アンジェリカ。
「さあ。どうぞ」
さっと現れた侍女さん数人によりささっと用意されたティーセット。
テーブルには刺繍がいっぱい入ってふりふりレースの白いクロスがふあさっと掛けられ、そしてそこにその貴婦人とあたしの分のカップが置かれる。
お菓子がいっぱい乗った宝石箱のようなカゴが用意され、カップに紅いお茶が注がれた。
はうう。
どうしようこれ。
お菓子を先にいただいてもいいのかな。
丸や四角の焼き菓子が並べらたそのカゴ。その貴婦人がさっと一個とってみせ口に入れる。
「ふふ。美味しいわ。あなたもどうぞ」
そう優しい微笑みでこちらを見つめる彼女。
あたしも手前の一個に手を伸ばして。
ああ、なんだかやわやかい。
口に含むとクシュっと溶けるように消える。不思議な食感のお菓子。
これ、見た目は焼き菓子なのに全然柔らかい。
「すごく美味しいです! 口の中でとろけるようで、その……、ありがとうございます!」
あたしは思わずそう大声で叫んで。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。貴女とこうしてゆっくりお茶ができるなんて思ってもいなかったから」
え?
その可憐な貴婦人のお口からそんな言葉が漏れるのを、あたしは聞き逃さなかった。
「あの……、あたしのこと、ご存知なのですか……」
「ふふ。そうね。何からお話ししましょうか。わたくしはアンジェリカ・ユーノ・オルレアンと申します。これでも貴女のお母様とはずっと冒険を共にした親友なのよ?」
「え? お母様の?」
「それにね。貴女と会うのはこれで2回目」
「はい?」
「今日はとっても表情が明るいから、安心したわ」
はう!
「やっぱり貴女には笑ったお顔の方が似合うから」
そう優しく微笑む彼女の顔に。
あたしは教会で出会ったアーサー様の笑顔を重ねていた。
⭐︎⭐︎⭐︎
狐につままれたようなそんな邂逅は唐突に終わりを告げた。
「ルリア。探したよ」
はあはあ息を切らしながら現れたジルベール様。
「ジルベール様!」
あたしの周りにはちゃんと護衛の人もついてるんだからそんなに慌てなくてもいいのに。
そう思いつつも、もしかして殿下はあたしのことをこんなにも心配して探してくれたのだろうか?
そう思うと嬉しくて。
ジルベール様はあたしの手を取ると。
「そろそろ帰ろうか。送っていくから」
そうにっこりと微笑んだ。
「まあまあ。ジル。男の子はそんなに簡単にレディと手を繋いじゃダメよ?」
「ああアンジェリカ様、ルリアをありがとうございました」
「まあ、まるでこの子はあなたのものみたいな言い方ね」
「そういうわけではありませんが、ルリアはわたしの同級生なのですから」
「ふふ。そっか、同級生、ね? そういう意味なら彼女はわたくしの親友の娘だもの。こんなことしてもいいわよね」
ひゃう!
そう言ったかと思うとアンジェリカ様に抱きつかれたあたし。
ふんわり柔らかい感触が伝わってくる?
「叔母さま!」
「あらいやだ。わたくし叔母って呼ばれたくはないってずっと言い聞かせてきたでしょう? ジル坊や」
「っく、わたしは坊やではありません! 行くよ! ルリア」
「え、ちょっと、待って、ジルベール殿下」
あたしは彼に手を引かれるままに。
アンジェリカ様に会釈でなんとか謝意を伝えたのだった。




