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ブックメーカー ~異世界では好きに生きてみたい~  作者: 北村 純
初めての異世界生活
10/92

トラブル

 馬車に揺られながらベル達と外を見ていると辺りが騒がしくなってくる。イケメン集団を見て何か話をしているようだ。

 そんな中一人の女性が声を上げた。


「あのぉ“光の剣”の皆さまですよねぇ」


「そうだよ。僕たちの事を知っているのかい?」


「やっぱりぃ。私シャイニー様の大ファンなんですぅ。あ、私はクミンって言いますぅ」


「知っていてくれて嬉しいよ」


「“光の剣”の皆様は有名ですからぁ、知らない人はもぐりの冒険者ですよぉ。ほらぁ、他の皆さんも注目してますよぉ」


 俺はもぐりの冒険者だったのか。それにしても、このクミンって女の話し方どうにかならないかな。

 わざとらしすぎてイライラしてくる。


「おい、シャイニー丁度いいんじゃねぇのか」


「そうだねアークフット」


 突然シャイニーが馬車の中で立ち上がり、周りの冒険者を見回す。

 一体何が始まるんだ?


「みんな聞いてくれ。僕は“光の剣”のリーダーをしているシャイニーだ。大規模討伐は皆の連携が大切になる。皆で自己紹介をしようじゃないか。まずは僕から話をさせてもらうよ。それと、実は僕たちはクランを作ろうと思っているんだ。僕たちの自己紹介を聞いて入りたいと思ったらこの後に話しかけて欲しい」


 周りがざわつき始める。「シャイニー様と一緒のクランに入れるの」、「俺絶対入りたい」などと聞こえたりする。


「僕は火・水・風・土・雷・氷・光の魔法を使う。それにアイテムボックスと身体能力・魔力向上の能力を持っている。武器は剣だね。接近戦が主体だけど魔法で遠距離からでも戦えるよ。そして…」


「初めまして皆さま。私は光の精霊のアンリと言います。よろしくお願いいたします」


 馬車の中に天使のような姿の女性が現れた。周りの冒険者たちはその存在に目を丸くしていた。


「アンリは光の上位精霊で僕の従魔なんだ。普段は天使の姿だけど竜の姿にもなれる頼りになる大事な仲間だよ」


 そう言ってシャイニーは精霊の頭を撫でる。撫でられた精霊は照れているのか顔が赤くなっていく。俺達は何を見せつけられているのだろうか。


 “光の剣”の連中は気にすることなく話を続けていく。


「俺はアークフット。“光の剣”の副リーダーをしている。武器はこの槍だ。魔法は水・風・雷・闇を使うが遠距離はあんまり得意じゃねぇな。速さを活かして戦うのが得意だな。それと俺の相棒はウイングレオだ。デカいからここでは出せないがな」


「ダントンだ。武器はハルバード。魔法は火・水・風・土だ。力勝負なら俺に任せろ。それと防御の魔法を得意としている」


「ボクはロイ。武器は短剣だけど護身程度だね。火・水・風・土・雷・氷の魔法を使えるよ。基本的には遠距離からの魔法攻撃で戦う」


「私はエリック。武器はチャクラムと言う投擲武器ですね。魔法は水・土・光・聖です。回復による援護がメインですね」


「以上が僕達“光の剣”のメンバーだ。今この世の中は安定してるとは言えない。だからこそ僕たちは平和のために弱い立場の人のために活動している。でも僕達だけじゃ時間がかかってしまう。それでみんなの力を貸してほしいと思っているんだ。よろしく頼むよ」


 “光の剣”の連中が紹介を終えると、周りの冒険者たちは羨望の眼でシャイニー達を見ている。

 この分だと結構な人数が入団しようとするだろうな。いや、入信と言った方が正しいかもしれないな。


 その後は一人ずつ自己紹介しているが、“光の剣”にアピールしているのがよく分かる。なんか面接をしているみたいだ。

 そして聞いていて思ったのだが大抵の冒険者は魔法を一つか二つしか使えないようだった。しかも火・水・風・土・雷の五つのどれかだ。

 シャイニー達は最低でも四種類の魔法を持っており五属性以外の魔法も使える。期待されているのはその辺も関係があるのだろう。


 その後も自己紹介は続いていく。


「私はぁクミンって言いますぅ。武器は杖なのでぇ戦うのは苦手ですけどぉ、水・風・土・聖魔法を使えるんですよ。防御と回復が得意でぇす♡あ、私は是非入団したいでぇす♡」


