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幕間②

 本日より二日に一回の投稿を始めます。

―神様

 

 とある空間内で少年の姿の神様がテーブルで本を読みながら、ダルそうに寝転んでいる男と会話をしていた。


「まずは危機を乗り越えられたね。でも次々と問題は続いているな」


「お前さあ、手助けするなら加護でも与えたらどうだ?」


 男の言葉に少年は首を横に振った。


「僕はそんな事はしないよ。自分の力で頑張るから意味があるんじゃないか。加護があれば彼らはそれを期待してしまうよ」


「じゃあ何でガチャを操作しているんだよ」


「最初から死んだらつ可哀想でしょ。彼はちょっと危ない場所にいたからね、最初くらいは装備を揃えなきゃすぐに死ぬ可能性があったんだよ。でも従魔との出会いは彼の人柄だよ。二回目のガチャも従魔の力だね。それがなきゃ彼は黒いゴブリンに殺されていたかもね」


「へー、それにしてもお前は転生させるのが好きだね」

 

 男は寝たまま果物を食べ始める。少年は呆れたように男を見るが質問には答えてくれる。


「僕は人の可能性を見たいんだよ。時に運命を打ち破るその姿がね。でも才能と努力以外の要素が強くなってきているんだよね」


「加護や能力の選択の事か?」


「うん。でも加護が決して悪いとは言わないよ。努力を続けてきた人間に加護を与えて成功してもらいたいと思う気持ちは分かるんだ。ただ最近は加護が強すぎる。加護を持っているだけで努力はしない。能力に関しても好きな物だけ選んでいたら、他の能力の可能性が潰される」


「まあ、顔で選んでいる神もいるからな。最近は転生した場所で強気に出てくる人間も増えているみたいだしな」


「加護の基準はそれぞれだけどやりすぎなんだよ。能力に関してもミスを隠すためか知らないけど奮発すんなっての」


 少年は話しながら表情がきつくなってきている。他の神に対する思いがあるらしい。


「お前は能力はランダムにしているんだっけか?」


「あれ嘘だよ。自分の能力をみえるようにしただけだよ。あの形の方が悪くても僕や運のせいにできるでしょ。君はそれしか使えないよって言われたら絶望する人もいるだろうし」


「根本的な解決にはなってないけどな。あと聞いてみたかったんだけど、お前の転生者の基準って何なの?適当って気がしないんだよね?けど好みの人間を贔屓するってタイプでもないし」


「よく見ているね。僕が選んだのは加護によって不幸になっていく人間たちだよ。例えばとある男性はバスケットでそれなりにいい成績を収める運命があった。でも戦いの神の加護を持つ天才の出現で地区大会で散ってしまう。それから彼はバスケットを止めた。打ち込む物も何も無く無気力な人間になった。プロになれるとは言わないけどバスケットを続けていれば彼の人生はもっと明るかった。加護を持った人間は幸せでも周りは不幸なんだよね」


「…」


「とある女性は幼馴染の男性と結婚して幸せな家庭を築くはずだった。でも愛の女神をの加護を持つ女性の出現で幼馴染の男性は取られてしまった。彼女は自信を無くして恋愛に憶病になった。これが、それぞれの努力の成果なら僕は何にも言わないけど加護だけの力だったんだよね。加護が無いだけで不幸に見舞われるのはどうかと思っちゃったんだよ」


 少年の言葉に男は何か考えているようだった。


「送った先の世界も加護はあるんじゃないのか?それに転生者の出現で運命が変わる存在もいるんじゃないか」


「まあね。でも現地人の加護は良識の範疇の世界だよ。問題は僕以外に送られてきた転生者くらいかな。ああそれと運命が変わるのは別にいいんだよ。自分の力で行うなら世界征服や復讐であっても僕は肯定するよ」


