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ブックメーカー ~異世界では好きに生きてみたい~  作者: 北村 純
初めての異世界生活
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新たな世界

 ヒロインと接点を持つのは"トラブル"のお話しからです。

「痛っ」


 顔に衝撃を受けて目が覚めた。起き上がり周囲に目を向ける。右を見ても左を見ても、俺の視界は森で埋め尽くされていた。


「マジかよ…」


 俺は頭を抱えて落胆した。

 森はどんよりとした感じではなく、青々として心地好い日差しや小川も流れていてキレイなのだが、人に出会う前に魔物に出会う確率が高そうなのだ。


 スポーツは幼い頃から続けていたし、ジムでもトレーニングをしていたから身体能力には少し自信はある。だが格闘経験もなければ狩猟経験も無い俺にとってはこの状況は危ない。


 とにかく、村なり街なり人のいる場所に向かい情報を集めるのが優先だろう。

 俺は森を抜けるために歩こうとすると、足下に袋が落ちている事に気が付いた。


 拾い上げると固い物が中に入っている。俺の顔にぶつかったのはこの袋だろうか?


 中身が気になり開けてみると、銅貨と銀貨が入っており、他に俺名義の通帳と手紙と本が入っていた。

 

 通帳も気になるがまずは手紙を読んでみる。


『親愛なるジュン君へ

 この手紙を見ているなら無事に異世界に転生できたんだね。一応ステータスは確認してね。それと無一文だと大変だから、そちらの世界のお金を送ったからね。鉄貨・銅貨・大銅貨・銀貨を十枚ずつと大銀貨を二枚だよ。鉄貨が十円、銅貨が百円くらいの価値で十枚事に一つ上の硬貨に変わるよ。ちなみに通帳は君の資産を一纏めにしたものだよ。この世界では使えないけど、通販でポイントに変換できるから活用してね。思ったより貯めこんでいて驚いちゃったよ。それと本を開くと魔法の使い方が分かるよ。最後に、ガチャの能力はすぐに使用してね。初回は十連ガチャができるようにしたからね。装備はきちんと手に入るから。それじゃあこの世界で悔いなく生きてみてね。 神様より』


 手紙を読み終えると、手紙はなぜか燃えて灰になってしまった。

 俺は驚きながらも手紙には感謝した。ステータスの確認など頭からすっかり抜け落ちてたからだ。

 とりあえず、感謝をしつつ本を開いてみる。


「はぁ!?」


 俺は思わず声を上げて頭を押さえる。痛いわけではないのだが、色んな知識が頭に叩き込んれる感じで凄い変な感覚があった。

 だけども違和感もすぐに収まり、魔法に関する知識や武術の知識がスッと溶け込んでくる感覚がある。試してみたい気持ちもあるが、まずはステータスを確認しておくか。


「え~と、念じるだけでいいんだよな」


 頭の中でステータスと念じると、目の前に透明なプレートが現れた。そこには俺の情報が載っていた。


 名前:ジュン

 年齢:二十歳

 種族:人間?

 状態:普通

 武術適性:体術 棒術 短剣術

 魔法適性:水魔法 風魔法 感覚魔法 幻魔法

 その他:鋼の心 通販 ガチャ

 従魔:なし


 …苗字が消えているし若返っていることも気になるが、人間?って何だよ。普通の人間じゃない可能性があるのか俺は。


 少しの間悩んだのだが、どうしようもないのでガチャを引くことにした。


 ガチャはステータスのガチャの欄から行けるようだった。ガチャを選択すると『ガチャを使用しますか? はい いいえ』と表示されたので『はい』を選ぶ。するとステータスプレートにガチャの機械の映像が流れる。ついでに十連ガチャと表示されていた。

 

 ゲームの演出のようにアイテムが表示されていく。十個すべて排出されるとゲットしたアイテムと説明が書いてあった。


 名前:嵐舞(如意棒)

 風と水の魔力を秘めた棒。風と水の魔法の威力を上げ、自身の意思によって伸縮が自在。


 名前:調伏の破剣(短剣)

 呪いや状態異常から身を守る。また呪いを強制的に解呪することが可能。


 名前:風鳥の短剣

 風魔法の威力と移動速度を上げる。


 名前:ブラッドダガー

 血をため込んで魔力や体力に変換できる。


 名前:ソウルイーター(大鎌)

