一章 後半
【勇者 7】
都に着いた、エイリご一行は、よくある町の入り口に、立っている女の人に、場所を尋ねた。
「ここは。平安京ですよ」
と、いうことらしい。
現在の京都のあたりとなる、あっ、これは著者の助け舟である。あしからず。 再び話は、戻る。
とりあえず、エイリは、アミダのいう、「酒場」を目指した。が、のれんが出ていない。どうやら、夜にならないと、開かないらしい。一旦、宿屋で時間を潰すことにした。アオミの事もあったから。 酒場という、いかにも何か事件の起きそうな場所に、アオミを、連れて行くわけには行かない。アオミは、待機だ。そう、自分に言い聞かせて、宿屋へと戻った。「わたしも、行く!」
「絶対行くんだから、ね!!」と、駄々(だだ)をこねる、アオミを尻目に、エイリは、日が暮れた町を、再び、酒場へと向かう。
「いらっしゃいまし」 決して、若くはない、おばさんが愛想よく、席へと案内してくれた。お茶を、先ほどの、おばさんに頼む。
「さて、これからどうしようか?」
「あんた ひょっとして依頼を探しにきたくちかい? 」
【勇者 8】
「よし。ついてきな」
そういわれてエイリは、おばさんに連れられ地下のカウンターへ。マスターを紹介される。ギルドは会員制で、年会費は白米2キログラムだそうだ。高いのか安いのか。この時点ではなんともいえない。
マスターに、回覧板を渡され、席に戻りページをめくる。
1 「どなたか。わらわの話し相手になってはもらえぬか。自薦他薦問わぬゆえ。 清少納言」
2 「十字軍の目的を探ってほしい。褒美をとらすぞ。 都省庁」
3 「どうか力を貸してほしい。このとおりだ。牛若丸」
4 「大会参加者募集 光源氏恋人募集委員会」
5 「急募 人探し 西洋の女 都省庁」
6 「お願い!姫を探して。 つきそいの娘」
7 「仲間募集!!わたしたちのパーティーになっていっしょに魔王をたおしませんか? 勇者ご一行」
8 「話相手募集 条件 清少納言の話相手ではない人 紫式部」
このもくじを見る限り、魔王討伐に向けて協力な助っ人になりそうな人たちもちらほらいるし。まずは仲間探し。
しかしながら……エイリは思った。都省庁がらみの案件で、解決に導きうまくとりいれば、貴族の道が開けるかも。そうすれば農民暮らしの貧乏ともおさらばできる。さらに……エイリによこしまな気持ちが働いた。話相手募集が気になるッ!
【勇者 9】
宿屋に行ったら、店主の男が、慌てた様子でエイリに話しかけてきた。 何事かと思ったら、「おたくの連れの、お嬢ちゃんが、連れ去られちゃったんだよ」
「えっ?」
「部屋に、置き手紙があったよ。これを見てくれ」 エイリは、受けとり目を通す。
【女は、預かった。返して欲しければ、明日 亥一つ時 有り金、全部、持って、北にある廃墟と化した古寺で待っている。間違っても、役人に言うなよ。一人で来ること。約束を破った場合、娘の命の保証はしない。魔王ザイザーナ】
※
だけど、……いったい何時?
