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笑顔で。

「エドワード様!」

 ご令嬢の誰かがそう叫ぶ。はっと振り返ったそこには右手で前髪をサラッと払うエドワード・テンセント様がこちらを見ていた。

 テンセント家は伯爵家、そこの令息である彼は将来の伯爵様? なのかもしれないけど今は学園の王子様として普通に人気があって。

「これは、違うのです。わたくしたちは彼女に王家に対する非礼を注意して差し上げていただけなのですわ!」

「そっか。そうだよね。でも、もうそれくらいにしてあげたら?」

「ええ。そうですわね。それでは失礼致します。さあ皆様、いきますわよ」


 たぶんこの中の令嬢のリーダー格、エーリカ・マフガイア侯爵令嬢が皆を引き連れしゃなりしゃなりと屋上を出て階段を降りていく。

 先頭にいたシルヴィアよりもこのエーリカの方がなんだか偉そうだし。

 ニーアも彼女らの後ろについて一緒に降りて行った。途中、ちょっとこちらを振り返ったけど。それでもそれだけ。


 あたしは心の奥底に蠢いている黒い靄のせいで興奮して。でも、目の前にいるエドワード様には感謝もしてるんだけど、なんだか言葉が出てこなくって。呼吸もうまくできないでいた。


「大丈夫?」


 そうにっこりと微笑んでくれるのを目の当たりにした時。


 足がガクンと砕けた。そのまましゃがみ込んでしまって。俯いたまま、目には涙が浮かんでいた。


「ごめん、なさい。……ありがとうございます……」


 とにかくそれだけ声に出し、そのまま俯いて黙る。




 しばらくそのままじっとあたしのことを見ていたエドワード様。


「昨日のお詫び、したくてさ」


 そう、ボソッと言った。


 えっ? と、そうエドワード様の顔を見上げたあたし。


 彼の顔は同情? でもなくて。


 なんだか優しい笑顔だった。


 そんな彼の笑顔を惚けて眺めているうちに、あたしの心の奥底の黒い靄もだんだん減っていき。


 スーッと息を吸ってみる。うん。もう、だいじょうぶ、かな?



「すみません。エドワード様。助けて頂いてありがとうございます」


 なんとか今度はそうちゃんとお礼が言えたあたし。


 さっと手を伸ばしてくれたエドワード様の右手を掴んで立ち上がる。


「ありがとうございます」


 今度はちゃんと笑顔でそう言えた。











 ☆☆☆☆☆



 教室に帰ると皆は何事もなかったように席についていた。


 エドワード様に先に戻って頂いて、あたしはちょっとお手洗いに行ってから戻ったのだけど。


 端の席には王子が丹精な横顔のまま佇んで、斜め後ろのカウラスがこちらをじっと見ているのを感じて。


 どうしよう。あんまり王子様には関わりたくないんだけどな。


 何か用事があったのだとしたらまた放課後声をかけられるかもしれない。今度こそ、逃げるんではなしにちゃんとお話を聞かなくっちゃ。


 そうは思うんだけど。

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