女神の恩寵。
塔の中に入るとそのまま真っ直ぐ進む殿下。
廊下はそんなに狭いわけじゃないけどこうして大勢の侍従さんに囲まれているとちょっと窮屈だ。
途中で魔導服? 学園の制服にちょっと似た感じのそれでももっとゆったりしたローブに身を包んだいかにも魔道士然とした人たちとすれ違った。
彼らは廊下の端に寄り胸に手を当て貴族の礼をして。
やっぱり殿下のことはここでも皆が知っているってこと?
ここに殿下が訪れるのは普通に当たり前な感じに見えた。
やがて中央の昇降機に着くと、そこからは殿下とあたし、そして数名の侍従さん二人の侍女さんだけになって。残りの方は扉の前で待機みたい。
まあ、流石にここにそんなに大勢では乗れないよね。
そんな広さのこの昇降機。
扉が閉まるとそのままクーンと加速して上昇するのがわかる。
あまり乗り慣れていないあたしはちょっとおなかのあたりが気持ち悪くなったけど、他の人たちは何てこともない様子で。
ほんの一瞬で目的地に到着するとスーッと開く扉の向こうのは大きなテーブルが見え、そしてその向こう端に一人の男性が座っていた。
ジルベール殿下を目に止めたその男性、すっと立ち上がるとこちらに近づいてきて臣下の礼をする。
「これはジルベール殿下。お久しぶりですね」
そうにこやかに挨拶する彼。
っていうか随分とフランクじゃない?
「ああ、老師。本日は貴方にお願いがあって参りました」
はう?
老師?
ずいぶんとお若く見えるのだけど。
白金の髪はひよこの産毛のようにふわふわしているけれど決して薄いとかそういう訳ではなくて、
(はうちょっと失礼だった?)
お顔だってまだ少年と言っても通用するくらいツヤツヤだ。お髭のかけらも見えない美少年に見えるのに!
「ああ、そちらのお嬢さんですね? ふむ。間違いなく女神の恩寵を受けていらっしゃいますね」
まだ殿下が何も説明しない前に、あたしの顔をじっと覗いてそういう彼。
「あ。ルリア・フローレンシアと申します。老師様?」
慌てて挨拶だけでもと名前を名乗るあたしに、
「私の名前はハクア。ハクア・マウアー・イクシアと申します。お見知り置きを」
そう優しく語りかけるような声で話し。
「それにしても。お母様によく似ていらっしゃる」
と笑顔を浮かべて。
その様子を興味深げにご覧になっていたジルベール殿下。
「ああ、やはりな。女神の恩寵、か」
と意味深に呟き。
「ルリア、僕は君をを護りたいと思っている。このイクシア老師は信用しても大丈夫だから、どうか君のことをちゃんと教えてもらえないか?」
そうまるで懇願するような目であたしの顔をぎゅっと覗き込んだ。
って、近い、近すぎるよジルベールさま。
あたしは恥ずかしくて恥ずかしくて。顔が真っ赤になっているのがわかった。




