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ブックメーカー ~異世界では好きに生きてみたい~  作者: 北村 純
初めての異世界生活
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プロローグ

 以前書いて消した作品を大幅に変えて作りました。見苦しいと思いますが最後まで見てくれたら嬉しいです。

 代わり映えのしない毎日。

 三十五才の会社員、北村 純の日常はそんなもんだ。

 平日は会社で仕事をして、休日はジムでトレーニングをしてから家でゆっくり過ごす。

 実家から離れた場所で生活して恋人もいない。一人暮らしを満喫している。

 世界的な感染症が広がる前は飲みや温泉に行っていたが、最近は自粛の雰囲気で中々行けず金だけが貯まっていく。


 やる事もないので自宅での暇潰しにネット小説をよく読んでいる。内容はよくある異世界転生ものだ。

 多分現実に疲れているんだろな。チートで好き勝手をしたり、順調に成功していく姿に憧れを感じているんだと思う。ハーレムやモフモフも正直羨ましい。

 だけども実際に行きたいかと聞かれると微妙だ。今の便利な生活を捨てて生きていける気がしない。食い物も口に合うのか分からないしな。現実に絶望しているわけでもないし、妄想する程度が丁度いいかもしれない。


 ふと時計を見ると昼の十二時を過ぎていた。料理は出来ない訳ではないが、面倒なので買っている冷凍食品を頂くつもりだ。

 冷凍食品も結構美味しい物が多くなってきているからありがたい。ただ、俺の好きな物はいつの間にか消えていることが多いのが残念なんだよな。


 電子レンジで解凍している間、適当な漫画でも読もうと思って本棚を探す。すると背表紙が真っ白な本がある事に気付いた。

 取り出してみると絵柄どころかタイトルも付いていない。こんな本を買った記憶は無い。


「…マジでなんだこの本?」


 俺以外誰も部屋にいないのについ声が出てしまった。

 厚みは普通の単行本程度で真っ白なこと以外は普通なのが逆に変に感じてしまう。


「気味悪いな」


 そう呟いて本を開いた時だった。


「君にはこっちに来てもらうよ」


 少年の声が耳と言うか脳に響いてきた。その声が聞こえたのと同時に俺の意識は途切れた。



 …ここはどこだ?


 目が覚めて周りを見てみる。目に映るのは真っ白な空間と困惑している人々だった。中には「異世界転生だ!!」や「ハーレムを作るぞ!」と息巻いている連中もいる。

 近くに高校生の集団がおり話が耳に入ってくる。話を聞く限りでは、俺と同じように真っ白な本を開いてここに来たようだった。他の人達も同じなのだろうか?


「まあ、考えても何もできないか」

 

 俺はその場に座り込んで周りの状況を只々見つめていた。

 それにしても、あそこで興奮している連中の言う通り、これが異世界転生なら俺は死んだのだろうか?それとも本に吸い込まれたのか?


 そんな事を考えていると、空間に声が響き渡った。


「皆ごめんね、待たせちゃったよね」

 

 その声は本を開いた時に聞こえた少年の声だった。

 声は上から聞こえた。視線を上に向けると、大きい光の球がゆっくりと下に降りてきた。


 そして光の球から民族衣装のような服を纏った少年が現れた。

 突然の出来事に皆が驚き固まってしまう。俺も非現実的な出来事に開いた口が塞がらなくなった。


「あれ?みんなどうしたの?もしもーし。もしかして僕に見とれちゃっている?」


 少年は笑顔で軽くウィンクをしてくる。


「ふざけんな!お前は何者なんだよ、つーかここはどこだよ!」

 