 霊体や魔法も切り裂く大鎌。魔力を込める事によって鋭さが増していく。使用者の魔力も上昇させる。

 

 名前:戦装束(男性用)

 物理・魔法耐性を高め、状態異常や呪いに強い耐性を持つ。また、常に一定の温度を保ち水中でも呼吸や活動が可能。


 名前:不死鳥のドレス(女性用)

 不死鳥の力が宿った服。物理・魔法耐性が高い上に状態異常や呪いにも強い。装備することで常時体力が回復しケガも治っていく。


 名前:清潔の指輪

 指輪を付けて魔力を込めると対象の汚れを落とすことができる。


 名前:修復の指輪

 指輪を付けて魔力を込めると対象物を修復する。修復する物によって使用される魔力は変わってくる。


 名前:隠れ家のオーブ(温泉宿)

 壊すことによって隠れ家の能力を得られる。自ら意思で隠れ家の入口の開閉ができる。

 

 …神様ありがとうございます。

 俺は心から感謝をした。強そうな武器や防具に加えて便利なアイテム、特に隠れ家なんて最高のサバイバルアイテムじゃないか。不死鳥のドレスが着物ドレス風なのと、ソウルイーターが大鎌で適性が無いのが残念だが十分に当たりだ。


 アイテムは自動的に収納されているようだったので、まずは“隠れ家のオーブ”を取り出してみる。早速オーブをを壊して能力をゲットする。

 説明通りに念じてみると黒い渦が現れた。これが入口なのだろう。渦の中を通り中に入ると入口を閉じる。


 目の前には二階建ての旅館が建っており、桜もキレイに咲き誇っていた。俺はしばらくこの風景に見とれてしまっていた。


 地球でこんな場所があったら桜の時期には予約で一杯だろうなと思いつつ旅館の中に入る。

 入り口には見取り図が置いてあり、一階には温泉・大広間・食堂・厨房と客室が四部屋。二階は客室が六部屋あるようだ。後はルーフバルコニーになっていた。

 ちなみに景色は、桜・海辺・紅葉・雪など選べるようだ。いやー、魔法って何でもありだな。


 とりあえず部屋を確認しに行く。部屋は十畳ほどの和室と洋風のベッドルーム、それにリビングダイニングキッチンが付いている。ベッドはクイーンサイズが二つあるのだが何かの当てつけだろうか?

 俺は独り身なんだけど。…いや、きっとこの世界で出会いがあるって事だよな。そうじゃなきゃ泣くぞ。


 ちなみに風呂もトイレもしっかり付いている。しかも風呂は檜風呂と露天風呂までついている。キッチンスペースはコンロと水道があるだけで他の物は何も無い。冷蔵庫などを揃えてもいいが今は別にいいだろう。

 庭も手入れされており、庭園のように手入れされている風景が見られる。恐らくだが、紅葉や雪にしたらここも変わるのだろう。


 一階の他の部屋を見て回るが作りはどこも同じだった。二階の部屋も確認したがやはり全て同じになっており変わりは無いようだ。ただ、部屋は建物の大きさに比べて部屋は広くなっていると思う。この辺は魔法のおかげかもしれない。

 そして俺は二階に上がるのも面倒だから一階の一番近い部屋を使うことにした。


 次は大広間へと移動する。大広間は五十畳程の広さだ。広々としており宴会もできるとは思うのだが、俺以外誰もいない状況では使う予定は無さそうだ。食堂も五十席あったが、いつか席が埋まる日が来るのだろうか?隣接している厨房も、地球のような作りで広くて立派なのだが、こちらも使う予定な無さそうだった。…だんだん悲しくなってくるな。


 最後に温泉を確認しに行く。正直ここが一番楽しみだ。見取り図でもかなりのスペースを占めているし、色んな種類がある可能性が高い。部屋のお風呂も立派だったので期待が大きくなる。


 温泉の入口に着いて気が付いたが、男女は特に分かれていないようだ。俺しかいないから別にいいけど。


 脱衣所は温泉のように籠が並んでおり懐かしく感じる。

 よく見ると効能も掻かれている。疲労回復・美肌効果・リラックス効果・各種病状改善・魔力回復か。温泉によって動脈硬化とか皮膚炎とか色々あったけど、魔法の世界だからか一纏めにされているみたいだな。魔力の回復もあるしな。

 