現在の夜9時から45分のあたりとなる、あっ、これは著者の助け舟である。あしからず。 再び話は、戻る。
※
えっ?もしかしていきなりラスボス?やったじゃん!「3王」とか、もはや関係ないじゃん。ラッキー。勇者、楽勝じゃん!! 部屋に、戻った。 明日に備えすぐに寝た。
エイリはさっそくメニューコマンドを開く。そこには、現実離れした話についていけないエイリのために、初めて耳にするロールプレイングゲーム独特の専門用語に和訳がついていた。 例えば「クエスト」をクリックする。
「クエスト(名詞▪俗語)困っている人の依頼や頼みごとのこと。達成すると経験値とお金をもらえる 」
「Lv.」をクリックする。
「Lv.(名詞)レベル。強さの目安。一定の経験値を積むと上がる」
「チュートリアル」という別の項目には、他にもたくさんのキーワードがある。 見たところどれもエイリには意味のわからない言葉ばかりである。
例えば、「地下へと続く隠し階段」。「スキル」。「ギルド」。「仲間」。
「仲間」をクリック。
仲間······それは、「エルフ」。「シルフ」。「フェアリー」。「魔法使い」。「ドワーフ」。「獣人」。(以上全てイケメンもしくは美少女、「ツンデレ」あり)
「そして、······か▪ら▪の▪中盤のビジョン」という別の項目をクリック。他にもたくさんのキーワードがある。
「剣と魔法」、「召喚獣」、「ドラゴン」、「お城」、「王子様」、「お姫様」、「鎧の騎士」、「魅力的な感情移入できる敵ライバル」、「モンスター」、「ダンジョン」、「闘技場」、「カジノ」、「大浴場▪プール(どちらも混浴)」「チート」、「ハーレム」、「主人公最強」。
「後半のビジョン」という別の項目をクリック。そこにはやはり、他にもたくさんのキーワードがある。
「それから、船での航海」、「何かの乗り物を手に入れて、世界地図を見ながら空を飛ぶ(もう物語の終盤)」。
「転職イベント」、「恋愛イベント」(以上全て「壁ドンッ」、「悪役令嬢」、「三角関係」あり)、「エンディング終えてからの、隠ダン」。
「さらに言えば、スキルとか経験値とか最速とか」、「一気に上げるとか」、
最後に「マニア向け項目」という別の項目がある。
「レベル99、最強から。で、もう一度、冒険のスタート」。
「なんなら、魔王になって、魔王軍ひきいてスタート」。
といった具合に 。
よし!時間がある時にゆっくり一つ一つ見ていこう。そう思うエイリであった。
→、メニューコマンド、開く。
『本日の、メニューコマンド
【キーワード】《クエスト〔名・俗〕困っている人の依頼や頼みごとのこと。》
《Lv.〔名〕強さの目安。一定の経験値を積むと上がる。》
《ギルド〔名・俗〕クエストを斡旋してくれる仲介所。》
【名前】エイリ【職業】勇者(拒否ちゅう)【Lv.】 1【経験値】 0【スキル】《少女を助けた勇気。》《楽観的に、物事を考える傾向あり。》
【所持金】 43,700円
【持ち物】 勇者の証し(裏を見ると、会員№100分の80と記載がある。)【現在の目的】《アオミを助ける。》【パーティ】アオミ?(捕らわれの身ちゅう)』
→、メニューコマンド、閉じる。
→、セーブ
お疲れ様でした。
画面、閉じるー
【勇者 10】
寺にいた、ザイザーナなる者は、エイリの顔を見るなり、エイリに、すがりついた。
「そちが、勇者か。我を助けてくれー」と。 はっ?エイリは、戸惑った。それに、……ザイザーナって女だったんだ。
※
そもそもそんな生物。見たこともない。顔も知るわけがない。 それはさておき、さて。
※
「我は、偽者のザイザーナじゃ、偽者のザイザーナじゃ、我こそが、偽者なのじゃ」
「あー、わかった。わかった。うるさい。うるさい。少し、だまらっシャイ」
「寝込みを襲われたのじゃ。気付けば、草原に放り出されていて、紙が1枚あるのみ。そこには、都に勇者が、現れる。お伴の少女をさらい、この古寺に呼び出すよう、そのように、指示があったのじゃ。そして、その勇者に、保護され、本物を倒すまで、同行しろと。そう、書いてあったのじゃ」
「あー、わかった、もう本当に、うるさい」
「アミダなる名もそこには、あった」
「……えっ?」
エイリは、固まった。
「そうなんだ」
それにしても、……先は長い。 遠くから、アオミが、ニコニコしながら、こちらを見ている。何が、おかしいのやら。
(おれは、……泣きたい。)
ここはどこ?私は、誰?
