてから一日ほどしか経っていないが変わったことはあるな。二時間後に全員が集まる予定だから貴様はそれまで休んでおけ。時間になったら起こしてやる」


「そうか」


 俺はお言葉に甘えて再び目を瞑る。そして、顔の周りや頭を撫でてくる感触がある。だが嫌な気持ちにはならない。くすぐったくて何だか暖かい。


 近くでシェリルとエレナ王女が笑う声も聞こえてくる。そんな声を聞きながら俺は眠りに落ちた。


………

……


「起きろ。そろそろ時間だぞ」


 目が覚めると、最初は俺の体の上に乗っていたベル達がシェリルとエレナ王女に抱かれたりしていた。本当にコイツ等は誰が相手でも態度が変わらないな。


「ありがとう。今起きる」


 本当はもう数時間寝たいくらいだが、皆を待たせるわけにはいかない。体を起こして準備をする。


「私達は先に行っているからな。初日に集まった部屋だ」


「ああ。俺もすぐに行く」


「ではまたな」


 シェリルとエレナ王女は先に部屋を出て行った。部屋には俺とベル達だけになる。すると、コタロウが落ち込んだ顔をして俺のズボンをギュッと握ってきた。

 鈍い俺だが、コタロウが何を思っているのかは分かる。俺はコタロウを抱き上げた。


「気にするな。…なんて言っても無理だよな。庇われる辛さは俺も分かるよ。だからコタロウ。一緒に強くなろう。次は同じことを繰り返さないように頑張ろうな」


「たぬ~」


 抱き上げられているコタロウはそのまま俺の胸の中で泣いている。俺はベッドに腰をかけるとベル達がコタロウを心配してくれている。


「いい仲間を持ったよな。さあ、シェリル達も待っている事だしそろそろ行くぞ」


「たぬ」


 完全に立ち直ったわけではないが、先程よりはよい表情になっている。そんなコタロウの頭の上にはベルが乗っており頭を撫でていた。


「すみませんお待たせいたしました」


 俺達は皆が集まっている部屋へと移動した。既に皆が集まっていたが、この前は見なかった人達もいた。それはガンツさんと三人組だ。


「ガンツさん。それにクロスさん、バーンさん、パッチさんも」


「よ。俺達は婆さんに誘われてな。一応詳しい話は聞いているぜ。眉唾な話だが俺達を騙す理由何て無いからな、それなら俺達の力が必要なら手伝おうと思ってな」


「…かなり危険な旅になりますが」


「そんなもん承知の上だ」


「どこに行っても等しく危険なんだろ。それなら元凶を叩き潰す協力くらいするさ」


「悪臭玉をいくらでも生成してやるぜ」


 四人は笑っていた。ここにいるなら覚悟が決まっているのだろう。それなら俺は力を借りさせてもらおう。


「さて、最後の確認になる」


 俺が席に着くとアラン様の声が響いた。


「"旅する風"、"歴戦の斧"、"大樹の祝福"、ノルン殿、ミランダ殿、シュンメイ殿、ニャム殿、メイヤ殿、ガンツ殿、クロス殿、バーン殿、パッチ殿。…そしてエレナ王女。このメンバーでダンジョンに潜ってもらうことになる。やめるなら今の内だ」


 エレナ王女も!?

 俺は内心でガンツさん達がいた事以上に驚いていた。しかし、周りは俺の心の中とは正反対で喋る者はいなかった。


「諸君らの覚悟、しかと受け止めた。感謝申し上げる」


 アラン様は数秒間頭を下げた。そして改めて話を進める。


「エレナ王女の話を聞く限り、この先は魔国の動きにも注意する必要がある。人々の安全と生活を守りながらも情報収集にも力を入れていく。苦労をかけるが協力をお願いする」


 カロリーナさん達は真剣な表情で頷いた。


「さて、本来であれば出発の前に食事会でも開きたいが、生憎今はそんな時ではない」


 まあ仕方がないだろう。大地震に加え街の周囲では魔物の数が増えているのだ。復興や防衛に力を注ぎたいのは当たり前だ。


「なので君達が帰ってきたら盛大にお祝いをしよう。一人も欠けること無く戻ってきてほしい」


 ダンジョン探索組も大きく頷いた。

 その後も細かい話を詰めていく。ホワイトコングの話もここで行った。驚かれたが、可能性を見出だせた事で希望が見えたと思う。


 話が終わると解散となる。後は出発の日まで体を休めたり準備をすることになった。


 そして俺達は先程の部屋で休ませてもらっている。今日はこのまま泊まらせてもらうつもりだ。ちなみにベル達は既にミコトちゃんの部屋に行っている。


「いよいよか。しかしエレナ王女もついてくるとは思わなかったな」


「色々と理由があるのだろう。だが強いぞ。完全に味方と決まった訳ではないが戦力としては申し分ない」


「それだと不安な要素もあって危険な気もするけど」


「アイツの実力ならこっそりとダンジョンに侵入することも可能だろう。いないと思っている者がいる方が危険だとの判断だ。それより、せっかく二人きりなのにそんな色気のない話しかしないのか?」


 シェリルは俺の肩に頭を乗せてきた。薄っすら笑い、からかうような口調だが俺としては心地が良い。


「それは悪いことをしたな。どうも色気のある話題は苦手なんだよな」


「知っている。だからこのまま黙っていればいい。それで今は十分だ」


 俺の手はシェリルの頭へと触れる。しばらくの間は落ち着く事はないだろう。今ある幸せを俺達はただただ噛み締めていた。

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