 俺やっぱりコイツ無理。顔は可愛いと思うし、スタイルもかなりいい。でも話し方とか性格は絶対に合わないだろうな。だって、コイツ自己紹介を聞きながら「十点」「論外」「はー、Dランクじゃ碌な男いないわね」とか言ってたし。


 そして次は仮面の冒険者の番だったが何も言わない。

 それを見てシャイニーが口を開く。


「君は確か元Aランクのシェリルだったよね。呪いで魔法が使えなくなり降格したと聞きましたが」


「…」


「何も言わないんですね。貴女の噂は聞いていますよ。冷酷で卑怯な手段も厭わない。だから仲間たちも貴女を助けなかった。反省するなら僕のクランに入れて呪いを解く手伝いはしますが、反省する気が無いなら入れる気はありません」


 随分勝手な考えだな。あの人は入団したいとも言ってないのに。むしろ入る気ないからあんな態度だと思うけど。


 言う事を言ったからか興味がなくなったようで次の冒険者に自己紹介をするように促した。そして俺の順番となる。

 入る気は無いけど自己紹介くらいはしておくか。


「俺の名前はジュン。武器は棒と短剣を使い、魔法は水と風。近距離でも遠距離でも戦える。それと従魔のベルとコタロウ。ベルは探知能力に優れているし、コタロウは光の魔法を使えるんだ」


 嘘は言ってないよな。全部言う必要は無いだろうし。

 

「そうかやっぱり君がジュンか、ちょっと聞きたいことがあるけどいいよね」


 シャイニーが俺に話しかけてきた。つーか俺の事を知っていたのか。正直スルーしてくれた方がありがたいけど。


「何ですか?」


「君は何でそんな従魔を連れているんだい?探知能力や魔法を使えるって言っても大したことないだろ。探知系の能力は使える人は結構いるし、光魔法を使えると言ってもアンリほどじゃないだろう。小動物系の魔物は好きな人が多いから、君は人気を集めるるために従魔を利用しているのかい?」


 シャイニー含めた“光の剣”の連中は俺を蔑んだ目で見ている。

 コイツ等は俺に恨みでもあるのだろうか?


「言っている意味が分からないな。俺は探知能力も光魔法も持っていない。それを持っているだけで一緒に組んでいる理由になるだろう。それに、コイツ等とは縁があって出会ったんだ。今じゃもう家族みたいな感じだしな。まあ、ベル達は人懐っこいから人気があるのは確かだ。だけど人気を利用するなら冒険者以外の職に就く」


「はっ、だったら今すぐ転職しろや。テメェみたいな中途半端な冒険者もどきが一番嫌いなんだよ。俺達は命がけで魔物を倒しているんだ。それを遊び感覚でやっているんじゃねえよ!」


 アークフットが俺に詰め寄ってく胸ぐらを掴んで脅してくる。

 本気で悪臭玉を投げつけてやろうかと思ったが、被害がデカくなるのでグッとこらえた。

 

「気持ちは分かるけど暴力はダメだよ」


 シャイニーが興奮しているアークフットを諌める。アークフットは手を離したが敵意の視線が強くなっている。

 え?本当にコイツ等何なんだ。


「すまなかったね。でもアークフットの怒りは最もなんだよ。君は従魔の容姿を使って人気を集めているようだけど、そんな事をされるとまっとうに冒険者として活動している僕たちにとっては迷惑なんだ。討伐の依頼に容姿は何の関係も無いんだよ。その従魔が足を引っ張って他の冒険者に迷惑かけたらどうするんだい?」


