夏を満喫
何かいつもより心地よい気がするぞ。体も軽い気がする。
気分良く体を起こして目を開けると、周りにはセラピードルフィンも集まっていた。
何やらコイツ等から心地よい波動を感じるな。
「お前らのおかげか?」
「「「キューイ」」」
「ありがとうな。凄い気持ちよかったぞ。また機会があればよろしく頼みたいな」
「「「キューイ」」」
お礼を言うとセラピードルフィンは飛び跳ねる。
イルカの餌って魚だったよな。後で用意しておこう。
「これは一体どういう状況だ?」
「キュキュ」
「たぬ」
シェリルがベル達を連れてやってきたので、俺は先程の事を説明する。
「ああ。セラピードルフィンの能力だな。安らぎの波動という能力で、肉体的にも精神的にも癒してくれるんだ。この数でやってくれたらそれは気持ち良いだろうな」
「それはラッキーだったな。シェリル達も今度はここで昼寝でもするか」
「そうだな。その代わりお礼もしなくてはな」
「もちろんだ」
ふとベル達を見ると子供のセラピードルフィンと楽しそうに遊んでいた。
今日は区切りが良いところまで来たし遊んでもいいかもしれないな。
「なあシェリル。せっかくだし今日は気分転換して遊ばないか?」
「まあいいだろ。ベルとコタロウもその子と遊びたいだろうからな」
俺達の言葉にベルとコタロウが反応して喜んでいる。友達と遊ぶのは楽しいもんな。
「ところで水着は用意してくれたのか?」
そうだった。
通販でデザインを見ながら選ぶ。どれも似合う気がするがパレオ付きのビキニタイプの水着を選んだ。
「露出が多いのが好みなのだな」
シェリルはニヤニヤ俺を見てくるが気にしない。欲望?もちろん入っている。
ちなみに俺の水着は適当だ。サーフパンツを選んでおいた。
着替えのために一度部屋に戻る。俺はすぐに終えてデッキテラスでシェリルが来るのをベル達と待っている。
今のうちに遊ぶ道具も買っておこう。通販で水鉄砲・ボール・ゴムボートなどを購入する。水上バイクとかも興味あるが、万が一セラピードルフィン達を驚かせたくないし止めておこう。後はセラピードルフィンの餌用に魚を大量購入した。数も多いから思いっきりポイントが減ったけどしょうがないな。
「待たせたな」
声のする方を向くと水着姿のシェリルがいた。スタイルもいいしやっぱり似合っている。目の保養になるな。
「シェリル似合っているぞ」
「当然だ。誰だと思っているんだ」
俺には言えないセリフだな。
「ところで、手に持っている物は何だ?」
「これは水鉄砲だ。こんな風に使うんだ」
俺は水鉄砲を撃ちだす。目を輝かせたのはベルとコタロウだった。二匹とも魔法を上手く使って大きめの水鉄砲を撃ちだしてセラピードルフィンと遊んでいる。セラピードルフィンも口から水を打ち出している。
「変わった道具だな」
「子供の頃は楽しいんだよな。大人になっても意外に楽しめるけど」
シェリルにも水鉄砲を渡してベル達に混ざって遊び始める。
「キキュー♪」
「たぬぬ♪」
「キューイ♪」
「ははは、当たらないぞ」
「ふむ。私もベル達側に着くか。よし、ジュンを一斉に狙うぞ」
「マジかよ」
一対四の戦いが始まる。結果は勿論俺の負けだ。デッキテラスで軽くのつもりだったが、案外白熱してしまった。もっと広い場所の方が良いと思い一度休戦を申し込む。
「ストップ。ここじゃあ狭いからビーチの方に行こうぜ」
「そうだな。ここだと物もあるからな」
「せっかくだからゴムボートで移動するか」
海にゴムボートを出すとベルとコタロウがすぐさま飛び乗る。水鉄砲はしっかり収納しているようだった。その後に俺達も続く。
「それじゃあ漕ぐぞ」
オールを使いビーチに向かって進んで行く。スピードは出ないがのんびり海を満喫している。横では一緒にセラピードルフィンの子供も泳いでいる。
ビーチに着くとゴムボートを砂浜のに置き先程の続きを始める。
ここで驚いたのがセラピードルフィンが空中を泳ぎ始めたのだ。こんな能力もあるのか。
四対一で俺が不利だが、みんな楽しそうだから良いだろう。最終的には俺の負けでビーチに仰向けになる。
「降参だ」
「キュキュ♪」
「たぬ♪」
「キューイ♪」
「では罰ゲームだな」
「うん?」
何か不穏なワードが聞こえた気がするぞ。体を起こそうとするがシェリルに押さえられる。