 少年の態度が癇に障ったのか、突っかかっていく男がいた。

 見かけは不良と言うよりはチャラ男と言う感じの男だ。制服を着ているし高校生だろう。

 男は少年の胸ぐらを掴んで威嚇している。

 俺はテレビや舞台でも見ているかのようにその光景を眺めていた。


「あー、そうだよね。ごめんね、いきなりこんな場所にいたら混乱しちゃうよね。今から説明するからちょっと落ち着いてね」


「はぁ!?ふざけんじゃねぇぞ!」


 男は切れていたが、少年は落ち着いていた。しかし、何を言っても通じない男に対して徐々に表情が変わってきた。


「うるさいな、今から話すって言ってんじゃん。そん態度を取り続けるなら…消すよ」


 少年は笑顔から一転、冷めた瞳と口調で男を黙らせた。

 俺は離れた位置にいるのだが体は震えている。周りを見ると皆同じように震えていた。

 チャラ男に至っては腰を抜かして呼吸も上手くできない状態だ。


「ごめんね、怖がらせちゃって。でも説明を聞いてくれないと何も進まないからね。質問があるなら答えるけどまずは僕の話を聞いてね」


 少年がチャラ男の顔を両手で包み、笑顔で話しかけると男は引きつった表情で何度も頷いた。

 情けなく見えるけど気持ちはよく分かる。怖かったよなあの距離は。


「それじゃあ説明するね。君たちは白い本を手に取ってここに来たんだけど、あの本はもうすぐ死ぬ運命の人の元に現れた物なんだ」


 え?


「原因は様々なんだけどね。だから僕は皆にチャンスを与えるためにここに呼んだんだよ。元の世界で死ぬ運命を変えることはできないけど新しい世界で生活させることはできるよ」


 少年は本当にさらっと説明した。

 周りの人達は呆然として意味を理解しきれていない。


 しかし、徐々に少年の言葉の意味を理解してくると、そこら中から阿鼻叫喚の声が聞こえ始めた。

 そんな中、俺は黙って成り行きを見守っていた。

 俺も頭の中は混乱していたのだが、周りがあまりにも取り乱していたので逆に冷静になっていただけだ。


「静かにしてね」


 少年が声を発して指を鳴らした瞬間に雷が落ちた。


 一瞬で静寂に包まれる。中には腰を抜かして尻餅をつく者もいた。

 この状態で冷静に物事を考えられる自分を褒めてやりたい。


「続きを話すよ。君たちには二つの選択肢がある。もうすぐ死ぬ運命を受け入れて地球に戻るか、異世界で新しい生活を送るかだよ」


 少年の言葉に対しての反応は様々だった。異世界という言葉に対して喜びや希望を見出だす者や、未だに死を受け入れる事ができず落胆している者などがいた。

 因みに俺は前者の方だな。戻ってもすぐに死んでしまうなら、異世界に行って生にしがみつきたい。両親や友人と会えなくなるのは心残りだけど。


「転生先はいくつかの世界にバラけるけど、どこも剣と魔法の世界だからね。最低限の知識と能力はあげるから安心してね」


「質問良いですか?」


 声のした方を向くと、イケメン高校生が手を上げている。…周りは女性だらけだし本当にこんな人間居るんだな。


「いいよ。何が聞きたいの?」


「聞きたい事は三つです。一つ目はあなたは一体どのような存在なんですか。二つ目は異世界でやるべきことはあるんですか。三つ目はなぜ私たちが選ばれたんですか?先ほどの条件だけだと該当者はたくさんいる気がしますが」


「一つ目は僕は神様だね。二つ目は特に何もないよ。世界を救っても良いし牛耳っても構わない。君たちがやりたい事をやっていいよ。三つ目は適当に選んでいるよ。今回は日本からにしたけど前回は他の国から選んでいるしね。他の世界から選んだこともあるよ」


「…分かりました、ありがとうございます」


 少年改め神様の返答を聞き、イケメンは考える素振りをしながらお礼を言った。

 今の返答に考える所などあるのだろうか?