【番外編 つかのまのバケーション】
「十二単がどうしても着てみたい。貴族のあこがれなの」
というアオミを貸衣装店に残し、せっかくなのでにせと近くの甘味処まで足を運んで、それぞれ団子と茶を頼む。
エイリは下級官人の衣装にした。このほうがリアル。現実的だから。
「よく似合ってるよ。にせ」
冷やかしのつもりでいったらにせが顔をそらした。えっ。にせもしかして照れている?とまどうエイリ。
まずい。それで変に意識してしまうエイリ。
「さあ、団子食べよう」とエイリはみたらしを。にせは、こしあんを食べる。
「おいしい」とにせがいって、そのいいかたが、本当に心からそういってるいいかたはとは、こういうものなのかと、感心した。
「よかったら1本交換しない?」
「……」
小動物のような眼で、にせはエイリを見る。
「えっ。あ、いやならいいよ。ごめん、変なこといって」
「いいよ。別にいやじゃない」
交換して、それをそれぞれ食べて。また「おいしい」といった。さきほどと変わらないいいかたで。またエイリは感動してしまう自分を認める。
「にせはさ。偽ザイザーナやる前は何やってたの?」
とつぜん寂しそうな顔をして下を向いて黙り込んでしまった。
しまった。余計なことをいってしまった。せっかくいい雰囲気だったのに水を差すようなことをいってしまった。どうしよう?
「ごめん。食べよう。せっかくのお茶も冷めてしまう」
そういったら、「そうだな」といって、団子を食べ始めた。本当においしそうに食べるんだな、とエイリは改めて感心する。
しゃべりたくないことだってあるよな。人には色々事情がある。もちろんそれはエイリやアオミだってある。
エイリは、懐から何か取り出した。
「これさ、さっき市で見つけて買ったんだけど、お前にあげるよ」
にせに渡す。にせは受け取るも、何に使うものかよくわからずとまどっている。
「懸守といってな。幸福になれるよう念がこめられてる」
にせの首にかけてあげる。
「……」
「幸せになるんだよ」
「……」
にせは立ち上がり、貸し衣装屋へと足早に急ぐ。
「あっ、ちょっと待ってよ」
そういって追いかけるエイリは、さっきのこと怒ってるのかな?女心はやはりむずかしい、とこのとき思うのだった。
【勇者 11】
市の中心地から少し離れた店先までくる。屋号に「つぼや 1号店」とある。
店内には大小さまざななつぼが置かれている。奥のカウンターには、いかにもいわくのありそうな爺さんがいた。
「そこに並んでいるのは、『清らかなる水』じゃよ」
「なんですか?それ」
アオミが興味津々にいった。
「魔界によって武将や有名人や著名人の魂が封じ込められている。これを手にしたものは、その人物の力をその身に宿すことができる。もちろんその人物によって与えられる試練がある。それをクリアすることが最低条件じゃ」
しかし……価格が、現代でいう数百万とかものによってはもっと。一番安いもので「北京原人 10万円」。「倭武尊 300万円」。中間くらいの「伝説の勇者ご一行 800万円」。一番高いもので、「かぐや姫 時価」とある。いったいいくら?
(見てるだけ~)
という気持ちが伝わったのか、ただで占いをしてくれるという。 別に、占ってほしくはないのだが······。
どうやら早く帰ってほしいらしい。金のない子どもに用はなし。
エイリは、あきらめて、爺さんのいうことをきいた。と、思って、手を出そうとしたら、
「お前じゃないわい!」と、いわれた。
「えっ?じゃあ、誰?」
「そこの、可愛いお嬢ちゃんじゃ」
なるほど。このエロじじいっ。 爺さんは、アオミの、手を、必要以上に、握りしめてから、こういった。
「なるほど、のう。そなた、名は、何という?」
「アオミ」
占い好きのアオミは、ハキハキとした口調でいう。なんとも、可愛い。
「こ、これは。アオミといったか。気をつけなさい。あなたは、二つの色を持っている。これからさき、色んな分岐点が、あなたを襲うだろう。されど、間違った選択をするでないぞ。そのときは、……間違いなく、身の、破滅じゃ。気をつけるのじゃぞ」
「はい」
アオミは、ひまわりの花のような眼球を、パチクリさせながら、大きな返事をした。
「おい、そこの、笠女」
えっ?にせのことだった。
「こちらに来て、手を見せーい」
何故か、にせは、嫌な顔をして、渋々といった感じで、爺さんの側へと行く。
―手を、見せるにせ。
「―何と!!もしや、そなたは、新生魔王軍……」
爺さんの台詞は、途中で絶えた。何故なら、にせが、持っていた刀で、爺さんを、真っ二つに切り裂いたから。
エイリは、あまりのことに、おしっこをチビりそうになった。いや、少しチビってしまった。
ってか誰?