 嫉妬か?人気を独り占めにでもしたいのかもな。


「君はその従魔を手放した方が良い。君は魔物をキレイに倒すことは上手いようだから、従魔を手放すなら僕達のクランに入る事を許すよ」


「クランに入りたいなんて誰が言った?。入るわけないだろ。そもそも大切な家族を手放すわけないだろアホ」


 即答した。“光の剣”の連中が憎々しく俺を見てくるが、俺も同じような表情をしていると思う。


「仕方がないね。活動の仕方は個人の自由だからこれ以上は何も言えないけど、君は僕達のクランに入らないでくれ」


 だから入らないって今言ったよね俺。もう面倒すぎるぞコイツ等。

 俺達はうんざりしながら時が過ぎるのを待った。


 しかし馬車に揺られる事数時間。シャイニーによる演説が行われ眠る事すらままならない。仮面の冒険者も表情は見えないが、うんざりした雰囲気を感じられる。

 そうしている内に馬車が止まる。すると、ギルド職員の人が馬車に入ってきた。


「一度昼休憩を取ります。馬も休ませますので二時間後に出発いたします」


 二時間か結構時間があるな。


「皆下りよう。広いところでゆっくり栄養補給だ。食べられるときに食べるのも冒険者の務めだよ」


 シャイニーに続いてどんどん人が降りていく。

 降りていく人たちの眼は俺を見下していた気がする。


「まあいいか。俺達も昼飯を食べるか」


 外に出てアイツ等に出くわすよりは馬車で食べた方が良いと思い昼食を取り出す。


「ほら食べな」


「キュ♪」


「たぬ♪」


 今日の昼食はカツサンドとフルーツサンドだ。

 ベルとコタロウも美味そうに食べている。すると何かに気がついたコタロウがカツサンドを一つ持ち、歩き出した。


「たぬ♪」


 持っていった先は仮面の冒険者だった。干し肉を口にしていたがコタロウの行動に戸惑っているようだった。


「たぬ♪」


 そんな事は気にせずしきりにカツサンドを勧める。

 コタロウの事は邪険にできないようで困った様子で俺を見てきた。


「えーと。コタロウが食べて欲しいみたいなのでよければどうぞ」


「いいのか?ならば遠慮なくいただくぞ」

 

 初めて声を聞いたが女性の声だった。女性があの大鎌を持っていたんだなと思うと感心してしまう。

 女性は手を伸ばしてコタロウからカツサンドを貰い口に運ぶ。


「美味いな」


 少し驚きの含んだ言葉が聞こえた。

 女性はそのままカツサンドを食べ終える。すかさずコタロウはフルーツサンドも持っていき差し出した。


「む!?」


 先程よりも大きな声が出ていた。やはり甘さに驚いたのだろうか。

 フルーツサンドもすぐに食べ終えていた。


「美味かったぞ。昼食の礼として一つ忠告だ。“光の剣”の連中はギルドの職員とのつながりを持っていると聞く。冒険者を続けるなら、それ以上のつながりを持つか他の街に行くのが手っ取り早いぞ。アイツ等は変な野心を持っているから相手にするのは面倒だぞ」


 そう言うとすぐに仮眠に入ったので詳しい事は聴けずに終わった。

 俺達は眠りを妨げない程度に遊んで時間を潰していた。


 時間が経つと外に出た連中が戻り始める。


「君達は何を食べていたんだい?」


 戻ってきての第一声がこれだ。

 話すのも面倒だが少しは付き合っておくか。


「パンと肉と果物だな」


「へぇー、黒パンに干し肉にドライフルーツか。よくある保存食だね」


 余計な言葉が付いているな。役に立たない変換機能付きか。

 俺達が食べたのは保存食ではないんだがな。


「僕はアイテムボックスを持っているからね。新鮮な肉や野菜に温かいスープを皆で食べたんだよ」


 何が言いたいんだろうな。そもそも、何日も旅をしているならともかく、出発一日目なら普通の飯を食べていると思わないのだろうか?


「よければ食べるかい?」


「遠慮しておく」


「本当は食べたいんじゃないんですかぁ?我慢はよくないですよぉ。意地を張らずにシャイニー様たちの言う通りにすればぁきっと成功につながりますよぉ」


 この喋り方どうにかしてくれないかな。


 これがガンツさんに食べるかと聞かれたら喜んで食べるけどな。さっきの今でお前達から頂くわけないだろう。食べたばっかりだし。

 いや、食べると言ったらどんな反応したんだろ。ちょっと気になる。…でも面倒だから止めておこう。


「食べたばかりなのだから、欲しいわけないだろ」


「強がってんな。そんな貧相な飯じゃ力がでないだろ。足手まといも連れているんだから、体力だけでも付けた方がいいんじゃねぇのか」


「足手まとい?誰の事だ?」


「そのリスと狸に決まってだろ。街での人気稼ぎのために弱小従魔を連れるなんて大変だよな。処分するなら俺の従魔の餌にしてやるぜ。特別に大銀貨一枚でも出してやろうか」


 アークフットが挑発してくる。その顔はニヤニヤしている。

 

「見る目がないな。ベルもコタロウも優秀だ。処分なんてするわけないだろ。人の事を気にする前に自分の事に集中しておけよ。他人の従魔の存在で集中できなくなる二流以下の冒険者なんだからよ」


 売り言葉に買い言葉。俺も“光の剣”に対してイライラが募ってくる。


「はぁ!?ハッキリ言うけど迷惑なんだよ。お前みたいなのが人気がある理由が分かんねぇよ!」


 この程度で怒りだすなんてAランクを期待されている割には小さい奴等だな。…あの店の店長のリップサービスだったのか?