「あの私も質問良いですか」


 今度はOL風の女性が質問をする。


「能力を貰えるってことですが、どんな能力なんですか?」


 能力大事。聞いてくれて感謝だな。

 出来ればチート能力を希望します。


「おっと説明していなかったね。ちょっとステータスって念じてみて」


 …ステータス

 言われた通りに念じてみると、目の前には透明なプレートが出現している。

 しかし、赤い丸が一つあるだけで他には何も書かれていない。


「確認したみたいだね。君たちのステータスプレートには赤い丸があるよね。そこを押せばランダムに能力が決まるよ。ちなみにやり直しは無しだよ。覚悟を決めて押してね」


 リセマラは無しか。頼む。いい能力よ来てくれ。

 俺は目を瞑ってボタンを押した。そして、恐る恐る目を開けて能力を確認する。


 名前:

 年齢:

 種族:

 状態:

 武術適性:体術 棒術 短剣術

 魔法適性:水魔法 風魔法 感覚魔法 幻魔法

 その他:鋼の心 通販 ガチャ

 従魔:

 加護:

 称号:


“体術”

 素手の武術が向上しやすくなる。


“棒術”

 棒を使った武術が向上しやすくなる。


“短剣術”

 短剣を使った武術が向上しやすくなる。


“水魔法”

 水の魔法が使えるようになる。


“風魔法”

 風の魔法が使えるようになる。


“感覚魔法”

 五感や痛覚、平衡感覚などを操作できるようになる。


“幻魔法”

 幻覚を操る魔法。五感に作用する。強い幻覚は身体に影響を与える。


“鋼の心”

 精神系の攻撃に対して強い耐性を持つ。逆境にも強くなる。


“通販”

 地球の商品を購入できる(銃火器類や兵器などは不可)。アイテムボックスの能力も兼ねている。購入にはポイントが必要になり、ポイントは収納しているアイテムを変換して得ることができる。なお、通貨をポイントには変換はできない。


“ガチャ”

 毎日一つランダムにアイテムが手に入る。低確率で十連ガチャになる。十連ガチャの場合はレアなアイテムが複数手に入る。ステータスプレートから使用する。


 結構いい能力じゃないか。特に通販が素晴らしいな。俺に商才があれば商売して大儲けとかもいいけどな。

  

「あ、そうそう。名前や年齢は転生先で変わるから今は見えないよ。他に質問はある?…無いみたいだね。それじゃあ早速だけど転生してもらうから。ああ、一緒にいたい人がいたらその人の近くに寄り添ってね」


 その言葉と同時に足下が光だした。慌てて誰かの近くに寄るものなどもいた。

 誰かと一緒の方が安心するのは分かるが、知らない人との行動もストレスがたまる気がするので俺はその場で佇んだ。


 そして、足下の光が全身を包むと、心地好い感覚ともに再び意識が遠のいた。



 誰もいなくなった空間に少年の姿をした神様は一人立っていた。


「さて、今度の人間たちはどんな物語を作ってくれるんだろうか?勇者や魔王になるのかな、それとも知識で革命を起こすのか。ハーレム?スローライフ?悪役令嬢?学園生活?何を選択するんだろう?」


 いつの間にか、何もなかった空間に無数の本棚が現れている。神様は適当な本を取りペラペラとめくっている。


「他人の顔色を窺い自分を殺している人間、何もかも周りのせいにして自分の責任から逃げ続ける人間、優秀すぎて力をセーブしてしまう人間、失敗を恐れて挑戦しない人間、実に様々な人たちがいたな」


 読んでいた本を再び元の位置に戻す。


「セーフティーネットなんて無い世界。力こそが正義となる世界で君たちは変わらずにいられるのだろうか?いや、無理に決まっている。自分の可能性を狭めずに生きることに執着してあがき続けてくれ。そんな姿を見ることが僕の楽しみなんだから」


 少年の周りが光に包まれ始める。


「ハッピーエンド、ノーマルエンド、バッドエンド、トゥルーエンド。後悔しない終わり方を期待しているよ。新しい物語の始まりだ」 


 神様は本棚は光とともに消えていった。しかし、異世界へと消えていった人と同じ数の本が辺りに散らばっていた。

 その本は例の白い本だった。


 白い本は徐々に色や文字が浮かび上がってくる。動物たちと触れ合う女性の表紙。魔物と戦っている男性の表紙。料理を作って幸せそうな表情をしている男性の表紙。学園で友人と一緒にいる女性の表紙。女性に囲まれている男性の表紙。そしてとある本の表紙には、男性と仲間たちが冒険している絵が浮かんでいた。表紙には絵以外に【著/北村純】と書かれていた。

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