「運命神の言葉とは思えないな」


 少年の言葉に男は呆れたが、少年は首を横に振る。


「何言っているのさ。神同士だって争いはあるし残酷なことを平気でしているでしょ。君だって大罪と言われる怠惰が好きじゃん。それに運命は運命だ。善も悪も無いんだよ」


「言い返せないな」


「まあ僕は基本傍観者だよ。物語が見たいという欲で動いているから、他の神の事を言う資格も無いだろうしね」


「まあいいんじゃねえか。何か言ってくる神がいればその時に考えればいいし」


「そうだね。さて、そろそろ仕事をしないとね」


「もうそんな時間か。面倒だな」


 そう言って二柱の神達は消えていった。


―とある獣人


「本当ですか?」


「ああもちろんだ。君には期待しているよ」


 軍服を着た獣人の女性が、男性からの言葉を受けて喜びに震えていた。彼女は王都で生活する獣人だが、獣人の立場は高くはない。彼女のように城で働いている者もいるが差別がないとは言えない。


 そんな彼女だが獣人と言う立場でありながらも王国軍の隊長という地位につく事ができたのだ。その要因は先程の男の存在だ。


「は!ご期待に沿えるように誠心誠意精進いたします」


 彼女は去っていく男性が見えなくなるまで敬礼の姿勢を崩さなかった。


 子供の頃から王都で暮らす彼女にとって、今回の昇進は至高の喜びだった。彼女は母を早くに亡くし父子家庭だった。だが父親は不器用な男で、冒険者しか職は無かった。その冒険者でも獲物をボロボロにしたり、王都のギルドの差別を受けたりして稼ぎは多くない。その少ない稼ぎも酒代に消えたため、彼女の生活は大変だった。


 少しでも父の手伝いをしようと子供でもできる仕事を頑張ってきた。そんな中で彼女は王国の兵士に憧れを抱いた。キチンとした身なりで人のために戦う姿は子供の彼女にとっては輝いて見えたのだ。


 そして憧れを叶えるために彼女は努力を重ねて城の兵士になった。だが、現実は過酷だった。他の兵士達からの差別や、父親が借金を残して蒸発したりと生活が楽になることは無かった。それでも諦めることなく努力を続けてきたのだ。


 それが認められたのだから嬉しくないはずがない。ただ、去っていく男が不敵な笑みを浮かべていたのを彼女は知らない。


―とある魔族


 魔国にある大きな屋敷の中に、魔族の女性とその部下がいた。


「それでブラックゴブリンは確かに消滅したのじゃな」


「はい。魔剣と魔槍の反応も消えております」


「それなら安心じゃな。まったく妾の兄弟と思えぬ愚行じゃ。あんな生物を作るくらいなら他の研究をすればいい物を。よほどあの計画を実行したいのじゃな」


「心中お察しします」


「しかし、あんな馬鹿どもに追従する者が多いのも事実じゃ。戦いを好む魔族の血なのかの」


 女性は悲しげな表情を浮かべながら呟いた。部下は表情を変えず話を聞き続けている。


「妾の味方は兄弟たちに比べると数は少ない。迷惑をかけてしまうの」


「お気になさらないで下さい。私には問題ありませんので」


 その言葉と共に、部屋の中に兵士らしき者たちが入ってきた。

 女性は兵士と部下を睨んで口を開く。


「何のつもりじゃ?」


「大人しく投降してください。無駄な血は流したくありませんので」


 部下はクスクスと笑うように女性を見つめている。

 その余裕は兵士たちが女性を囲み武器を向けているからだろう。


「はぁ。この分じゃと他の部下も同じようじゃな。妾に味方はいないという事か」


 女性はため息つをつき諦めたように周りを見渡す。


「ご明察です。貴女の思想は軟弱すぎる。あの計画が成功すれば我らの繁栄は約束されるというのに」


「妾達がが支配する世界などつまらん世界じゃぞ。…まあよい。妾はここから去らせてもらおう。お主達の企みだけは阻止させてもらうがの」


「捕えなさい!」


 号令と共に兵士が動き出すが女性は煙のようにその場から消えていった。

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