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いじめ。

 辿り着いた先は屋上だった。バルコニーのように広々としたスペース。周囲は柵で覆われ、落下防止にはなっているけどここは……。


 いざというときにドラゴンでも着陸できるような設計になってるの、かな。


 人を乗せるドラゴンというのは聞いたことがあるけどそうそう当たり前に居るわけでも無いけど、もしかしたら高位お貴族さまにはそうした移動手段もあるのかも? そんな風に妄想しながら周りを見渡すと。


 はう。なんだか数人のご令嬢がそこにあたしたちの到着を待っていた? あれ? 令嬢達の後ろにはニーアまで居る?


「ルリアサン? あなた、平民のちんくしゃの分際でバルザック様に返答もせず逃げ出すって、どういう了見なのかしら?」


 皆のいる前に出てこちらを振り返ったシルヴィアさま、そう切り出すと両手を前で組んであたしを睨む。


 はああ。そっか、そういうことか。と納得して。


 あたしってとっても不敬なことしちゃったのかな。それでもってそれをよく思わない令嬢方に詰め寄られたのかぁ。


 と、事情はすこしはわかったけれどそれでもなんでニーアまでそっちにいるの?


「申し訳ありません……、昨日は取り乱してしまいました……」


 と、素直に謝る。しょうがないよあたしが悪いもの。


「取り乱しましたあ? それで済むとでも思ってるんじゃ無いでしょうね! 王室の護衛騎士さまに恥をかかせて、本来だったら不敬罪で罪に問われるところよ。あの後ジルベール殿下が不問にするって言わなければあなた退学になるだけじゃ済まされ無かったのよ!」


 はうう。


「それに。聞いたわよ。あなた、片親なんですってね。おとうさまいらっしゃらないのよね? あなたなんかこの名門セントレミーには相応しくないわ。これ以上王室の不興をかいたくなければとっとと自主退学でもしてくださらないかしら」


 え? どうして? お父様のことを?


 くすくすと笑うお嬢様達の後ろで申し訳なさげな表情でこちらを見るニーア。


 ああ、そっか。そういうことか。


 彼女らはニーアからあたしの事情を聞きだしたのか。


 あたしだって。あたしだって。この学園に入学した時にはお父様がちゃんといたもの。それに。

 お母様がちゃんとあたしの学費とっておいてくださっているもの。

 悔しい。


 心の奥底にある真っ赤な石に、黒い靄が蠢いてまとわりつく。


 悔しい。悲しい。


 そんな感情があたしの心を占めていく。


 クスクス


 そんな笑い声が耳について、

 堪らなくなる。



 うつむいて黙り込んだあたしに彼女らの誰かが言った。


「黙ってないで何か仰ったら?」

「かわいくないわね。そんな顔して。まだ泣き出したりする方が可愛げがあるわ」

「まぁまぁエーリカ様、わたくしたちは別に彼女を虐めている訳でもありませんしね。ご忠告して差し上げているだけですわ」

「ああそうでしたわね。あんまりにも可愛げのない表情をするものですから忘れておりましたわ。ほほほ」


 ああん、もう、限界。




 あたしの中の嫌な気持ちが限界になって。

 爆発して外にはみ出そうとしたその直前、だった。


「なあお嬢様方、その辺にしておいてはもらえないか? 見苦しくて見ていられない」

 そう背後から声がした。

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