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6.学園5

 今までの考察や確認によって、オーバーフロー状態とイメージスキルを使えることは分かった。

 次はギフトと魔力の情報を求めて探索を開始しよう。

 ここは貴族学園なんだから、ギフトがどんなものなのか、どうすれば良いギフトを得られるのかが分かるかもしれない。

 ギフト項目の表示である「残り7日」というのは、おそらくギフトを得るタイミングか、得られるまでの制限時間を表していると考えられる。

 残り時間はたったの七日しかない。早速行動を起こすべきだろう。


 貴族学園の敷地は広く、木々の植わったちょっとした公園のような造りになっていて、学生寮を出ると石のようなもの舗装された道が続いている。学生寮の入り口の外には女性の兵士が二人立っていたけれど、特に声をかけてこなかった。

 私は何となく覚えている道筋を頼りにその道を辿ると、学生寮とは別の大きな建物を見つけた。ここが講義が行われる校舎だろうか。私はその建物の中に入ろうとしたけれど、そこの入り口前に門番のように立っていた女性に止められた。


 「今日の講義は全て終了しているはずです。忘れ物ですか?」

 「いえ、ちょっと質問したいことがありまして」

 「では教員棟へ直接行ってください。ここはもう閉門しています」

 「分かりました、教員棟へはどの道を行けばよいのでしょうか?」


 門番の女性は少し怪訝(けげん)そうにしたけれど、すぐに教員棟への道を教えてくれたので、私はお礼を言ってから教えられた通りの道を進んだ。

 そういえばさっきの会話、何だか私の口調が思っていたよりも少しだけ丁寧だったような……もしかしてソルナリアの精神に引っ張られてる? 私とソルナリアの精神が接続してしまっている影響だろうか……でもこれくらいなら大した問題にはならないかな。

 口調が丁寧で困ることはないでしょう。いや、もちろん私だって元から乱暴な言葉遣いなんてしないんだけどね。まあ、気にしないでいこう。

 私は教員棟と思われる建物の入り口へ近づくと、今度は話し声が聞こえてきた。誰かいるみたい。

 実際そこには三人の女性がいた。うち二人は私と同じような服、つまり学生服を着ている。ということは二人が学生で、もう一人は教員だろうか。

 私が三人に近づくと、学生の一人が私に気付いたのか声をかけてきた。


 「あら、貴女まだいたんですの? てっきりお部屋へ戻られたと思いましたのに」


 ん、知り合いかな? ソルナリアの個人的な知識はほとんど引き出せないので分からない。

 まあいいや、私の用件を伝えよう。


 「ギフトと魔力について(うかが)いたいと思い、教えていただける(かた)を探していました」


 私の言葉に、先ほどとは別の学生が返答する。


 「そういえば貴女はギフト授与の日が近いのでしたか、どのようなギフトを授かるのでしょうね」


 そう言って少し笑う。

 うん、それをどうにかしたいから、こうやって彷徨(うろつ)いているんだよね。

 あとギフト授与ってことは、あの七日というのは制限時間ではなくてギフトを得られる日で良さそうかな。

 そんなことを思っていると、最初に声をかけてきた方の学生がこんな話を言い出した。


 「ギフトですか、参考になるかは分かりませんが、(わたくし)は『魔導士』のギフトを授かりました。マドリーヌ様に比べると見劣りしてお恥ずかしいのですが」

 「何をおっしゃるのですか、フレデリカ様とて既に(ほし)まで授かっているではありませんか」


 そう、そういう情報が欲しかった!

 なるほど「魔導士」ね、ありがちだけど魔力量は多そうに思えるし悪くなさそう。

 「魔導士」と言った方の学生は、扇で口元を隠しながら私を細目で見ている。どうしたんだろう、何か眩しいのかな? そう思い、私はつい(いぶか)しそうな顔をしてしまったかもしれない。

 するとそのやり取りを見ていたもう一方の学生が、また変な笑いをしながら言う。


 「私は『文官』のギフトを授かりました。私には少々勿体(もったい)ないほどかと驚いておりますのよ」

 「いえ、エレミリー様の努力に相応しいギフトだと思いますわ」


 ほー、「文官」ねー。それはあまり強くなさそうだし、どうでもいいかな。

 でもこれで少し見えてきた。どうやらギフトというのは、職種や役割のような名称が付くらしい。

 よし、学生の二人から得られる情報はこの辺りで十分だろう。今度は教員と思われる女性の方を向いて訊ねる。


 「もう少し詳しくギフトと魔力について(うかが)いたいのですが、お時間を頂けないでしょうか?」

 「まあ、オルネット先生はお忙しいのですよ! もっと身のほどを(わきま)えた方がよろしいかと」

 「ではお手すきの(かた)がおられれば紹介していただけますか?」


 なぜか変な笑いをしている学生が返答してきたけれど、別にこの教員に(こだわ)る必要はない。いや、学生である彼女たちが先生と呼んでいるから、私も教員じゃなくて先生と呼ぶことにしようか。

 今まで全く口を開かなった、先生であろう女性は何か考えているようだったけれど、とうとう言葉を発した。


 「今の時期、教員は皆お忙しいのです――講義を持っていない者が一人いますが、あの者には問題があります――」

 「ああ、あの方ですか。彼女にはぴったりではないかしら。先生、紹介して差し上げては?」

 「あの者は平民なので、その知識に難があります――それでもよろしいなら、部屋を教えましょう――」

 「はい、構いません。お願いします」


 また変な笑いをしている学生が口を挟んできたけれど、結果として別の先生を紹介してもらえたので問題はない。

 私はすぐさまその場を辞去し、教えてもらった部屋へと急いだ。

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