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9.学園8

 今回はこの世界での生活について少しまとめようと思う。


 今のソルナリアは十四歳で、もうすぐ十五歳になる。この貴族学園は十二歳から入学できて、さらに十五歳でギフトを得てからもしばらく在学できるため、学生の年齢は大体十二歳から十五歳の範囲になる。

 また貴族学園は男性と女性で分かれていて、私のいるこの貴族学園は女性だけしかいない。教員も基本的には女性しかいないらしい。

 中には貴族学園へ通学する学生もいるらしいけれど、ほとんどの学生は敷地内にある学生寮に住んでいて、ここで衣食住の生活が全て(まかな)われている。

 私もこの数日の間、学生寮を中心とした貴族学園における生活を味わうことになり、様々なことを知ることになった。


 前提として、この世界は多種多様な事柄が現実世界と同じになるよう調整されている。

 時間が経てば空腹を感じるし、眠気も感じる。肌をつねれば痛いし、もっと深い傷を負えば激痛を感じるのだろう。普通、ゲームは大きな精神ダメージを負わないように、苦痛という感覚には制限がかかっているのだけれど、この世界はそうなっていない。

 ここまで現実に似せていることから、この世界はゲームよりもシミュレーションの性質が強いのかもしれない。

 問題はこの無駄に現実に寄せた仕様が、この世界で生活する上での障害になり兼ねないこと。私はそれを順に確かめていった。

 最初に睡眠。

 元の世界では仮想世界のホームで睡眠を取ろうとすると、システムがより良い深度の睡眠状態へと誘ってくれたため、質の高い眠りを得ることができていた。この世界だとそんなシステムの支援はないので、十分な休息が取れないかもしれない。

 私はそんな危惧を覚えながら転生した初日の夜、ベッドで眠りに就いた。

 翌朝、清々しい気分で目覚めた。

 あれ、実は睡眠を支援するシステムが機能していたのかな? 特に眠りが足りないというような感覚はない。よく分からないけれど、問題がないならいいか。

 次は食事。

 この身体(からだ)はやはり現実世界同様に定期的にお腹が空くらしい。ただ私の元の世界でも食習慣を維持するために仮想世界での定期的な食事が推奨されていたので、ここはしょうがないかなあと思っている。

 この学生寮にある食堂は既に何度かお世話になっていて、味も良くとても満足している。食事ごとに対価を払う必要はないのが気になってメイドさんに聞いてみたところ、国や貴族からの基金で成り立っているそう。

 その次は洗浄。

 ゲームには戦闘や罠などは付き物なので、衣服や装備が汚れたりすることはよくあるけれど、汚れたままだと不快なので大抵は何らかの自動洗浄機能がある。

 でもこの世界だとそういった衣服の自動洗浄機能はない。

 さらにこの身体(からだ)は汗をかいている。いや、汗をかくのはゲームによってはあったりするので別にいいんだけど、その汚れも自動的に洗浄されない。

 これにもソルナリアの知識に頼ったりして何とか解決方法を探した。部屋にシャワールームがあって、また学生寮の共同バスルームには大きな湯船まで用意されていた。衣服は洗い物を専用の袋に入れて置いておくと、洗って返してくれるらしい。

 これは私の元の世界における現実世界とかなり近く、シャワーやバスルームは個々人の部屋に取り付けてあるし、汚れた衣服はロボットが勝手に回収して清潔な状態を保ってくれる。うん、何だろう、そんなに問題ないね。

 では最後に排泄。

 つまりトイレなどのような生理現象までこの世界にはある。これにはかなり辟易(へきえき)した。なんで仮想世界でトイレに行かなくちゃいけないのか。

 なおトイレ自体は清潔に保たれており、水洗式でウォシュレットまで付いていた。


 こんな感じで、ゲームであれば苦情が殺到するであろう数々の仕様は面倒くさくはあるんだけど、それを便利にするための機能もかなり用意されていて、手間はかかってもそれなりに快適に過ごすことができてしまっている。そうそう、今は季節柄か過ごしやすいのであまり使ってないけれど、空調設備もあった。

 そんなわけで生活自体はあまり困っておらず、これにはとても助かっている。あまり文明レベルが低すぎると、生活に耐えきれなくなって脱出に大きな支障が出たかもしれないからね。

 こういった便利機能は魔灯と同じように魔力を込めた魔石を使って実現されていて、これだけ設備が整っているのは貴族学園だからという理由も大きいのかもしれない。

 だからここを出たあとの生活がちょっと心配にはなる。ただお婆ちゃん先生に聞いたところ、魔石はそこまで高価なものではなく、貴族ほどじゃぶじゃぶ使えないにしても平民にだって手が届くらしい。

 つまり貴族学園を去ってからも、お金があればそれなりの生活レベルを維持できるということなんだけど……お金ねー、持ってないなあ。


 さて、そろそろ時間だし行かないと。私は鞄に筆記用具と本や紙を()じた帳面などを入れて準備する。ちなみにこれは、魔法の鞄である。見た目よりも沢山入るし、その状態で持ち上げてもかなり軽い。

 今日はこの前借りた本を図書室で返却したあとで、お婆ちゃん先生のところへ行こう。

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