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8.学園7

 お婆ちゃん先生の講義で得られた知識の中で、早速ギフトについて情報をまとめよう。


 まずギフトとは神、あるいは女神から授けられる能力とされ、そのタイミングは十五歳誕生日の正午。ギフトは誰にでも分け隔てなく与えられるけれど、その内容は能力と血筋によって決定されるといわれている。

 だから十五歳の誕生日までに、皆その能力を磨くために学問や鍛錬に励む。特に貴族は優秀なギフトを授かることが求められ、そのための貴族学園は重要な施設となる。

 学び舎としては他に平民学校もあるらしく、多少余裕のある平民はより良いギフトを求めて学校に通うのが当然らしい。

 ギフトは変化することがあって、ギフトチェンジと呼ばれる。ちなみにお婆ちゃん先生は元々は「魔法使い」のギフトだったけれど、ギフトチェンジを繰り返して今は「上級魔導士」のギフトになったらしい。

 またギフトには(ほし)が付くことがある。(ほし)が付くと同じ名称のギフトでも格上扱いされる。例えば同じ「上級魔導士」でも、(ほし)が一つ違えばはっきりとその強さに差があると見なされる。なお、お婆ちゃん先生は(ほし)が一つ付いているそうな。

 このギフトチェンジと(ほし)付きは十五歳以降にも起こるので、ギフトを授かったあともギフトを磨くことが大切になる。

 平民だと「戦士」系や「斥候」系、「農民」系のギフトが多いそうだけど、他にも「職人」系や「商人」系など色々とあって、ギフトチェンジでさらに細かく派生して沢山の種類があるらしい。

 これら貴族から見れば下位とされるギフトでも、決して馬鹿にはできない。例えば「戦士」のギフト持ちを、非戦闘系のギフト持ちが倒すのはかなり難しい。


 またギフトを得ると、それに付随していると考えられているスキルを同時に得る。スキルは魔力を消費して使用する固有の技と考えれば、ゲーム的に分かりやすいだろうか。

 同じギフトなら大抵は同じスキルや似たスキルを持つそうだけれど、そうならない場合も多いらしい。

 スキルの多くには等級があって、「初級」、「中級」、「上級」、「特級」、「極級」と分かれている。さらに魔法などの場合は、同じスキルと等級であっても内容が違う場合がある。例えばお婆ちゃん先生は「水魔法(特級・竜渦潮)」というスキルを持っている。この「竜渦潮」という魔法名が、同じ「水魔法」の「特級」であっても、効果範囲と威力の兼ね合いで変わる。この辺りの仕様は、仮にこれがゲームだとしても少し複雑だと感じる。

 ただまあ魔法も先達の教えや書物によって学ぶので、同じ魔法を継承していくことが多く、やたらと数が増えることはないらしい。そのため同じ等級の魔法に広範囲型と単体型の二種類あるのが基本で、例えば「竜渦潮」は広範囲型なので、「水魔法」の「特級」には別に単体型の魔法もあると考えればそれでいいみたい。

 「魔法使い」系以外のギフトでも大体こんな感じでスキルが存在するらしく、「戦士」系なら武器などを使った攻撃技がある。もちろん戦闘に関係のないギフトにもスキルがあり、例えば「農民」は農作業に関連したスキルがあって収穫量に影響するし、「職人」系はスキルで作品の質が良くなるし、「商人」系はスキルで計算能力や商品の目利きが巧みになる。

 あと他に、ギフトを得ると少しだけ身体能力が向上する。ただしこれは気持ち程度らしく、「戦士」系のギフトを得たからといって、ひ弱な肉体で筋骨隆々の相手に力で勝てるようになったりはしない。


 こんなところかな。ギフトに関する基本的な知識は大分得られたし、スキルについてもある程度分かったと思う。

 これらギフトやスキルの情報はウインドウを開くことで本人は確認することができる。ウインドウはそのままウインドウという名称で通じた。

 なお、お婆ちゃん先生のギフトは「上級魔導士」なわけだけど、平民で「上級魔導士」のギフトは優秀と判断されたから貴族学園の教員になれたそうだ。でも最近は平民の教員が次々と減らされていて、もうお婆ちゃん先生しか残っていないと言っていた。

 そんなお婆ちゃん先生が、私に声をかけてくる。


 「ソルナリア様、少し休憩にしませんか? 良い茶葉を分けていただいたので、お茶にしましょう。早速お湯を沸かしましょうね」

 「はい、先生。では私はティーカップを用意しておきます」


 私は椅子から立ち上がり、部屋にある本棚とは別の棚から、二つしか置かれていないティーカップを取り出した。最初にこの部屋を訪れたときには気付かなかったけれど、初めてお茶をご馳走になった日には既に二つのティーカップがあった。

 お婆ちゃん先生の前には、空中に浮いたぐつぐつと煮立っている小さなお湯の(かたまり)があって、その中を茶葉がぐるぐると忙しそうに駆け回っている。やがてお湯に色が付き始め、そろそろという頃合いでお湯は二つのティーカップへと注がれた。そこでようやく部屋がお茶の香りに包まれていく、おそらく煮立ったお湯の(かたまり)の周囲は空気が固定されていたのだろう。

 このお湯を空中に浮かせてお茶を作る操作には、スキルを使っていないらしい。

 こうしてお茶を作った最初の日に、「私は水と風の制御だけは昔から得意だったのよ」とお婆ちゃん先生が言っていたことを思い出す。


 「はい、できあがり、どうぞ召し上がってくださいな」

 「頂きます」

 「そうそう、お茶請けも用意しておいたのですよ」


 そう言ってお婆ちゃん先生は机の影にあって今まで気付かなかった棚を開けると、何かお菓子のようなものが乗ったお皿を二つ取り出して、私とお婆ちゃん先生の前に置いた。

 私はまた「頂きます」と言ってからそのお菓子を口にする。……これはチョコレートケーキだね。この世界にもチョコレートはあるのか、それはいい。

 甘さ控えめでお茶ととても合う。とても美味しいです、美味しいですねえなんて言葉をお婆ちゃん先生と言い合いながら、穏やかに時間は過ぎていった。

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