目の前のにせ、人の皮をかぶっていたようだ。
みるみる皮は裂け、脱皮し、そこから黒い何かが飛び出て、みるみる大きくなっていく。
そのせいで、つぼやは、破壊され、みるも無惨な姿に……。
エイリは、そくざに、アオミの、手を、握り、側へと引き寄せる。そして、二人で、目の前の大きくなった黒い巨体を見る。
エイリは、はっきりと、死を覚悟した。後ろにいる、アオミが、エイリの、服を後ろから、ギュッと引っ張る。その行為が、心苦しい。
(わりぃ、「アオミ」。おれ、お前のこと、守ってやれそうにない。)
エイリは、手にした、アミダから、授かった、妖刀むらさめを、両手でしっかりと持ち、刃先を、目の前の黒い巨体に向けた。
妖刀むらさめの刃先が、太陽の光を浴びて、一瞬、ピカリと光輝いた。その輝きは、なんとも、頼りなかった。
―せめて……アオミだけでも、なんとか……
エイリのせめてもの、一筋の、懇願だった。
【勇者 12】
黒い巨大な巨体がいった。
その姿は、エイリやアオミの300倍はあった。
「我こそは、3王の一人、『黒騎士』なり。まさか、よもや、こんなところで、正体を明かすことになろうとはな。予定は狂ったが、しょせん同じこと。
救世主と、いうから、警戒していたが、こんな若造なら、いつ殺しても同じことだわっ。アミダめ!よもや血迷ったのでは、あるまいな。まあ、よいわ。死ね、救世主よ」
「仏様。……阿弥陀如来様。どうか、どうか、アオミだけは、頼みます」
「冥土の土産に見せてやる。光栄に思え」
「エイリよ」
「助かった。アミダか。助けてくれ」
「それは、出来ません」
「あ?」
エイリは、キレた。
アミダは、いう。
「私は、訳あって、この場にはいません。身体が、捕らわれていて、その場所から、動くことが出来ないのです。エイリとは、私の意志とあなたの意思を通して、あなたの潜在意識に直接こうして、話しかけています」
「アミダ。ご託はいい。どうしたら、アオミを助けられる?」
※
エイリは、本気だった。
その眼は、情熱的に燃え、たぎっている。
今まで、こんな眼をするエイリを見たことがあったろうか?