「あのーシェリルさん?」
「皆で砂をかけるぞ」
「キュ♪」
「たぬ♪」
「キューイ♪」
「ちょっとやめろよ」
俺の声は無視され体は砂に埋もれていく。おかしいなベルもコタロウも俺の従魔なのだがシェリルの言う事を優先したぞ。
あっという間に俺の体は砂に埋もれていった。結構重く感じる物だな。動けない俺の上にベル達が乗っかかる。
「おーい、そろそろどけてくれないか」
「まだ出来たばかりだろう。もう少しそのままでいたらどうだ」
シェリルも笑いながら俺達を見ている。ベル達は動けない俺の頬っぺたをつついたりと俺で遊び始めている。後で二匹とも存分に撫で回してやると心に誓う。
「私も参戦するか」
そう言いながらシェリルは近づいてくると耳に息をかけてきた。
「ふー」
「ふぁ!?」
それからはある意味地獄だった。首筋をくすぐられたりして俺の笑い声がビーチに響いていたと思う。ベル達も悪乗りしてくるから質が悪かった。解放されたころには息も絶え絶えだ。
「お、お前ら後で覚えておけよ」
このセリフを言うのが精一杯だった。
そしてベル達はゴムボートに乗り、セラピードルフィンの子供に魔法で引っ張ってもらう。
「俺も少し泳ぐかな。シェリルはどうする?」
「私も久しぶりに泳ぐとしよう」
海に入りベル達のゴムボートを目指して泳ぎ出す。近づくにつれてベル達がセラピードルフィンと何か話しているのが見えた。
「何話しているんだろうな」
「さあな」
もう少しでゴムボートというところで、セラピードルフィンが泳いで距離を取った。同時にベル達が水鉄砲を取り出して発射してきた。
「こらお前ら」
「先程の話はこれだったのだな」
ベル達はまだまだ遊び足りないようだ。セラピードルフィンで移動しながら攻めてくる。
近づこうにもセラピードルフィンの方が機動力は上だ。どうするか。
まずはゴムボートをもう一つ購入だ。
「シェリル。俺が漕ぐから水鉄砲を頼む」
「ふふ、わかった」
ゴムボートに乗り込み準備完了だ。
そこからは水上での合戦だ。
俺はオールで手が使えないので、水魔法を使わせてもらった。
「キュキュ♪」
「たぬ♪」
「キューイ♪」
楽しんでいた三匹だが、シェリルが上手く狙って追い詰めていく。まずいと思ったベルが何やら指示をだす。
「キュキュ」
「キューイ!」
セラピードルフィンはベルの言葉に敬礼をした。そして、俺達のゴムボートの下から水しぶきがあがる。
「やったなアイツら」
「キャ!?」
風を操作して体を浮かす。そのままシェリルもキャッチしてベル達のゴムボートまで飛んでく。
「やりすぎだ」
「キュ~」
「たぬ~」
「キュイ~」
全員反省しているようだったので許すことにした。その代わり思い切り全員を撫で回させてもらったけどな。イルカに触ったのは初めてだったからかなり新鮮だった。表情豊かで結構かわいい。
「そろそろ家に戻るか」
「キューイ♪」
セラピードルフィンが俺達を引っ張って連れて行ってくれる。当たり前だが、俺が漕ぐよりも速いので風が気持ちいい。
「ありがとな」
ビーチに着くと俺達はゴムボートから降りる。そしていつの間にかセラピードルフィンの群も近くにいた。
丁度いいので先程購入した餌を投げる。
「皆さっきはありがとうな」
魚を投げると一斉に集まり出して食事を始める。喜んでくれているようで安心した。そんな中で一緒に遊んでいた子供だけは俺達の近くで食事をしていた。時々ベルとコタロウとお喋りもしている。
「仲がいいな。どうせならお前も一緒に来るか?」
セラピードルフィンは少しの間考えている。そしてゆっくり首を横に振り群の方を見る。
「キュイ」
「そっか残念だけど、家族がいるもんな。だけどまた一緒に遊ぼうな」
「キュイ♪」
食事も済んだようで群へと戻っていく。
「またな」
「キューイ」
俺達が手を振ると向こうもヒレを動かして返事をしていた。俺達は見えなくなるまで手を振り続けた。
「振られてしまったな」
「残念だけど仕方がないな。アイツには他に家族がいるみたいだしそっちが大事なんだろう。さて、俺達も飯にするか」
気持ちを切り替えてバーベキューの準備を始める。肉に野菜に海産物を大量に用意する。海産物はこの前も食べたが、目の前で焼いて食べるのはまた違った美味しさがあるからな。ベルとコタロウも好きに焼けるように高めのイスも用意しないと。