「塩漬け依頼を受けたり、納品素材の質が高いからじゃないのか。素材は高品質以上で収めているからな」


「弱い魔物を無傷で倒して自慢すんなよ。強い魔物を倒してこその冒険者だろ」


「強さだけ求めるなら武道大会にでも行ってきたらどうだ。それに世界の安定を図るなら国の要職になるのも一つの手段だぞ」


 そのままアークフットと睨み合う。

 ベルと見つめ合いになった時とは違い不快感が半端ない。 


「おい、ここで問題が起きていると聞いたが本当か?」


 睨み合いの途中で一人の男が入ってきた。それは今回の討伐のリーダーを務めるディランさんだった。


「ディランさんですか。いえ問題など起きていませんよ。ただ、今回の討伐に相応しくない者が紛れ込んでいましたので」


 睨み合っている俺とアークフットの代わりにシャイニーが答える。シャイニーはさっきまでとは違う態度でディランさんに接している。


「…今回の討伐のメンバーはギルドが念入りに選抜したんだが、相応しくないのはどいつだ?」


「ジュンですよ。従魔も戦闘に向いているとは言えませんし、実力には疑問があります」


 シャイニーの言葉を聞き俺を一度見てくる。


「ジュンは売った素材の中にCランクの素材も混じっていた。通常の依頼においても品質が高い事が評価されている。品質に関しては高ランクの冒険者より上だぞ」


 街に来るまでの魔物の中にCランクも混じってたみたいなんだよな。提出したら無茶するなと怒られたのはいい思い出だ。


「ですが従魔は足手まといでは?途中で魔物に食べられる可能性もありますし」


「魔物を侮る考えの方が危険だ。スライム相手でも油断して亡くなる冒険者はいるんだぞ。この従魔達の能力は知らんが、妖精リスは怒らせると恐ろしく狡猾で厄介だぞ。格上の魔物や高ランクの冒険者が犠牲になる事もある。魔狸も頭が良く変化を活かして惑わしてくる。小さいからと言って弱いと思うな、力の大小だけが強さじゃない。それに食われたら主人の責任だ。俺達が気にすることではないな」


「…ですが僕はコイツの実力に疑問しかありません」


「それならお前達の担当場所は離しておこう」


 ありがとうございます。是非そうしてください。


「それでは不十分です。コイツと戦わせてください。それで僕が判断します」


「討伐前に冒険者同士で戦うとかバカかお前は。それにジュンはDランク、お前らもDランクだ。同じランク同士なのに上のつもりなのか」


「当たり前だろ。俺達は普通の冒険者とは覚悟も実績も違う」


 段々とディランさんも苛立ってくるのが分かる。

 話すだけ無駄だと思ってきたのか、俺の方に目を向ける。


「おいジュン。お前は何か言いたいことはあるか?」


「馬車を変えて欲しい。今の状況でコイツ等と同じ馬車は難しい」


「それがいいな。空いている馬車を探してくる。ジュンは馬車から降りろ」


 ディランさんに続いて馬車を降りるとシャイニー達もなぜか降りてきた。

 勘弁してくれ。


「ディランさん。やはり納得がいきません。戦わせてくれないなら“光の剣”はこの依頼から手を引いて、独自で行動させてもらいます。この馬車の冒険者はジュンとシェリル以外は“光の剣”の入団希望者ですからね」


 変な事を言い放ちやがった。それでも全員自信満々だ。ここまでくると、洗脳や催眠の能力を持っているのではないかと疑ってしまうぞ。

 