※
アミダは、エイリの、その気迫に後押しされるように、言葉を続けた。
「それは、……」
そのとき、黒騎士は、何やら、エイリのただ事ではない、気配を感じ取り、気を、込める時間を遅らした。
(さすがは、救世主。何か、見せてくれるのやも知れぬ。)
が、しかし。
黒騎士は、遠くで見つめる邪心の気配を感じ取る。
(奴とて、バカではない。私が、あまりに時間をかければ、気づかれる恐れはある。もって、いつもの1、5倍。時間にして、60秒から90秒といったところか……。それまで、なんとか。……頼むぞ、エイリ。)
「うおーーーーーー!!!!!!喰らえ、我が最大奥義……」
黒騎士は、気合を入れた。いつもよりため込む時間は、長い。
「エイリよ、もはや、時間はありません。今の、あなたのLv.では、黒騎士の、最大奥義を、防ぎ切ることは、出来ないでしょう」
「じゃあ、どうすれば?」
「計算外でした。私にも、もはや、どうすることも出来ません」
「あっ?そんな……」
「……」
「おい、アミダ。なんとかいえよ。おい、アミダ。頼むからよう……」
「……」
「ちきしょう、そんな。おい、アミダ!お前は、仏じゃないのか!この世の仏じゃないのか?そんな……よ。仏が、庶民の、人々の仏様がよ。みんなの縋りがよ。何もできないなんてよ。なんなんだよ、仏様ってなんなんだよ。救い主ってなんなんだよ。救世主ってなんなんだよー。勇者っていったいなんなんだよ。こんちくしょう。こんちくしょうがよ。ふざけやがって。ふざけやがってよ。馬鹿野郎ーーー!!!」
エイリの声が怒涛のように響く。
アオミが怖がって、エイリにしがみつく。エイリは、申し訳なさそうに、アオミを抱き締め、上から手で、頭を、いい子いい子してあげる。
すると、その光景を聞いて、ひらめいたように、アミダがいった。
「諦めてはなりません。まだ手は、あります」
エイリは、耳を傾けた。
「なぜかはわかりませんが、黒騎士からは、あなたたちを、殺そうとする殺気が見受けられません。その証拠に、今、まさに繰り出そうとしている最大奥義もあえて時間をかけて、います。あなたが、何か仕掛けてくる時間を作っているのです。その隙を狙うのです」
「それは、……」
「『妖刀むらさめ』を、使うのです。不本意ではありますが、仕方ありません。武器は、失いますが、あなた方の命には、替えられません」
「よし、それだ」
エイリはいった。
「で、どうすればいいんだ?」
「『妖刀むらさめ』に、美しき愛の力を込めるのです」
「あっ!?意味がわからん」
「説明している暇はありません。エイリ、アオミに愛の気持ちを伝えなさい。アオミが、それを受け止めたとき、『妖刀むらさめ』を、黒騎士の心の臓、目がけて、投げつけるのです」
うっ。そういわれると、さすがにエイリも戸惑った。
愛の告白?アオミに?このタイミングで?出来ればもっと違う形で、シチュエーションで、伝えたかった。
本当に、そう思う。
「早くしなさい。死にますよ、あなたたち」
エイリは、アオミの両肩に手を置き、前を振り向かせ、アオミの眼を一心に見つめた。
アオミも何事かと、エイリを見つめてくる。
「アオミ」
「何?エイリ」
「ずっと、いおうと思ってたんだけど」
「うん」
「おれ、お前のことが好きだ。愛してる。これからもずっと、ずっと、おれの側にいてほしい。おれが、一生守ってやるから」
もう一度いう。
「愛してるよ」
「うん。私も。エイリ、ありがとう。大好き!ずっと、ずっと一緒だからね。私のこと、一生守ってね。エイリ。私も、あなたのこと、愛してる。大好き」
アオミはエイリに抱きついてきた。エイリもアオミを、ギュッと、抱き締める。
抱き合う二人。
そのとき、「妖刀むらさめ」が、光った。
「今です。エイリ!むらさめを、黒騎士に向かって投げつけるのです」
(許せよ。にせ……いや、黒騎士よ。)
エイリは、一瞬、今まで、旅で過ごしたにせとの、情景が、頭に一瞬、よぎった。
(エイリ。もう待てぬぞ。)
「喰らえ、我が最大奥義。スパイラル、キラー、エメラルド、ソリュージョン!」
七色の光が、エイリに向かって迫ってくる。直前で、光は一色になって、大きな剛剣となって、エイリの心臓目掛けて、襲ってくる。
「ウォーーーーーー!!!!!!」
エイリは、「妖刀むらさめ」を、黒騎士目がけて、投げつけた。
凄まじい閃光と凄まじい閃光が、ぶつかり合って、拮抗して押しぶつかりあって瞬く間に、弾けて飛び散った。 エイリは、身体を翻し、アオミに覆い被さった。
( 頼むぞ、阿弥陀如来)
その願いを、一心に込めて。そして、エイリは、覚悟を決めて、両眼をつぶった。 凄まじい音が、辺りに、轟いた。 雷がおちたような爆音だった。 そこまでだった。エイリの意識は、そこで途絶えた。
第一章 (完)






