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涙の跡。

「君、もしかして聖女様のお子さんかい?」


 いきなりそう声をかけられ、驚いて振り向いた。

 完全に目の前の風景にトランスしてたから人がいるのに気がつかなかった。


 急激に夢から覚めるように晴れていく頭で考える。


 って、何? この人、お母様を知ってらっしゃるの?


「ああ、やっぱりそうだ。その顔、マリカに瓜二つだね」


 そうにこにこと微笑んで教会の入り口に佇むのは豪奢な金色の髪を靡かせたハンサムなおじさま?

 肩までかかるその豪奢な髪はまるで女性のような印象を彼に与えているけれど、でも。全体的な印象はやっぱり男の人、かな?

 声はどちらとも通じる高めの声ではあるけど、男装の麗人? そんな雰囲気もないではないけど。

 あたしの直感はこの人を男性だって意識していた。


「普段ここには結界がかけてあるからね。普通の人は紛れ込まないようにしてあるんだけど君ならまあしょうがないか。あんな結界、すり抜けてしまうだろうから」


 はう。


「それにしても。どうしたの? 涙の跡で顔、クシャクシャだよ?」


 う、く。


 うっすらとしていたファンデも涙でよれてるのだろう。アイラインもぼろぼろかも。かなりみっともない顔になってるのかな。うきゅうだ。


「ごめんなさい。みっともないところをお見せして……」


 あたしはwashの魔法を使って顔を洗う。涙もみんな洗い流しちゃえ。そんな勢いで。

 汚れが床の絨毯に落ちないようそのへんはちゃんと回収して。ゴミはちゃんとレイスに収納した。


「ごめんなさい。これなら大丈夫ですか?」


 なんだかそんなこと男の人にいうのは場違いな気もしたけど、なるべく笑顔になって汚れを拭った顔を見せる。


「ふふっ、ククッ」


 笑いを堪えているような顔の彼。もう、流石にちょっと失礼じゃない?


「もう、いきなり笑うだなんて、失礼じゃないですか!?」


 あたしはぷくうとほおを膨らませて抗議する。


「ごめんごめん。いや、いきなり男性の目の前で顔を洗う淑女レディがいるなんて思わなかったからさ」


 そう言ってウインクする彼。


「でも、そういうところ、マリカにそっくりだよ。君の名前は?」


 はう。やっぱりお母様のことご存知で、それに、この人混沌の前のキオクも持ってるの!? どうして?


「あたしはルリア、です。ルリア・フローレンシア。っていうか人に名前を尋ねるときはまず自分からって教わらなかったんですか?」


 はははっ


 そう笑いながら彼が言った。


「ほんと君は面白いね。僕の名はアーサー。アーサー・ユーノ・オルレアン。よろしくねお嬢様」


 あたしの手をとり騎士の礼をとるアーサー。でも、そのお顔は思いっっきりお茶目で。


「ははっ。やっぱり君は、笑った顔の方が可愛いね」


 そんなアーサーの笑顔に釣られて思わず微笑んだあたしに、彼がそう囁いた。

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