食材と環境を整えると、それぞれ食べたい物を乗せて焼いていく。焼ける匂いが食欲を刺激する。
「この辺は焼けたみたいだな」
「いい匂いだな」
「キュキュ」
「たぬたぬ」
焼きあがった物を食べていく。熱々の食事はやはり美味い。
ベルとコタロウは好きな物をどんどん焼いていく。
「あんまり乗せすぎると、食べる前に焦げるから気をつけろよ」
「キュ」
「たぬ」
返事はするがペースが落ちる気配がなかった。まあ楽しそうだしいいかな。焦げそうなら俺も食べればいいだけだし。
「野営の調理と変わらないが、何だか楽しい食事だな。食材も豊富で美味いしな」
「俺達の世界でも皆でワイワイして食べる物だからな。楽しむことが前提になっているぜ。まあマナーが悪くてゴミをその辺に捨てたり、周りの迷惑を考えない奴等もいるけどな」
「そこは私達は大丈夫だな。どんなに騒いでも誰の迷惑にならないからな」
「確かにそうだ。好きに食べて楽しもうぜ」
「ああ。おっと、私達も食べないと食材が食い尽くされそうだぞ」
「早いなアイツ等!?」
大量に焼いていたはずだがベルの腹にどんどん吸い込まれている。
俺達も再び食事に加わっていく。大量に用意した食材はあっという間に空になった。
「腹いっぱい食べたけど、デザートは入りそうか?」
「当たり前だ」
「キュキュ」
「たぬ」
皆返事が早いな。シェリルも甘い物になると目の色変わるよな。さて、バーベキューならスモアが良いかな。
俺はグラハムクラッカー・マシュマロ・チョコを用意する。チョコは一口大に砕いて、マシュマロは串にさす。
「それじゃあ作っていくぞ」
マシュマロを火に近づけて少しずつ焼いていく。少し色が付き焼きあがったらグラハムクラッカーの上に置く、そして焼けたマシュマロの上にチョコを乗せ、もう一枚グラハムクラッカーを乗せサンドにする。
「これで完成だ」
「簡単にできるのだな」
「そうだぞ。せっかくだから自分で作ってみるか?」
「ああ」
手順は難しくないので、説明を聞きながら自分達で作っていく。マシュマロが燃える事もあったが無事に完成して食べ始める。
「サクッとしてフワッとして美味いな」
「キュキュ///」
「たぬぬ///」
満足なようで皆幸せそうな顔をしている。その後も満足するまで自分で作って食べていく。
ここまでくれば最後に花火もしたいな。
「なあ最後に花火をしないか?」
「花火とはなんだ?」
「説明するより見た方が早いな」
俺は焚火を準備して花火を一つ取り出して火をつける。
「おお」
「キュ」
「たぬたぬ」
興味津々に花火を見る。
「こういうのだ。やってみるか?」
「キュキュ♪」
「たぬぬ♪」
ベルとコタロウがすぐに花火を手に取り火をつける。シェリルも微笑みながら二匹の後に続く。
「危険だから他の人には向けるなよ」
手持ち花火以外にも噴射花火やねずみ花火も用意する。本当は打ち上げ花火が良いんだけど、市販の製品じゃ迫力がな。あれ?旅館で見れたな。皆が気に入ったようなら温泉に入りながら見ようかな。
「おい、ボーッとしていると花火も無くなるぞ」
俺も再び花火に参加する。しかし、花火はいつぶりだろうか?公園とかで制限が多くなってからあまりやらなくなったもんな。小さい頃は祖父母の家で親戚と遊んでいたけど。
「キュ?」
昔を懐かしんでいると、ベルが一つの花火を持って首を傾げていた。細くて他の花火に比べると頼りないもんな。
「ベル、それは最後にやる花火だから待っててくれ。それよりもこっちを見てみろ」
噴射花火に火をつける。勢いよく花火が噴射されていく。
「キュキュ♪」
「たぬ♪」
「色々あるのだな。よく考えて作るものだ」
その後も花火を楽しみ、残りは線香花火だけになった。
「最後のとっておきか?」
「まあね。他の花火に比べると地味なんだけど味があるんだよね」
俺は手に持っている線香花火に火を着けた。派手さはないが、落ち着いてキレイな火花がとんでいる。しばらくすると、弱くなりポトリと地面に落下する。
「何だかキレイだけれど切ない気分になるな」
「それが魅力なんだよね」
全員で線香花火を楽しむ。俺達の今は線香花火の勢いある段階だろうか?ポトリと落ちるのはまだまだ先であってほしいな。