混沌の魔。
「ほら。ルリアそっち!」
うーん、もうすばしっこいな。
あたしはステッキの先に鞭状のマナを紡いで弾くように打つ。
今日現れた魔は小さい虫のようのあちこち飛び回ってちょっとうざい。
急制動を強化したラピズの魔法を駆使してあたし自身も頑張って飛び回ってるけどそれでもちょっと追いつけない。
このマジカルウイップでなんとかはたくように弾くことでギリギリ対処してるところだ。
でも。
ここのところちょっと魔が湧きすぎだ。
混沌の靄が現れる頻度が増え、あっと思うともう魔が出てきてる感じ。
「大本がどこかにいるんだよ。それをなんとかしなくっちゃ」
え?
大本?
「この魔を生み出してる混沌、それを操っている存在がボクらを付け狙ってるとしか思えないかな」
「えー?」
「だって、考えてもみなよ。混沌の靄はボクらの周りにしか現れないんだよ? 狙われてるとしか思えないじゃない」
「そんな、誰が?」
「うーん。それが分かれば苦労はしないんだけどね」
「もう、フニウ。それじゃ何にもわかんないのも一緒じゃない」
「ああもう、そこ、取り逃してる!」
「はいはい。マジカル・キュア・サブリメイション!」
右手に持ったマジカルウイップをしならせて、左手に持ったもう一つの杖トゥインクルスターから浄化の魔法を発動する。
なんとか数匹の虫を消し去ったあたしはそのまま残りの魔虫に向かってウイップを叩きつけた。
「いっけー」
ブシュっと弾ける魔虫たち。
「そこ! 最後の一匹!」
「はいな!」
トゥインクルスターの先をそこに向け照準を合わせる。
「アウラ・シュート!」
風のヤイバが魔虫を引き裂いた。
全ての魔は漆黒の靄と成り。そして、還っていったのだった。
「ふう、終わった、ね」
「うん。なんとか、ね」
今日の混沌は学校の帰り道ちょっと街に寄り道していこうと思ったところに現れた。
いきなり現れた漆黒の靄と黒褐色の魔虫たちに、周囲にいた人々は逃げ惑い物陰に身を潜めてはいるけれど。
「はあ。往来で変身しちゃった、ね」
「魔法もいっぱい使ったし、ね」
一応、前回の反省も踏まえてアメジストの魔石を使ってヒュノプスの権能、認識阻害の魔法を発動しておいたけど。
ざわざわと周囲の人々のざわめきが聞こえてきた。
うん、ここはさっさと逃げるに限るね?
「ああ、そうだね?」
あたしはそのまま大通りを逆走し、走って逃げた。
まさかだけど、囲まれて動けなくなって時間切れとかは避けたいし。
と、思ったんだけど。
走っている最中、とんでもない人の姿を見てしまった。
騒ぎが起こったせいか、ジルベール殿下とその取り巻きの人たちが勢揃いで沿道にいたのだ。
あちゃあカウラスもいるよ。
それにあの殿下の顔……。
ばれたかな?
「かも、ね?」
もう、どうしよう。
あたしはとにかくそのまま走って走って路地裏まで逃げた。
カウラス一人ならとにかく避けて避けて避けまくっていればなんとかはなってた。
でも。
ふにゃぁ。困ったよ。




