憂鬱。
憂鬱な気分で学校に向かう。
緑の並木にはもうすっかりと初夏の日差しが舞い本当だったら気分も上がるのにと思いながら。
学校に着いたらまたあのカウラスの冷たい視線に晒されるのかとかジルベール殿下にもし何か言われたらどう答えれば良いんだろうとかそんなことばっかりが頭に浮かび何度も溜息が出てしまう。
まあ多分、殿下は学校じゃぁあたしに直接声をかけることなんてなさらないしカウラスの視線を回避すれば何とかなるかもとか甘い期待も持ってるけどそれでもね。
はあ。憂鬱だ。
そうした何度目かの溜息が終わった後。
並木路を抜けてそろそろ学園の門が見える場所まで着いた時だった。
門から一台の黒塗りの馬車が出てきたかと思ったら、あたしの目の前で止まった。
え?
っと、考えている間に扉が開いて侍女さん? が二人ささっと降りてきて。
や!
っていう間もなくあたしはその馬車に乗せられ、扉が閉まる。
もう頭が混乱してどうしたらいいかわかんなくて泣きそうになっていた時。
目の前の王子様が口を開いた。
「手荒な真似をしてすまない。しかし、このまま君を放置しているわけにはいかなくなった。少しお付き合い願えないだろうか?」
目の前にいるふわふわの金色の巻毛をふわっと片手で掬うジルベール殿下がそう囁く。
どうやらあたしには拒否権はない、らしい?
真っ赤なベルベッドで覆われた車内であたしの両端はガッチリ侍女さん二人によって固められている。
魔法を使えば逃げられないこともないかな、なんて考えてたけど、それも無理っぽい。
呼ぼうと思ったギア・アウラが拒否された。
どうやらこの馬車の中では魔法の発動を阻害する何かがあるみたい。
特に、空間操作系のアウラなんか存在することも拒否される有様だ。
まあ、ね。
こんな技術もあるんだぁとちょっと感心してしまったのもほんと。
それに、仮にも王族が乗る馬車だ。
いつ空間転移とかで暗殺者が襲ってこないとも限らないわけで。そういう対策でもあるのだろう。魔法は危険だけれど人はそれに対応する術もちゃんと考えているんだなぁと、驚くと同時に素直にすごいなぁと思ったの。
「どこに、連れて行かれるんですか?」
この間の一件で殿下にあたしがあの魔法少女だってバレたのはほぼ間違いない。
過去の改変前の世界を知っている殿下なら、魔法のことも混沌の靄のこともご存知なのだろうから。
でも。
それってどのレベルまでだろう?
そこまで深く考えたことがなかったことに、ちょっと反省するあたし。
「ああ、今から行くのは魔道士の塔だ」
え?
魔道士の塔って、王宮深くにあるあの高い塔?
王都からならどこからでも目に入るほどの高さの塔。
最高峰の魔術師が集うという国家機関。
そんな魔道士の塔に?
「あたしは、何か罰を受けるのでしょうか……?」
罰を受けないまでも研究材料にされたりひどい目にあったりとそんなことを想像し怯えていたあたし。
でも。
「君は僕が守る。だから安心して?」
そう話すジルベール殿下の目は。
真剣で、優しくて。信じられる、そう思えた。