 扉を開けて中へと入る。


「おー、すげぇな」


 中に入ると思った以上だった。室内には普通の温泉以外にジャグジーバス・水風呂・檜風呂がある。勿論サウナ付きだ。屋外にも露天風呂以外に寝湯・立ち湯・打たせ湯・壺湯などがあった。

 嬉しかったのだが、風呂よりも衝撃的な事があった。脱衣所では気が付かなかったが、浴室内の鏡には知らない男性が映っていたのだ。

 いや、俺なんだろうけど俺はこんな顔立ちはしていなかったはずだ。若返ったとか、そういうレベルではない変化だ。ただ、元の顔よりイケメンになっていたのでラッキーと思うことにした。


 せっかくの温泉なので今すぐ入りたいと思ったが、入浴すると今日は外に行かなくなりそうなので一度部屋に戻る事にした。


「それにしても、隠れ家じゃなくて旅館としてやっていけるんじゃないか?」


 部屋に置いてあるイスに座ってそんな事を考える。温泉が充実しているし、部屋も立派な物だ。問題点と言えば、温泉が男女で別れていないことくらいだろうか。美肌効果を前面に押し出して女性客でも集めるか?


「って、こんな事を考えても仕方がないな。それよりも通販の能力の確認が先だな。え~と、この通帳をポイントに変換できるんだよな」


 通帳を取り出すと神様銀行と書かれている。中には二千五百万の預金が入っていた。…うん、地球にいた時の全財産を集めたらこれくらいかもしれないな。

 収納と念じると通帳は目の前から消えた。そしてステータスプレートを開くとアイテムの欄があり、確認すると通帳が入っていた。そして通帳をポイントに変換する。


「ラッキー。そのままポイントに変換されたぞ」


 これでポイントは二千五百万になった。ついでにステータスプレートから通販にアクセスする。検索機能などがあったので、適当に食料品を検索してみた。意外だったのが定食や出来立てのラーメンや天ぷらなども売っていた。値段もお手頃価格で極端に高いという事もない。


「試しに買ってみるか」


 今はまだ朝なので、洋風朝食セットAを頼んでみた。注文した物は一度収納されているようなので、改めてそこからテーブルの上に取り出してみる。


「まだ温かいな」


 洋風朝食セットAはトースト・サラダ・ソーセージ・スクランブルエッグ・コーンポタージュだ。どれも温かい。


「いただきます」


 食べてみると味も中々だった。少なくともコンビニやスーパーで売っている食料品程度には美味い。


「便利だな。ログハウスなんかも組み立て済みの物が買えるみたいだしな。…うん?機能の追加なんてあるのか」


 食べながら通販の機能を確認すると、ロックされている機能が六つあった。一つ目は収納した物を消去できるゴミ箱の機能。二つ目は収納した物の説明を見られる鑑定の機能。三つ目は収納した魔物などを部位事に切り分ける解体の機能。四つ目は装備を瞬時に変更できる着せ替えの機能。五つ目は収納量の上限を無くす、無限収納の機能。六つ目は収納した時の状態を維持する時間停止の機能だ。

 全部解除するには一千万ポイントかかるのだが、余裕があるうちに解除することにした。ゴミ箱はいらないとも思ったが、通貨以外にもゴミなどの無価値なものはポイント変換できないため、消去の機能は案外必要なものだった。


「これなら生活の心配はいらないな」


 食べ終わったゴミは収納してから消去する。部屋自体は自動清掃機能が付いているようで特に何もしなくても良さそうだ。


「次は探索して来るかな」


 出掛ける前に戦装束に着替え、嵐舞とブラッドダガーを身に着けてみた。正直ゲームのキャラクターのような格好で抵抗はあるが、安全のためには仕方が無い。昔の姿なら違和感があっただろうけど、今の姿だと似合っているしな。

 入ってきた場所に行くと再び黒い渦が現れた。周辺を確認できるようで魔物の有無を確認してから森の中に戻った。


「さてと、まずは川沿いに進んでみるか」


 森の中を歩くのは久しぶりだ。最近の移動は車だったからな。歩くのは近場のコンビニくらいだから懐かしい。


 しばらく歩いていると、前方から吹く風から嫌な気配を感じた。


「何だこれは?風魔法の影響か?」


 その場に止まって考え事をしていると徐々に嫌な気配が近づいている気がして近くの草むらに隠れてみた。すると


「ギャギャ」


「ギャー」


「ギャギャー」


 先程まで俺がいた場所には三体のゴブリンが現れた。嫌な気配はこれだったのか。

 一体のゴブリンの手には角の生えたウサギがいる。ゴブリン達は獲物を手に入れてご機嫌なようだった。


 仕留められるのかな?