 大きい声で喋ったため、まだ休憩中の周りの冒険者たちから注目を集めている。


「じゃあ帰れ。緊急依頼を私的な理由で放り出すから降格もしくは除名と違約金は発生するがな。俺個人としては緊急依頼中に小さい事を気にするお前達の方が邪魔だ」


「な!?」


 拒絶の言葉にシャイニー達は驚きを隠せていない。

 本当にコイツ等がAランクを期待されているのか疑問しかないな。


「お待ちなさい」


 ギルドの制服を着た女性が現れた。その女性を見た瞬間にシャイニーの表情に余裕ができたのが目に入った。


「リアネか、何のようだ」


「ディランさん。討伐のリーダーといえどそんな勝手は許しませんよ」


「俺は許可しただけだ。手を引くと言い出したのは“光の剣”だ。中途半端な奴がいる方が危険だろうが」


「彼らはワイバーンを倒した実績がある実力者です。戦って納得するなら、彼らの意見を尊重しましょう」


「お前もバカか。今この時に冒険者同士で戦うメリットがない。冒険者同士で争おうとする奴の方がいらんのだ」


「ディランさん。Bランクの魔物を倒した方々とDランクに上がったばかりの冒険者では前者の方が優先されます。“光の剣”が手を引いたら戦力が落ちるのは確実です。ギルド命令として戦ってもらいます」


 この女嫌い。絶対シャイニーと個人的な知り合いだろう。


「リアネさん待ってください。私も戦いには反対です。ギルドが冒険者同士の争いを助長する真似は控えるべきです」


「メリル、貴女の意見は聞いていません。いつから私に命令できるほど偉くなったのですか。それにこの場において“光の剣”は重要な戦力です」


 メリルさんも来ていたのか。

 それにしても当事者なのに俺空気じゃないか。


「改めてギルドとして命令します。“光の剣”のリーダーであるシャイニーとDランク冒険者ジュンは試合を行いなさい。二人とも異議はありませんね?」


「僕は無いですよ。リアネさんありがとうございます」


「俺はある。メリットが何もない。俺が勝った場合の条件をつけさせろ」


「は?」


 想像と違う返答されたのか、本気で驚いた表情をしている。

 正直俺はギルドを除名になっても何も困らない。生活には問題ないし、身分証は商業ギルドで作って何か納品すればいいだけだ。


「ちなみに何が望みなんだ?“光の剣”の撤退か?」


 ディランさんの質問に俺は満面の笑みで答えてみた。


「有り金とアイテムが全部欲しい」


「あ、貴方は何バカな事を言っているのですか!!」


「負けると思っているのか?」


「ワイバーン倒しているんですよ。そんなことある訳ないでしょう」


「じゃあどんな条件でもいいじゃん」


 言い返してこないがリアネは睨んでくる。


「ジュン。気持ちは分かるがそれは認められない。賭ける物は同等でないと」


「そうか。ちなみに俺が負けて帰ることになると罰則はあるのか?」


「こんなケースは無いから何とも言えんが、緊急依頼から逃げた場合はランク降格か除名処分。それと罰金だな。ランクによって罰金額は変わるがDランクでも金貨一枚以上は確実だ」


 罰金百万以上って高すぎないか。かなりの罪になるじぇねえか。


「それなら、俺が勝った場合は俺に金貨三枚を支払え。足りない場合は装備やアイテムを貰うぞ。それからこんな事は御免だから、“光の剣”とリアネという職員はディランさんの決定に従ってくれ」


「良いだろう。その条件で戦おうじゃないか」


「シャイニーさん」


「リアネさん、すみません。僕の力不足で巻き込んでしまって。でも勝つので安心して見ててください」


「はい///」


 コイツ等何やってんだ。


「ジュン。僕からも条件を出させてもらうぞ」


「ダメに決まっているだろ。異議はないんだからな。戦ってやるだけありがたいと思え。それに人の事を呼び捨てにするなよシャイニー」


「な!?」


 表情がどんどん変わってくる。


「君も呼び捨てにしているね。馴れ馴れしいよ。それに勝つ自信があるなら条件はどうでもいいんじゃないか。ああ、負けると思っているのか。それなら仕方がないね」


「勝負に絶対はない。勝つつもりで戦うのは当然だが、負けた時の被害を抑えるのは大事だろ。油断や慢心で人は死ぬんだから、相手に有利な条件をつけさせないのは当然だ」


「はぁ、君と喋るのは飽きたよ。さっさと戦うよ」


「いや、お前から喋り出したんだろ。人のせいにするなよ。そして戦う前に書類を作るからサインしろよ」


 こうして険悪な雰囲気になり俺はシャイニーと戦うことになった。

 …いやー勢いって怖いね。自分の性格が分からなくなってきたよ。

 本日はここまでになります。明日以降は20時に更新していきます。


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