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詩集「詩秋」 最終更新日2022/2/19

雑踏歌

作者: 朝霧篠雨

お久しぶりです。

 雪が降った。

雪が降ると、車や人はゆっくりと流れる。

皆、衝突や転倒をしないよう、心の中では周囲に注意を払うのに精一杯なように見える。

まちの人たちというのが、普段から多少の「余裕」を持って、緩やかな時間の流れの中にいたならば、私がこう思うこともなかっただろう。

あ、あの人滑った。


 車のドアを開けた瞬間というのは、足元を冷たい空気が流れていく。

温もりに触れ続けてはいけない。

背筋なら、どれほど。


 「大粒の雪が降りしきる様子は桜の花びらが散っている様によく似ている」と、純粋に思った。

桜吹雪とはよく表現されたものだが、しかしその逆のこれは果たして…。

その深遠さに、くらくら目眩がした。


 線路近くの道路は凍っている。

人も同じようなものだ。


 通学路で私がいつも見ている川の土手の手前、藪だらけの原っぱを少し見上げれば、その先に大層な山々が見えるのだと、卒業のその日になって気付いた。


 田舎に広がる畑のある一区画が均され、跡には家一軒ガレージ庭付きほどの土地ができた。

何ができるかと思えば、三、四列に並べられた背の低いソーラーパネル群だった。

夏の陽炎がひとつ、増えた。


 日の出とともにやって来る小鳥のさえずりが窓の外から聞こえる。

母が台所に立っている。

葱を切る音。

チッチッチという、ガスコンロに火を点ける音。

母は、母。

美味い味噌汁。

幸福は、いつも他人が推し量るものだ。

幸福とは、愛想笑い。

雲一つない快晴。


 女性。


 掻いた跡に積もる新雪ほど、理不尽なものはない。

掻いた跡に積もる新雪を見て否定する人間も、積もるほど居る。

しかし、掻いたという事実は、新雪にも人間にも、否定することができない。

私のずっと先の方で、箒で雪を掃くおばあさんがいた。

視界に燦然と降りしきる雪のせいではっきりとは見えなかったが、箒を持つその赤焼けた素手が世界で最も逞しく、美しいものに見えたのを覚えている。


 本に棲む人。


 冬の西日ほど心地よい温かみはない。


 。


 はい、あ、はい、そうです。

え?あ、はい。

はい。はい……。はい、あ、そうですか。

すみませんが私、いや…、はい……。

はい、はい、……はい。

…失礼します。

誤字・脱字はありません。

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