 得たばかりの知識から戦う手段を考える。

 まずは、魔力を体に巡らせて身体強化をかける。これで近寄られても何とかなるだろう。そして最初は魔法を使ってみたいので、一体のゴブリン目掛けて風の刃を飛ばしてみる。


「ギャ!?」


 …結構あっさりだな。

 風の刃を受けたゴブリンは胴体と首が分かれてしまった。他の二体は突然の出来事で固まっていた。

 その隙に俺はゴブリンに近づき如意棒を振るった。


「!?」


 攻撃を受けたゴブリンは声も出ず吹き飛ばされ大きな木に激突してバラバラになった。最後のゴブリンにはブラッドダガーで首を跳ね飛ばした。


 あっさり勝ってしまった。いや、それよりも魔物とはいえ殺すことに躊躇いが無かった自分に驚きだ。


「とりあえずポイントになるか確認しないと」


 ゴブリンを収納して解体してみたがどの部位も価値が無かった。ただ、魔物の体にある魔石だけは一応価値があったのでポイントに変換しておいた。一つ五百ポイントだったけど。


 戦闘も終わって再び歩き始める。たまに嫌な風を感じるとその方向には魔物がいるようなのでなるべく避けて歩いていた。


「そろそろ昼食にするかな」


 大分歩いたので近くの大きめの石に腰を掛けた。隠れ家で食べるのもいいが、ピクニック気分で食べるのも良さそうなので外で食べることにした。もちろん、嫌な気配がしたらすぐに隠れ家に入る予定だが。


 天ぷらなどが入ってボリュームのある弁当とお茶を準備して昼食をとり始める。


「やっぱり海老天は最高だ」


 好物の天ぷらに舌鼓を打つ。外で食べる解放感もあって気持ちが良い。

 しかし、景色を見ながら箸を動かすと箸が弾かれてしまった。


「何だ!?」


 驚いて弁当を見ると、そこには一匹のリスが俺の弁当を食べていた。


「…」


「…」


 俺とリスは無言で見つめ合う。リスの方は食べる手を止めることは無かった。

 何となく俺はおにぎりを通販で購入し、張り合う様に食べてみた。


「キュ!?」


 リスの視線がおにぎりに向いている。コイツ食い意地張りすぎじゃないかと思うが、小動物がじっと見てめてくる姿は可愛いとも思ってしまった。


 おにぎりを食べ終えてお茶を飲むと、俺にも飲ませろと言うように手を出してきた。

 キャップにお茶を注いで渡すと、勢いよく飲みだす。飲み終わると満足した顔でお代わりを要求してきた。


「お前神経図太いな」


「キュ?」


 結局最初に購入した弁当は半分以上このリスが平らげてしまった。試しにおにぎりをまた購入して渡すとそれも遠慮なく食べ始める。

 

「キュー♪」


 渡したおにぎりを食べつくすと満足したようだった。そのままどこかに行くかと思ったが、俺の肩に登ってきて動かなくなった。


「俺は森の外に行くんだが、お前も一緒に来るのか?」


「キュ♪」


 どうやら付いてくるようだ。これは従魔になるんだろうか?

 歩き始めようとすると、俺の頬っぺたを引っ張ってリスがストップをかけてきた。


「どうした?」


「キュ!」


 自分の方を指さし何かを訴えている。


「…」


「…」


 しばらく無言で見つめ合う。その間も相変わらず自分を指さしている。


「…名前か?」


「キュ♪」


 しばらく悩んだが正解だったらしい。つーかこのリス頭いいよな。会話が成立している。

 しかし名前か何がいいかな。…食い意地張っているし、暴食のベルゼブブからとってベルとかどうだろう?


「ベル。ベルでどうだ?」


「キュ♪」


 気に入ったようで満面の笑みを見せてきた。それと同時にベルの体が一瞬光った。


「は?」


 今の現象で思いつくことは名前を付けたことだ。これが従魔の契約なのか?

 ステータスを確認すると従魔の欄にベルの名前があった。俺の推測は当たりらしい。さらに俺の能力に、従魔召喚と従魔召還が追加されていた。


「よろしくなベル。俺はジュンだからな」


「キュー」


 改めて俺とベルは森の中を進み始めた。

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